ひとたび乗り込めばどこまでも行ける。ロードスターとの長距離ドライブがもたらしてくれる至高の時間
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マツダ・ロードスター(ND5RC型)
誕生から30年を超え、まさに『日本を代表するスポーツカー』と呼ぶに相応しい存在となったマツダ・ロードスター。その車名となる『ロードスター』は、屋根のない幌付きの馬車を示す用語から派生し、クルマの場合はオープンルーフの二人乗りスポーツカーを示す。
『ロードスター』は1960年代の欧州やアメリカで、ロータスエランなどの英国車を中心にブームとなり、日本でも日産のフェアレディ(輸出名はダットサンロードスター)などが誕生した。
しかし当時の『ロードスター』は、総じて現在のオープンカーと比べものにならぬほど耐候性が低く、幌の開閉も手間が掛かるなど日常性に欠けるというイメージも強かった。さらには1970年代に入ってから重視され始めたアクシデント発生時の安全性に関する懸念も相まって、次第にその人気は下降し一時は絶滅が危惧されるカテゴリーとなってしまったのだ。
そんな『ロードスター』を復権させたのがマツダであった。
スポーツカーならではの軽快にしてダイナミックな走りや、オープンカーだけが享受できる爽快感をそのままに、求められる快適性や安全性などを巧みに取り入れた、ユーノスロードスター(輸出名はMX-5やMX-5ミアータ)を生み出したのだ。ユーノスロードスターは、世界中のクルマ好きから歓迎され、それに触発された他の自動車メーカーも『ロードスター』を再びラインナップするようになった。
そんなロードスターの4代目モデル(ND5RC型)に、2年前から乗り始めたという『KAZE』さん。初代ロードスターのデビュー時を知る世代であり、若い頃からスポーツカーがお好きだそう。
「2+2とか2 by 2じゃなく、はじめから二人乗りのスポーツカーが好きですね。若い頃は、初代のMR2に乗っていたこともあります」
MR2に乗っていた時には、オーナーズクラブを主宰されていたそうで、その頃の写真やクラブのステッカーも見せてくださった。
2シーターのスポーツカーが好きとなれば、当然、初代ロードスターも気になる存在であった。
「26歳の時に、もうハンコを押す寸前までいきながらも購入を諦めたことがあるんです」
RSリミテッドが売りに出ているのを見つけたKAZEさんは『限定車だし…』と、購入する気満々で中古車店と話しを進めていたそうだが、その商談中に、そのRSリミテッドを不注意でぶつける瞬間を目撃してしまったそう。形が変わるようなぶつけ方ではなかったそうだが『ケチのついたクルマに乗りたくない』と思うのは当然の成り行きだ。そんな出来事があって、初代ロードスターに乗るチャンスを逸してしまったそうだ。
ちなみにこの時点で、KAZEさんはご結婚されていたということで、二人乗りのスポーツカーに乗ることを奥様に反対されなかったのかと伺うと「特に反対されることはありませんでした。奥さんもクルマは嫌いじゃないんで」というご回答が。しかしそんな奥様と結ばれていても、家庭の事情は優先しないといけないのが辛いところで「駐車場が1台しかないアパート住まいの時には、自分のクルマは諦めて、家族のためのクルマ1台だけの時期もありました」と、これまでのクルマ人生を振り返ってくださった。
KAZEさんが再び趣味グルマを所有したのは1990年代が終わりに差し掛かった頃。
「スターレットのターボが無くなってしまうことを知って、乗っておかねばと手に入れたんです」
最初の愛車がホンダシティ、それからシティターボⅡと乗り継いでこともあり、2シータースポーツカーと共に、ハイパワーコンパクトモデルもお好きだそうで、スターレットには19年乗り続けたそうだ。
そんなスターレットから初代コペンに乗り換え、こちらは9年半を共にしたという。カスタマイズも思いきり楽しんでいたというスターレットに対して「コペンはECUを変更した以外は、フルノーマルのまま乗っていました」というお答えが。
実はこれは現在の愛車となるNDへの布石だったそうで「NDに乗り換えるために、コペンは極力お金を使わずに乗っていたんです(笑)」
そして、2023年。改めてロードスターを愛車にしようと考え、かつて購入を諦めてから30年近い歳月を経て、KAZEさんはロードスターを手に入れた。
