20歳 初愛車でマツダ RX-7を購入した決断は、「回り道せず好きなクルマを買え」という助言

  • GAZOO愛車取材会の会場である呉ポートピアパークで取材したマツダ・RX-7(FD3S)

    マツダ・RX-7(FD3S)

幼少期からクルマが大好きだったというRAYさん。数あるスポーツカーの中で、マツダのFD3S型RX-7に心を奪われるキッカケとなったのは、中学生の頃にYouTubeでたまたま見つけたある一本の動画だった。

「ホットバージョンの“峠の魔王決定戦”という企画に、藤田エンジニアリングがチューニングしたシルバーのFD3Sが参戦していました。それまでもゲームや漫画でRX-7のことはカッコいいな〜と思っていたけど、動画の中で独特のロータリーサウンドを響かせながら落ち葉を巻き上げ疾走して行くFD3Sの姿に完全にヤラれちゃいました」

この動画を見て以来、FD3Sのことが頭から離れず、いつの日か必ず手に入れることを決意したRAYさん。当初は免許を取得した後、まずロードスターの安い中古車を探し、貯金することとドライビングテクニックの練習を重ねながらFD3Sの購入を目指していく…そんな計画を立てていたという。
しかし、突如その計画に変更が生じ、初めての愛車としていきなりFD3Sに乗ることになった。その背景には、RAYさんより6歳年上のお兄さんからのアドバイスがあった。

「兄はGC8インプレッサSTiやR33スカイラインGT-R、2ZZエンジン搭載のカローラランクスなど、色々なスポーツモデルを乗り継ぐだけでなくサーキットも走っていて、グランツーリスモやニードフォースピードなどのレース系のゲームも得意でした。僕がクルマ好きになったのは、昔からそんな姿を横で眺めていたからだと思います。」

「そんな兄から『そんなまわり道をせず、最初から一番欲しいヤツに行け』とアドバイスをもらったんです。FD3S以外のクルマを買っても、エンジンや足まわりなど物足りない部分に手を加えて行くうちに、結局は第一候補の車両代と変わらないくらいの費用がかかるから、と。そこから頭を切り替えて、フルローンを覚悟してFD3Sを探し始めました」

第一希望はFD3S型・RX-7の最終モデルである6型だったが、流通量自体が少ない上、すでにコレクターズアイテム化が進んでいた影響もあり、完全に予算オーバー。その後も年式やグレードの条件を広げつつ、スマホでFD3Sを探し続ける日々を送っていたある日、目に止まったのが1996年式の4型であった。

派手なエアロパーツが装着されたブラックの外観には年式相応のヤレ感があったものの、内装の状態は非常に良好で、走行距離が多い中古ロータリーエンジン車の泣きどころとされている圧縮の数値も基準値以上だったということも決め手となり、見学に行ったその日のうちに契約に。こうしてお兄さんの教え(?)に従ったRAYさんは、弱冠ハタチでめでたくFD3Sのオーナーになるという夢を叶えることとなった。

「自分的にはチョットいきなりすぎる気もしたけど、ずっと欲しかったクルマですからね。偶然にも販売店は家の近くという縁もあったし、コロナ禍になって中古車相場が爆上がりする直前だったので、ギリギリ予算内に収めることができたのもラッキーでした。納車されてすぐに近くのドライブコースまで走りに出かけた時の感激は、今でも忘れられません」

購入当初はただ手元にFD3Sがあるだけでも幸せだったが、気持ちが冷静になるにつれて、次第に“懸案事項”の幾つかが目につくようになったという。
特に前オーナーの趣向が色濃く残されていた外観は、このクルマの大きな魅力でもあるスタイルの美しさを引き立てているとは思えず、まず施されたのは各部の『初期化』だった。

まず、フロントの社外エアロパーツを取り外して4型の純正バンパーに。リヤももともと装着されていた大型ウイングからRX-7ファンの間では通称“ドルフィンテール”と呼ばれている4型用のフラットなデザインに変更。年式相応にところどころ色褪せていたボディはリフレッシュも兼ねて純正同色のブラックで全塗装を施した。仕上げにホイールもRZグレード用純正オプションのBBSに交換したことで、新車当時のオーラが漂う、ほぼフルノーマル仕様のエクステリアへと一新しているのである。

ここまでキレイに仕上がると、ガレージの奥にでも大事にしまっておきたくなりそうだが、RAYさんはいわゆる“観賞派”とは真逆の“ガンガン走る派”。普段乗りはもちろん、年に数回はサーキット走行会にも参加している。これもまた、先述した6歳年上のお兄さんの影響だという。

スポーツ走行を踏まえた車体周りの基本的なセットアップについては、ロータリー車のカスタムを得意とする広島の老舗ショップ、レッグモータースポーツに依頼。サスペンションはエンドレス製がベースとなったオリジナル車高調を採用。ブレーキはオートエグゼの2ピースディスクローターと制動屋のブレーキパッドで強化。エンジン関係については購入時には剥き出しタイプだったエアクリーナーをナイトスポーツ製のボックスタイプとした。それ以外、冷却系を含めて現状ではノーマルとなっている。

「子供の頃から、クルマを買ったらサーキットで走らせてみたいと思っていました。メインとなるコースは岡山国際サーキットと、広島のTSタカタサーキットです。最初は何も分からなかったので、必要な装備品やサーキットでのマナー、走行ルールなどを兄から教えてもらいながら、少しずつ慣れていきました」

「昨年末には兄と一緒に走ることもできて、嬉しかったですね。タイムですか? もちろん、圧倒的に兄の方が速かったです(笑)。今シーズンはさらなるスキルアップを目指して、足まわりのジョイント部をすべてピロボール化しました。コスト的にも強化ブッシュより割安で、元々ソリッドだった挙動がさらにシャープになって、超気持ちイイです」

フェアレディZバージョンニスモ(Z33)に乗るお兄さんとともに、充実したカーライフを楽しんでいるようすだ。

RAYさんは2000年生まれ。スマホやゲーム機などが当たり前のように身近に溢れた環境で育っただけに、車載カメラの扱いも慣れたモノ。走行後は動画を見直しながらしっかり復習しているそうだ。ちなみに、思い出の品として見せていただいたこれらの写真はすべてゲーム内で作った愛車たちを撮影する機能を使って作り上げた画像だそうで、シチュエーションも含めて、そのセンスの良さも伺えた。

一人暮らしの自宅には、バケットシートやリアルなHパターンのシフターを備えたレーシングシミュレーターも設置し、日頃からサーキット走行のイメージトレーニングを重ねているそうだ。

「サーキットは楽しいけど、街乗りしているだけでも十分楽しさを感じています。ABSユニットのトラブルはあったものの、他にはとくに苦労しているところはありません。燃費はまァ、それなりですが、これは高性能と引き換えということでヨシとしています。今後手を加えるとしてもホイールとマフラー(現在はノーマル)くらいですかね。状態の良いFD3Sは年々少なくなっているようなので、これからも大事に長く維持して行きたいです!」

購入から3年余りの月日が経過しているが、FDへの愛着は深まるばかり。現在も絶賛支払い継続中である“フルローン”というプレッシャーはあるものの『まわり道をせず、最初から欲しいヤツに行け』というお兄さんからの金言は、間違いなく大正解だったようだ。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)

許可を得て取材を行っています
取材場所:呉ポートピアパーク(広島県呉市天応大浜3丁目2-3)

[GAZOO編集部]