トヨタ・マークⅡ フォーチュナ(JZX110)に心奪われて

  • GAZOO愛車取材会の会場である平城京朱雀門ひろばで取材したトヨタ マークⅡ iR-S フォーチュナ

    トヨタ マークⅡ iR-S フォーチュナ

1968年から2004年までの36年間、9世代に渡ってトヨタを代表する高級セダンとして君臨したマークⅡ。後継車種であるマークXまで含めると、その生産期間は51年間にのぼる。
『マークⅡ』という車名を聞いて、どの世代のモデルを思い浮かべるかは、その人の年齢や置かれた環境によって変わってくるだろう。ある人は『ブタ目』の愛称で知られた30系をイメージするかもしれないし、ある人はハイソカーブームを牽引した70系を思い出すかもしれない。

現役のマークⅡオーナーである『なべっち』さんの場合はというと、最終型である110系こそがマイ・オンリーワン・マークⅡだ。しかも、ただのマークⅡではなく、当時のトヨタモデリスタインターナショナルがカスタマイズを施した『フォーチュナ』という、特別なモデル。内外装に専用装備を纏い、最初から車高がローダウンされた『高級カスタマイズスポーツセダン』なのである。

なべっちさんにとって最初のマイカーは、親から譲ってもらってしばらく乗っていたホンダ・インテグラ(DC2)。そしてその後、初めて自分で選んで買ったクルマも、実は110系のひとつ前のモデルである100系のマークⅡだった。

「当時ちょうどマークⅡが100系から110系にモデルチェンジするタイミングで、その頃はシュッとした見た目の100系の方が好みだったんです。110系に変わってしまう前に急いで買おうと思って購入したくらいで、110系にはまったくトキメキを感じていませんでした(笑)」

歴史の長いモデルが衝突安全性や居住性を向上させるため、徐々にボディを大型化させてきたのはマークⅡに限った話ではない。ただ、マークⅡの場合は歴代モデルのイメージリーダーが2ドアおよび4ドアのハードトップであり、薄くて角張ったフォルムこそがアイコンと見る向きも多い。
実際、なべっちさんも過去はそういった価値観を持っていたからこそ、ハードトップを廃止し、やや丸みを帯びたデザインに生まれ変わった110系より、ひとつ前の100系に魅力を感じていたのだ。

では何故、110系のマークⅡを購入するに至ったのか…。それは偶然の出会いがきっかけだったそうだ。

「ある時、観光で奈良公園に出かけたんですけど、たまたま駐車場に110系のマークⅡフォーチュナが停まっていたんですよ。それを見た瞬間に『何これカッコイイ!』ってなりまして。自分でも不思議なんですけど、次に買うならコレと同じやつにしようと心に決めるくらい一目惚れしてしまったんです」

先ほども少し触れたが、マークⅡフォーチュナはフロントグリルやヘッドライト、フロントスポイラーなど、モデリスタがデザインした専用品を多数装備されている。おそらくは、このトータルコーディネートされた完成度の高いスポーティなスタイルが、なべっちさんの心の琴線に触れたのだろう。
かつては『まったくトキメキを感じていなかった』という相手であっても、その何気ない仕草や佇まいに、“雷”に打たれたような衝撃を受け、考えが一変してしまったわけだ。まあ、そんなことがあったってイイじゃない。恋は理屈じゃおまへんで!

「それからフォーチュナありきで中古車を探し始めて、当時のトヨタ認定中古車を扱っていた『T-Value』で2台ほど条件の良いクルマを見つけました。余談ですけど、その時にトヨタの中古車を検索しまくっていた流れで、この“GAZOO愛車広場”の存在も知ったんですよ。いつかは自分も出てみたいなって思っていたんですけど、今回、フォーチュナがキッカケでその夢が叶って、やっぱり何か不思議な縁を感じています」

その時に見つかった車両は、それぞれ福岡と東京のディーラーで販売されていたため、和歌山県在住のなべっちさんにとっては、どちらも遠方。だが、すっかりフォーチュナにフォーリンラブしていた氏の行動は早く、より条件が良くて好みのカラーでもあった福岡の販売車両を確認するため、会社を早退して飛行機に飛び乗った。
そして福岡の地でご対面。クルマの状態も良さそうだったので、そのまま購入することとなり、晴れてマークⅡフォーチュナのオーナーになったのである。

