「これからの人生はこいつと一緒に楽しむと決めた」ロードスターとの爽快で開放的な日々
就職して一生懸命働いた。やがて彼女が出来て結婚。世帯を持って子供を授かると、運動会などのイベントが毎年何かしらあり、大変だったけど幸せだった。そして、いつしか子供達は大人になっていた…。
「本当にアッという間で、まるで早送りのように時が過ぎて行ったんですよ。その時に思ったんです。今度は自分の人生を楽しむべきだって」
Sato.rsさんは懐かしむように目尻に皺を寄せて笑った。
「さぁ何をして楽しもうか? と考えた時に、スポーツカーに乗ろうというのはすぐに思いつきました」
そうして、40代だったSato.rsさんは、2008年にユーノス・ロードスター(NA8C)を愛車として迎え入れたという。
物心ついた頃からクルマが好きで、幼稚園の帰りに街ですれ違うクルマの車名を、お母様に教えるのがSato.rsさんの日課だったという。なかでも、ロータスヨーロッパやコスモスポーツのように、速くて車高が低いスポーツカーに憧れを抱いていた。お財布事情や日常使いを考えると、そういったクルマに乗るのは難しかったというが、愛車にはカリーナハードトップ1600GT(TA17)や、2ドアのカローラレビンGT APEX(AE86)などのスポーティカーを選んできたそうだ。
クルマを乗り換えるタイミングのMyルールは“走行距離が伸びて壊れがちになり、どうしようもなくなったら"としていて、どの愛車も10年間は大事に乗ってきたと話してくれた。ただ、カローラレビンGT APEX(AE86)のみ、この掟を守れなかったという。
「AE86に乗っていたタイミングで子供が産まれたんです。2ドアでチャイルドシートを積むのにも一苦労、足まわりもガチガチで乗り心地も悪かったから、ファミリー向きではないと乗り換えを決意しました。本心ではAE86に乗っていたかったのですが、手放してしまったということもあって、スポーツカーへの執着はより一層強くなった気がします(笑)」
そこで登場するのが、今回の主人公となるユーノス・ロードスター(NA8C)だ。
メインターゲットだった米国の要望を受け、1993年のマイナーチェンジによって初代の1.6リッターから1.8リッターへと排気量アップが行なわれたモデルとなる。昨今の旧車ブームで今となっては値上がりしているが、2008年当時には走行距離4.5万kmの極上個体が、39万円で販売されていたそうだ。これならお小遣いの範囲内で何とかなるぞと、迷わず判子をついたのである。
数あるスポーツカーの中でなぜロードスターを選んだのか伺うと「人生で1回はオープンカーに乗ってみたい」という夢があったからだという。頭上を風が流れていくのはどんな感じなのだろうと想像し、ワクワク心が高鳴ったそうだ。
「ドライブルートは、海沿いを走るというのがお決まりのパターンなんです。だって、山よりも海の方が風が強いでしょ? 潮風が肌を撫でるように過ぎていく感触や、独特な香り。春になるとそこに新緑の匂いが混じって、まるで季節の風を切り裂き、それに包まれながら走っているかのように思えるんです」
ドライブでトンネル区間に差し掛かると、エンジン音がよく聞こえるという秘かな趣を楽しんでいる。けれど、トンネル内の走行が単走でない場合は、様々な音が反響してくるので、エンジンの音が前後のクルマからなのか、はたまた2台前のトラックのものなのかが分からなくなってしまうで、そういったタイミングに出くわしてしまうとテンションが下がってしまうのだとか。
いずれにしても「控えめに言っても最高だった!」と、筆者がたじろぐくらいの熱量でロードスターとドライブする事の素晴らしさを伝えてくれた。目に入ってくる空の青、雲の白、太陽の光に反射して輝く木々の葉など、その景色は絵画のように美しかったと感無量な面持ち。少年時代に憧れた“地を這うようなクルマ”にするべく、車高調整式のサスペンションに交換してローダウンさせることで、余計に太陽が高く、開放的を感じているのかもしれない。
しかし、交換したサスペンションの乗り心地はスポーティ過ぎだった様子で、路面の小さなギャップでもダイレクトに拾ってしまうほど硬く、胃下垂になるのではないかと思うほど上下に揺れていたという。ボンネットがガタガタ動いている様子を運転席から見る度に、まるでレーシングカーのようだと痛感していた。というわけで、現在では乗りやすい仕様へとリセッティングしているそうだ。
