インテグラ タイプR 乗り換え時を逃し続けて23年…美しく快調な状態を保つことに全フリ

  • GAZOO愛車取材会東京の会場であるトヨタ東京自動車大学校で取材したホンダ・インテグラ タイプR(DC2)

「“絶対にずっと乗り続ける!!”みたいなつもりはなかったんですけど、売り時を完全に見失ってしまった感じで…」という言葉とは裏腹に、とても大切に扱われてきたことが窺える美しいコンディションのホンダインテグラ タイプR(DC2)。
この愛車をまだ社会人1年目だった23才のときに新車で手に入れ、当時のままの姿を維持しながら大切に乗り続けているのが静岡県在住の深井さん(46才)だ。

「当時は東京に住んでいたんですが、その当時乗っていたホンダシティターボⅡが1車線の橋の上で故障して大渋滞を巻き起こしてしまい、急遽ホンダのディーラーさんにレッカーしてもらって修理のお願いをしました。その時たまたまショールームにインテグラが展示されていて『ちょっと見積もりをお願いしていいですか?』と聞いたんですよ。そうしたら『いいですけど、このDC2はフルモデルチェンジが決まっていてもう生産も終わっているので、全国でも残りは8台しか在庫がないんです』と言われたんです。本当は将来的なことを考えて4枚ドアが欲しかったのでセダンタイプのDB8が残っていないかも確認したのですが、2ドアのDC2しか残っていないということだったので、一度家に帰って一晩考えることにしました」

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それまでインテグラについては、前から見た時のシュッとしたイメージに好感を持ちつつも、自分の愛車候補として考えるほどの存在ではなかったが、目の前にある“全国に残り8台”という貴重な存在に一気に魅せられてしまったというわけだ。

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「ボディカラーやグレードは選べず、そこにあったチャンピオンシップホワイトの在庫車両以外の選択肢はありませんでしたが、悩んだ結果、せっかくの機会だからと家族にお金を借りて、社会人1年目にもかかわらず新車で購入しました」
こうして深井さんが購入したホンダ・インテグラ タイプR(DC2)は、2000年で生産が終了していたものの登録は年明けになったため2001年式となっている。深見さんによれば2001年登録車はオフ会などでも見たことがないくらい珍しいのだという。

そんな深井さんは、シティターボⅡやインテグラタイプRを好むことから察せられるとおり、子供の頃からミニカーで遊んでいたという根っからのクルマ好き。
「20才になって貯まったバイト代で最初に買ったクルマがホンダ・シティターボⅡでした。漫画『よろしくメカドック』の影響ですね。とても気に入っていましたし、シティってオーナーズクラブのネットワークが昔からしっかりしていて、年1回もてぎで全国ミーティングをしたり、会報も女性の会長さんが手書きて書いてくれたりしてすごく充実していておもしろかったんですよ」
思い出のたくさん詰まったシティは、インテグラ購入後に修理して父親の知り合いに譲渡したそうだ。

そして、シティからインテグラに乗り換えた当初は運転が怖かったとも教えてくれた。
「やっぱりシティとは全然乗り味が違うし、シフトもショートストロークで繋がるし『え! ギア入れるときはこんな感覚なのか?』と最初はびっくりしましたよ」
軽さにこだわって作り上げられた車体の動きや、タイプR専用に性能向上が図られたB18C Spec-Rエンジンのフィーリングは、若者の心を鷲掴みにしたに違いない。

  • GAZOO愛車取材会東京の会場であるトヨタ東京自動車大学校で取材したホンダ・インテグラ タイプR(DC2)

それから23年、奥様とのデートなどにも活躍してくれたというインテグラだが、走行距離は9万5000kmとそれほど多いわけではない。
「僕には4人の子供がいて、最初の頃はチャイルドシートを積んでいたこともありましたが、さすがに定員オーバーなのでファミリーカーとしてセレナを用意しました。それと、一時期は通勤にもインテグラに乗っていたんですけど、会社の駐車場が海沿いであまり環境が良くなくて、このままだとボディがどんどん傷んでしまうと思って片道10kmを自転車通勤に切り替えたんです。ところが、その後転職して今度は通勤距離が20kmに増えちゃったもんだから、さすがカミさんを拝み倒して街乗り用のクルマも買いました」