「子供も社会人になって、経済的にも余裕ができたので、NDを新車で購入したんです」
手に入れたNDのグレードはRS。選んだ理由を伺うと「コペンに乗っている時から、下道のロングツーリングを楽しむようになったんですよ。腰痛持ちなもので、長距離ドライブにはレカロのシートが必須なので、レカロが標準装備となるRSを選んだんです」
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(写真提供:ご本人さま)
下道、つまり高速道路を使わないルート設定でロングツーリングというと、読者の皆様はどれぐらいの距離を思い浮かべるであろうか? 200km程でも下道となればかなりの時間を要するのだが…「1日で、いく時は700〜800kmぐらい走ります」という、とんでもないお答えが返ってきたのだ。
「NDが納車されてからちょっと経った頃に、バイクのイベントでSSTRというロングツーリングイベントがやっていて、バイクじゃなくてNDでゴール地点に設定されている石川県の千里浜まで行って帰ってきました」
KAZEさんが住む兵庫県西部から千里浜までは高速を使えば400km前後なので、5〜6時間もあれば着くが、オール下道となると…「0時に出発して、朝8時半に千里浜に付きました。帰りは少し観光しながら帰ったので、往復の走行距離は850kmでしたね」と、事も無げに話してくださった。
ちなみにSSTRというのは、日の出とともに日本の東海岸のどこかから出発し、日没までに千里浜までツーリングするというバイクイベント。毎年多くのライダーが参加するイベントなのだが、たまたまその思い立った日がSSTR開催期間中だったので『じゃあ、NDで行ってみようか』となったようだ。
この他にも、長崎まで1日で走り切って一泊して戻ってくるなどはまだ軽い方で、山口の角島大橋が見たくなったときには奥さんに『ちょっと旅をしてきます』と言い残して、角島大橋、元乃隈神社、錦帯橋と山口の名所を巡って1泊し、翌日に広島の宮島を観光して戻った時には2日で1000km超を走破していたというようなビッグランも、近所に散歩にいくようなノリで楽しんでいらっしゃる。
現在、NDは普段乗りにはほとんど使わないロングツーリング専用車両となっているという。しかも、基本的に、ツーリング中は雨と猛暑、それから雪の時以外は幌を開けたオープンで乗っているのだと、オープンスポーツカー乗りらしい発言もいただいた。逆に普段は、雨が降ってクルマで移動したいような状況でも、NDには乗らないのだそうだ。
ロングツーリング以外では、コペンの時には封印していたカスタマイズをNDでは再び楽しまれていて、ホイールやマフラーなどが変更されていた。
「コペンの前のスターレットの時は、ホイールを6セット持っていて、履き替えて楽しんでいました」というKAZEさん。NDでは気になるデザインのホイールは幾つかあったそうだが、飽きのこないデザインの方が長く楽しめると考え、性能面も含めてBBSを選んだそうだ。
カスタマイズの多くは、自らの手で作業しているというKAZEさん。リヤ回りを引き締めるべく装着された、小ぶりのカーボン製スポイラーは、ND用のアフターパーツを装着したのではなく、なんとアウディ用に市販されているものを流用しているそうだ。
「寸法を測って、自分好みのデザインのものを探したら、アウディ用が見つかって、装着してみたら、うまい具合にハマりましたね。エンジンのカバーもDIYで塗装しました。クルマいじりは嫌いじゃないんで。でも最近は膝が痛かったりするので、先日交換した足まわりのスプリング交換は、プロに任せちゃいましたけど」
少しずつ自分好みにカスタマイズを進めているNDロードスター。スターレットを19年、コペンも9年と、1台のクルマを長く楽しむKAZEさんだけに「このNDは、免許返納まで乗るつもりでいます」と、終のクルマとして考えているようだ。
日常生活ではほぼ乗らないとはいえ、一度乗り込めば数百km単位を走るという楽しみ方をされているので、KAZEさんがこのロードスターを降りる時には、オドメーターはかなり大きな数値になっているはずである。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:徳島中央公園 (徳島県徳島市徳島町城内1-番外)
[GAZOO編集部]
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