「オークションで一目惚れ」オーナーを新たなカーライフの舞台へと導いた“ユニコーン”

  • ※GTウィングは撮影用に取り付けているイベント、サーキット専用パーツです

オークションにかけられていた美しい姿のトヨタスープラ(JZA80)に一目惚れしたというオーナーさん。この愛車との出会いがスポーツカーやドリフトへの興味につながり、さまざまな人との出会いや思い出を生んでくれたという。そんな充実カーライフについて伺った。

「ひと目見た瞬間に惚れた!!」
恋愛話だけでなく、クルマに関しても『一目惚れして購入した』というエピソードを伺う機会はとても多い。沖縄県うるま市在住の糸洲学さん(54才)も、12年前にオークションで目にしたトヨタ・スープラ(JZA80)に一目惚れして即購入し、今でも大切に乗っているという。

「小さい頃からたくさんのミニカーに囲まれて育ったので、昔からクルマは好きでした。初めての愛車は18才の時に奥さんのお兄さんから譲ってもらったスカイラインRSで、コロナGT-TRなんかにも乗りました。ただ、若くして子供ができた後は、奥さんや子供の安全性なども考慮して頑丈なクルマをと考え、壊れにくくて手に入りやすくて価格もお手頃だったトヨタのマークⅡやクレスタ、あとはクラウンやエスティマなどを乗り継いでいましたね。本当はカッコいいNSXがずっと欲しかったけど、子供の学費とかもあってとても買える状況ではなかったです(笑)」

そんな糸洲さんが家族にかかる出費をある程度終えたタイミングで出会ったのが、このディープブルーカラーの美しいJZA80スープラだ。
「仕事用の軽トラが欲しいと思って仲のいいクルマ屋さんでオークション出品車両の情報を見せてもらっていたときに、たまたまこのスープラの情報が目に入って『カッコいいな』と気になってしまって『80万円までだったら出すから』と頼んでみたら落札できちゃったんです。本当は趣味のクルマを買う気は全然なかったし、当時はスープラについてもよく知りませんでした。ただ、軽トラを買う予定だったのが結果的にスープラを買うことになってしまったので、奥さんにはスープラは嫌われています(苦笑)」

『THE SPORTS OF TOYOTA』をキャッチコピーに、1993年から発売されたトヨタ・スープラ(JZA80)。
トヨタのフラッグシップスポーツモデルとして6気筒ツインターボの2JZ-GTEエンジンを搭載し、当時の馬力規制上限だった280psを発揮。丸みを帯びたボリューム感のある美しいスタイリングで現在も多くのクルマ好きを魅了する1台だ。

  • ※GTウィングは撮影用に取り付けているイベント、サーキット専用パーツです

糸洲さんが手に入れたスープラは、6速MTを搭載した1995年式のRZグレード。
「買った当時から事故歴なしで、チューニングされていたので馬力も当時は400psくらい出ていました。外装もネジまで新品にするほど丁寧にオールペンされていて、今でも本当にいい買い物をしたと思っています。そんな状態のいいクルマだったので、購入後はなるべくイジらないようにしていましたね」
美しいディープブルーカラーのボディカラーと、購入時に新品のような輝きを放っていたというエンジンルームが、特にお気に入りのポイントだという。

ほぼ12年前に購入したときのままで、糸洲さんが手をかける必要がないくらいカッコよく仕上がっていたというスープラだが、もちろん糸洲さんが追加&変更した部分もまったくないわけではない。

「チャイルドシートはまだ幼い孫を乗せるためにつけました。たまにこのクルマで保育園に迎えに行くと、年長さんたちが興味津々で集まってきますよ」と嬉しそう。子供たちが目をキラキラさせながらスープラを囲む様子が目に浮かぶ。

「僕のクルマはすべてアドバンレーシングRSホイールを履かせています。こういう細いスポークが好きなんですよね。あとはこのパンチングレーザーの『ORIDOスタイル』のナルディハンドル。実は最近この新作を新しく買ったんですよ、せっかくだから今日つけてきたらよかったなー」と、愛車のこだわりを楽しそうに語ってくれる糸洲さん。
大型のGTウィングは、日常用で無く、イベントやサーキットで迫力をアップさせたいときだけ装着するアイテムだそうだ。