ここで改めて、なべっちさんの愛車であるマークⅡフォーチュナについて、追加情報を書き加えておこう。
まずフォーチュナは大きく分けて2種類あり、なべっちさんが所有する『マークⅡフォーチュナ』の他、2.5リッター(以下:略)ターボエンジンに専用のタービンを搭載した『マークⅡフォーチュナ ヤマハパワー』が存在する。
そして『マークⅡフォーチュナ』にはベースグレードが2種類あり、ターボの“iR-V”と、自然吸気の“iR-S”を設定。さらにトランスミッションは“iR-V”には5速MTと4速ATが設定され、“iR-S”が5速ATといった具合に細分化される。なべっちさんの愛車は“iR-S”がベースとなる仕様である。

外装の特徴は、先ほど述べた内容に加え、サイドマッドガード、サイドプロテクションモール、リヤアンダースポイラー、スモークレンズのリヤコンビネーションランプ、バッフル付きエキゾーストテールパイプ等が専用品となる。また、最初から専用チューニングが施されたローダウンサスペンションが装備されており、通常に比べて20mmほど車高が落ちているのも特徴だ。

フォーチュナは内装にも特別な加飾が施されており、インパネ、センターコンソール、ドアトリムに金属調のガーニッシュを採用。シートとドアトリムに使われているエクセーヌ表皮も専用設定という、とても贅沢な作り込みがなされているのだ。

アルミホイールは、本来はモデリスタ専用の18インチが装備されるが、なべっちさんは昔からの憧れがあったというBBSのLMに交換。純正ホイールはフロントが8.0J+40、リヤが9.0J+45という専用設定サイズだったが、ちょうどぴったりなサイズのLMがたまたま見つかったのだそうだ。

また、雰囲気を壊さない程度のカスタマイズも楽しんでおり、ペダルはヴェロッサ用のアルミペダルを装着。スポーティなデザインと相まって、さも純正かと思わせるマッチングが素敵である。

メインキーにはマークⅡの35周年を記念した特別仕様車『35th Anniversary』に設定された純正キーカバーを流用。こんなところからも氏のマークⅡ愛がヒシヒシと伝わってくる。
また、このクルマの詳細が書かれた、マークⅡフォーチュナ及びマークⅡフォーチュナ ヤマハパワーの専用小冊子も所持。緑色の表紙にはモデリスタのロゴも入っており、オーナーの所有欲を満たしてくれる逸品となっている。

そういったポイントを、なべっちさんから教えていただきながら撮影を進めていて気がついたのが、内外装共に20年という時を経て18万kmを走行したクルマとは思えないほど綺麗ということ。それは“驚愕レベル”と表現しても間違いない程であった。
聞けば『もうこのクルマしかない! 一生乗るぞ』と心に決めてからは、主治医でもある馴染みの鈑金屋さんで徹底的にピカピカにしてもらったそうだ。また、外装だけでなく内装にも気を使い、購入時からあったガーニッシュに残る小さなタバコの焦げ跡も、再塗装によって完璧に補修されていた。

「クルマはファッションとも思っているので、美しくないとイヤなんですよね。時々『新車みたいだね』とか、『キレイだね』と言ってもらえるんですが、僕にとってはそれが一番のホメ言葉。クルマも喜んでくれていると思います(笑)。以前は通勤にも使っていましたが、もはやエアロパーツとかヘッドライトは純正部品が出てこないので、最近は車庫に入れていることが多いかな。でも、クルマ仲間が集まるLINEのオープンチャットにも参加していて、ミーティングやイベントがあれば、今もフォーチュナに乗って行きます! そうした輪が広がったのも財産のひとつですね」

奈良公園での運命的な出会いをきっかけに、生き甲斐とも言える大切な宝を手にしたなべっちさん。その二人三脚は、これからも先も末永く続いていくことだろう。

(文: 小林英雄 / 撮影: 平野 陽)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:平城京朱雀門ひろば(奈良県奈良市二条大路南4-6-1)

[GAZOO編集部]