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コンディションをキープするために乗る頻度を減らし、現在は月に1回くらい動かしながら動態保存を続けているという深井さんだが、いつ頃から大事に長く乗っていくことを意識し始めたのだろうか? そう思って伺ったところ、冒頭で触れたような意外な返答をいただいたというわけだ。
「実は必ずしもずっと乗り続けようと思っていたわけではないんです。ただ、これに代わるクルマが欲しいと思ってもそのタイミングで出てこなくて、今も乗り続けているみたいな感じになっちゃっていて…。乗り換えるタイミングを完全に見失ってしまった感じです(苦笑)」

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さらに、フルノーマルを保っていることについても「本当はマフラーくらいノーマルに飽きたら変えたいなと思っていたんですけど…」と、実は最初から強いこだわりがあったわけではないという。
限りある予算を性能向上やドレスアップではなく、コンディションの良い状態を維持することに注いできた結果、今では貴重とも言えるほどの極上フルオリジナル車両として現存しているということなのだ。

  • GAZOO愛車取材会東京の会場であるトヨタ東京自動車大学校で取材したホンダ・インテグラ タイプR(DC2)

「ただ、最近は保安部品を含め純正パーツが手に入らなくなってきているんですよ。ヘッドライトも僕はカミさんを拝み倒して廃盤寸前に交換しましたが、今は廃盤になってしまいました。ちなみにその時は片側6万円だったけれど、今はネットオークションで数十万円なんて話も聞いたことがあります。そうなると、この先どうやってノーマルを維持していくかが課題で…」
ちなみに、中からくすんでしまい外を磨いても綺麗にならなくなったというヘッドライトを交換したことで、ディーラーやオフ会でも『ヘッドライトを変えたら印象が変わりましたね』と好評で、費用対効果は抜群だったのだとか。

そんな深井さんのインテグラは、23年経ったとは思えないほど綺麗な状態を保っている。青空駐車だった頃からシートカバーをかけて保管し、現在はしっかりと車庫保管。コーティングも4〜5回はおこなったそうで、内装についても専門店でシート洗浄をおこなったというから、彼のインテグラに対する愛情の賜物といえるだろう。

加えて、インテグラに関する書類はすべて見積もり段階からファイリングされているというマメさからも、深井さんの愛情が伝わってくる。
「一応、最初の商談メモから整備記録に修理履歴、それに参加したイベントのプログラムまですべてまとめています。あとは、たまたま実家の整理をしていたら見積もり当時しらみつぶしに読んでいた最終型モデルやアクセサリーカタログも出てきたので、それもいっしょに保存しています」

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これまで致命的なトラブルに見舞われたこともなく「クラッチフルードが抜けていることに気づかずに車庫の中で踏み込んでしまったことがあったんですが、そのときはドーンとクラッチが繋がってびっくりしました。あとは、純正タイヤを騙し騙し使い続けていたのが原因で、高速道路で右前タイヤがバーストしたことがあったんですが、ちょうどそのときカミさんが乗っていたこともあって、それ以来タイヤの交換は許可してもらえるようになりましたね(笑)」と、むしろトラブルも楽しい思い出のひとつになっているようす。

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今後もこのインテグラに乗り続けたいと考えているのか気になるところだが…
「今のところは乗り続けていきたいと考えています。正直4人の子供のなかには受験生も抱えているし、維持するのも精一杯なんですけどね。他に趣味らしい趣味もないのでこれくらいは許してもらえているのかな」

ちなみに高校3年生の長男は、ドライブやスーパーGTなどのレースを見にサーキットにも連れて行った効果もあってかクルマ好きに育ったそうで「もし長男がこの先このインテグラに乗りたいといってきたら、どうしようかなーと悩みますよね。まあ、自分が大事にしているのを知っているので『怖くて乗りたくない』っていうかもしれないです」とこれからの未来を見据え、優しく微笑む。

人気車種だけに国内外でさまざまなアフターパーツが販売されているいっぽう、純正パーツは次々と廃盤になっていく昨今、純正にこだわって維持していこうと思うと手間もコストもどんどん上がっていくことが予想されるインテグラ タイプR。
しかしながら「純正の状態で維持していることが、このクルマの唯一の取り柄なので…」と遠慮がちに話す深井さんは、なんだかんだとしっかりメンテナンスしながらこれからも大事に乗り続けていくのではとないかと思う。

取材協力:トヨタ東京自動車大学校(東京都八王子市館町2193)
(⽂: 西本尚恵 撮影: 中村レオ)
[GAZOO編集部]