「家族も乗るクルマだから」安全性と走りを重視して選んだスバル・WRX S4
新しい環境に身を置くことで、それまでになかった視点を得る。人生には不意にそういう瞬間が訪れることがあるものだが、Kさんがスバルのハイパフォーマンス4WDセダン、WRX S4 tS NBR CHALLENGE PACKAGE(VAG)を所有するに至ったのも、仕事で海外駐在を経験した際に得た“気付き”がキッカケだったそうだ。
F1ファンの父親の影響を受け、子供の頃からモータースポーツ好きに育ったKさん。DVDで知ったセナの速さに心躍らせ、現役世代では皇帝シューマッハの強さに胸を熱くした。免許を取得すると自然とスポーツカーに興味を持ち、10〜20代の頃はEG6型のホンダ・シビックやS13型の日産・シルビア、NA8C型のユーノス・ロードスターを乗り継いできた。
「当時はサーキットや峠もよく走っていたんですけど、年齢的に少し落ち着いてからはドイツ車に興味が移っていきました。セダンが多かったんですけど、二人の息子ができてからは居住性のことも考えて、一度SUVを所有したこともあります」
これまでにKさんが乗ってきたドイツ車は、E46型330i、E90型325i、F30型325iといった歴代のBMW・3シリーズのほか、タイプ986のポルシェ・ボクスターと、ラグジュアリーであると同時にしっかりと走りも意識した車種ばかり。WRX S4に乗り換える直前には、BMWのSUVであるX3を所有していたそうだ。
「ただ、やっぱりSUVって自分が能動的に運転している感覚が、それまで乗ってきたクルマに比べて薄かったんですよね。『乗っている』というより『乗せられている』感じがしたと言いますか。年齢的にも40代になって、元気にスポーツカーに乗れる時間もそんなに残されていないなと感じるようになってから、また運転するのが楽しいと思えるクルマに乗りたい気持ちが高まっていったんです」
Kさんがそんな想いを募らせていたタイミングというのが、ちょうど仕事で中国の広州に単身赴任をしていた時期だったそう。今や世界一の自動車市場に成長した中国で働き、さまざまな現場感覚を習得していく中で、Kさんは冒頭に述べたような『新しい視点』を得たのである。
「中国には3年程いたんですけど、日本人である僕が驚くほど、現地では日本車の人気が高いことに気がついたんです。特にスカイラインGT-RやNSX、そしてインプレッサWRXといった日本車の黄金期に輝いた名車の評価が高くて、日本人として少し誇らしくもありました。それで次に買うクルマは国産車にしよう、そしてこれまでFRが多かったので、今度は4WDのターボ車にしようと、心が決まっていったんです」
日本を離れ、海外に住んだからこそ、あらためて実感した日本車の良さ。目から鱗が落ちるような思いがしたKさんは、次期愛車の候補を絞り込んでいった。その時に現在のWRX S4と並んで候補に挙がっていたのが、R35型の日産GT-R、トヨタのGRヤリス、そしてWRXの長年のライバルだった三菱ランエボの最終モデル、ランサーエボリューションXである。
「最終的には家族と一緒に長距離乗っても疲れないこと、安全性が高いことなどの総合力でWRX S4を選択しました。本当はWRX STIの特別仕様車であるS208が理想だったんですけど、ちょっと予算的に厳しくて(笑)。状態の良さそうな中古車を探していたところ、今乗っているS4 tS NBR CHALLENGE PACKAGEを見つけました。静岡県のお店で遠方だったんですけど、ちゃんと確認したくて直接見にいって購入に至りました」
そんな経緯で、Kさんが購入した『WRX S4 tS NBR CHALLENGE PACKAGE』というクルマ。まるで数え役満のごとく車名にさまざまなトッピングが加えられているが、ここでそれらを一度説明しておこう。
まず『WRX S4』は、2014年にデビューした四輪駆動のスポーツセダンで、『WRX STI』とともに、いわゆるインプレッサWRXの系譜を受け継ぐ存在だ。現行モデルは2021年に登場しており、KさんのWRX S4は初代型ということになる。