「フロントフェンダーの周りが少し盛り上がっている形も、走りを彷彿とさせるんですよね。デザインが美しいのもこのクルマの魅力のひとつなんです」
ボディ全体が綺麗な曲面で繋がり、丸みを帯びているのにポテっとしてない絶妙なバランス。そんなボディラインからは、デザイナーのこだわりをひしひしと感じると話してくれた。面白いのは、夜になって光で照らされると、それらの造形が浮かび上がり、10年以上乗っているのに気付かなかったエッジと出会える時だという。フロントタイヤハウスの後がスパンと切り落とされて、ここだけ直線基調のデザインになっているとか、リヤに向かって絞り込まれているコンケイブ形状なども、最近発見した新たな箇所らしい。
「くるくると表情を変えて、オーナーを飽きさせないデザインのクルマはそうそうないと思うんです。すごいクルマですよ。15年経った今でもドキッとさせてくれるんだから」そう、嬉しそうに語ってくれた。
「運転席から見た風景も、リトラクタブルヘッドライトを上げた時に変わるんです。リトラカバーの先っちょ部分が視界にチラリと出てきて、急に運転しやすくなります(笑)。コーナーアンテナの代わりって感じですかね」
このように、何十年経っても新鮮さや色褪せない美しさを感じることができるのは、実はステアリングや、自身がかぶる帽子のお陰もあるという。なんでも、ユーノスロードスターとSato.rsさんは、TPOに応じて衣替えをするのだそうだ。
当時のクルマにはエアバックが付いていないため、ステアリングの交換はボスに止まっている6本のボルトとホーンキャップを付け替えるだけで簡単に脱着できる。紳士な雰囲気で流したい時はNARDI CLASSIC 36φ、ニュートラルに走りたい時のMAZDASPEED 36φ、ハイスピードクルージングをしたい日にはMOMO Cavallino 35φ、ゴーカートに乗っているかのように楽しめるメーカー不明のディープコーンタイプ 33φといった具合に、4種のステアリングを気分や季節によって変えるのだという。
一方でSato.rsさんの帽子は、冬に最適なモコモコした暖かい帽子、峠や高速道路を走る時は、風で飛んでしまわないようにジャストフィットのキャップ、ハンチング帽は街中を流す時にかぶっているという。
「走ることが楽しいクルマでもあり、ファッションも楽しめるクルマなのかもしれませんね。とても充実したカーライフを送らせて頂いています」
それなりに年数が経っているので、故障や劣化も出始めているが、それを修理していくのもまた楽しいという。最近手を焼いているのが雨漏りだそうで、「Aピラーの繋ぎ目から『ポタポタ』ではなく『ジャージャー』と水が漏れてくるんですヨ」と、何故だかニコニコ顔で話してくれた。
「青空駐車だから、雨がウェザーストリップの端に溜まるんですよ。ゴム部分を変えれば良いんだけど、これを小細工しながら何とか乗るのも楽しいんだなっ♪」
ちなみに雨漏りの原因は、筒状になったゴムが潰れて閉塞しているから。そこで、金魚鉢等でエアーを送る白いホース(200円程度のもの)を通すことで、閉塞しているゴム部を開通させているという。
ボンネット、左右のフェンダー、フロントとリヤのバンパーなども自らがDIYで塗装したものだという。カー用品店にある塗料スプレーで塗り、コンパウンドなど仕上げていったそうで、塗装の技術がどんどん上手くなる自分に花丸をあげたいと笑っていた。
「僕はそろそろ還暦なんですけど、最近『もしかしたら75歳で免許返納かな?』なんて思うことがあるんです。そうすると、あと何年乗れるんだろうと数えちゃうこともありますよね。ですから、最後までのんびりと楽しいカーライフが送れたら良いな〜と思っています」
人生最後のクルマはロードスターにしたいと言うSato.rsさん。取材が無事に終わり『さぁ、行くか』と、エンジンをかけて走り去っていく姿は、あの頃のように輝いていた。
取材協力:しいのき迎賓館(石川県金沢市広坂2丁目1-1)
(⽂: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]
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