さらに気になったのがトランクルームに搭載されたキラキラ感のあるオーディオだが、これは「映画の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』みたいにしたかったんだよね」とはにかむ。

そんな糸洲さんの趣味はサーキットでのドリフト走行。もちろんこの綺麗なスープラでのドリフトはまったく考えていなかったというが、ドリフトを知ったきっかけはこのクルマでドライブに出かけた時なのだとか。
「8年ほど前にこのクルマでドライブしているときに、サーキットに立ち寄ってドリフトしているクルマを見て、そこから火がついたんです。スープラに乗っていたからかそこでドリフトを楽しんでいたお兄ちゃんが話しかけてくれて、いろんなお話をしてみたら自分でもやってみたくなりました。帰ってすぐにインターネットで調べたり雑誌を見たりといろんな情報をかき集めて『ドリフトをするにはシルビアがいいらしい』と走行6万キロのS15型シルビアを買ってドリフトを始めました」

「そのうちに周りから『この値段でいい車体があるよー』といった話が来るようになって『だったら買うさー』みたいな感じでクルマが増えていきました」と笑う糸洲さん。現在はもう1台のJZA80型スープラやS15型シルビア、さらに「壊れないしパワーがあるから2JZエンジンが大好き」ということでアリストやソアラも所有しているという。
「2台目のスープラはトヨタに勤めている人が大切に所有していたんですけど、僕にだったら譲ってもいいよって言ってくれたので購入しました。少し前にトヨタ社員が集まる会にお呼ばれして、このスープラの助手席に元オーナーを乗せてドリフトしてみたりもしましたね」
糸洲さんになら安心して愛車を任せられる…それだけの信頼を周囲のクルマ仲間から獲得していることから、糸洲さんの人望や人の良さが伺える。

ちなみに、ドリフトのテクニックについてはD1GPに参戦するプロドライバーである中村直樹選手をリスペクトしているそうだ。
「ドリフトを始めたころに沖縄にイベントのゲストで来ていた中村選手の走りを見て、当時はどんな人か全然知らなかったけど、とにかく一番カッコよく走っていたから『僕にドリフトを教えてくれ』ってお願いしたら、とても丁寧に教えてくれたんですよ。ほかにもご縁があって、僕から中村選手の手に渡った2JZエンジンが中村選手のシルビアに搭載されて、2021年度のD1GPシリーズチャンピオンになってくれたんです。あの時はすごく嬉しかったですね」

「基本的に雨に濡らさないようにしていて、この10年で濡らしたのは3回くらいかな。このスープラにはいろんなところに連れていってもらっているし、いろんな世界を見せてもらいました。それにこのスープラがなければドリフトやそのクルマ仲間のみんなと出会う機会もなかった。最近は忙しくてイベントの時くらいしか乗る機会がないけれど、もちろん手放す気はないです」

  • ※GTウィングは撮影用に取り付けているイベント、サーキット専用パーツです

糸洲さんがクルマの趣味に本格復帰し、新しい趣味となるドリフトに出会うキッカケを作ってくれたスープラ(JZA80)。
実は、納車されてからしばらくは仕事の忙しさなどから心身ともに疲弊していたタイミングで、このスープラとのドライブで元気を取り戻していった思い出もあるのだとか。
「体調を崩して落ち込んでいた時に、外に出たらキラキラしているスープラが目に入って『乗ってやらないと』って思ったんです。そしてクルマに話しかけながら走っているうちに、僕を良い未来へと力強く導いてくれる存在のように感じて、スープラを“ユニコーン”と呼ぶようになりました。現在ではすべての愛車にユニコーンのステッカーをお守りのように貼っています」

「このクルマがあるから、僕は仕事を頑張れる。眺めているだけでも活力になっています」
この綺麗な状態を保ちつつ、大切に乗っていくつもりだと語りながらスープラを眺める表情は、とても優しい笑顔だった。

取材協力:オリオンECO 美らSUNビーチ

(⽂:西本尚恵 / 撮影:土屋勇人 / 編集:GAZOO編集部)