次に『tS』だが、これは2017年にSTIがWRX S4にチューニングを加えたコンプリートモデル『WRX S4 tS』として発売された特別仕様車。FA20型の2.0リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジンは、吸排気系パーツの強化で加速中の過渡エンジントルクを最大で約10%向上。CVTにはオイルクーラーが加わり、耐久性を高めている。
さらに足まわりには、ビルシュタイン製の可変減衰力サスペンションやフロントのブレンボ製4ポット対向ブレーキキャリパーを採用。VDCも専用制御となり、コーナリングにおける旋回性能や操縦安定性が向上された。
外装にはSTIのイメージカラーであるチェリーレッドがアクセントとして採用され、メッシュタイプのフロントグリルやリヤバンパーに彩りを与えている。ちなみにドアミラーカバーがチェリーレッドになっているのは、『もう少しSTIの主張を強めたかった』というKさんが自らカスタマイズしたもの。さらにチェリーレッドのフロントアンダースポイラーも取り付けるのを今後の楽しみにしているそうだ。
インテリアもSTI製レカロバケットタイプフロントシートが備わるほか、STIのロゴが入った専用メーターを装備。スポーティなだけでなく、大人らしい高級感もクルマ好きとして年齢を重ねてきたKさんの気分にマッチした。
そして、そういった特別装備がふんだんに盛り込まれた『WRX S4 tS』を対象に、さらなる専用装備が加わるのがオプションパッケージの『NBR CHALLENGE PACKAGE』。
NBRはニュルブルクリンクを意味しており、ブラック塗装のSTI製BBS 19インチ鍛造ホイール、ドライカーボンで作られた大型のSTI製リヤスポイラーといった本格派の装備が設定されている。内装にウルトラスエード巻のステアリングホイールが加わるのも特徴だ。
撮影時にはスタッドレスタイヤを装着していたKさんのWRX S4だが“このクルマの雰囲気を壊したくない”ということで、スタッドレス専用のホイールに替えることなく、ちゃんと『NBR CHALLENGE PACKAGE』専用のBBSにタイヤを履き替え。Kさんの芯の通ったこだわりを感じさせるポイントだ。
「このクルマを買う上で気がかりだったのがCVTなんですけど、購入前に専門誌の試乗記や、マリオ高野さんのYouTubeを参考にして、かなり改良されていることを確認できたのが安心材料になりました。実際に購入してみて、CVTに対する不満は一切ありません。いつもマニュアルモードでステアリングのパドルを使って変速していますが、レスポンスもよく、しっかりとパワーバンドまで回して加速の良さを楽しんでいます」
現在は片道2〜3kmではあるが、毎日通勤にWRX S4を使い、『本当に買ってよかった』と毎日感じているというKさん。そして、ある意味Kさん以上に、家のクルマがWRX S4になったことを喜んでいるのが二人の息子さんだ。
「子供たちもすごくクルマが好きで、リヤスポイラーがカッコいいと喜んでいます。横に乗っていると『もっと音が聴きたいから、アクセル踏んで!』とか言うんですよ(笑)。モータースポーツも好きなので、一緒に鈴鹿にF1を見に行ったこともあります。鈴鹿からの帰りは名阪国道を使うんですけど、下り坂が多いんですよね。これまでFRに乗っていたことが多かった分、特にそういったシチュエーションで雨が降っていたりすると、4WDの安心感を実感します」
自分がそうだったように、子供たちもクルマやモータースポーツに興味津々になっていることを純粋に喜んでいるKさん。正直なところ、愛車の足まわりはファミリーカーとしてはかなり硬めで、乗り味もそれなりにソリッドな味わいとなるのだが、子供たちから不満の声が出るかもと案じたのは杞憂に終わった。逆に悪路でも安定している四輪駆動と、アイサイトVer.3を備えていることによる安全性、長距離での利便性を実感し、Kさんは『最高のクルマと出会えた』という想いを噛み締めている。
(文: 小林英雄 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:平城京朱雀門ひろば(奈良県奈良市二条大路南4-6-1)
[GAZOO編集部]
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