憧れ続けたスカイラインGT-R。そのドッシリとした走行安定性に感服!

  • GAZOO愛車取材会の会場である秋吉台展望台で取材した日産・R34スカイラインGT-R

    日産・R34スカイラインGT-R

子供の頃からクルマが大好きだったというKENTAさん。中でも一番のお気に入りは、当時発売されたばかりのR34スカイラインGT-R。

「最初はフェラーリが好きになったけど、子供ながらに“値段が高過ぎて絶対買えないだろう”と思いました(笑)。それなら、日本車で一番速いクルマは何だろう? ということからスカイラインGT-Rに憧れを持つようになりました」

パワースペック的にはR32、R33同様、メーカー自主規制値いっぱいの280psながら、トルク特性の向上が図られるなど円熟の領域に達した6気筒ツインターボのRB26DETTエンジン。それに、直線基調の引き締まったスタイルなど『免許を取ったら絶対にR34GT-Rに乗りたい!』と、心に決めていたというKENTAさん。そうして高校卒業を間近に控えた頃、父親と一緒に近所のディーラーまで購入前の下調べに行くことに。

「とりあえず参考までにと、見積もりをお願いしたところ、車両だけで500万円オーバー。諸経費云々を含めると600万円近い金額になりました。その頃、5年ローンで、ざっと計算すると月々の支払いが10数万円、ボーナス月は20万円+α。正直、これから社会人一年生となる身分には厳し過ぎる条件だと、現実を突きつけられた思いでした」

結局この日は実車の見学だけに終わったというKENTAさん。目先を変えて、GT-Rではなく、FR車であるR34型25GTを検討してみた。しかし、こちらも新車では若者が簡単に手を出すことができない金額となってしまうため、早々と断念してしまった。

そうして、初めての愛車として選んだのは、ひと世代前のR33型スカイラインGTS-tタイプMだった。憧れのGT-Rでは無いものの、子供の頃からファンだったスカイラインシリーズの一車種ということで大いに気に入り、毎日のように乗っていたが、数年後の事故によって愛車を失うことに…。

その後は、地元の友人が結婚を機にワゴンに乗り換えるということで、KENTAさんもレガシィ・ツーリングワゴンへと路線を変更。しばらくはユッタリ、のんびりとしたカーライフを過ごしていた。
しかしある時、その友人が『結婚して子供も生まれたけど、乗るならやっぱりスポーツカーだ!』と突然開眼。すでに購入候補も絞られているようで、まずは下見にと、福岡までKENTAさんも同行することになった。ちなみに友人のお目当てはシルビア(S15)だったが、店頭を訪ねてみると、そこには4台ものスカイラインGT-R(R34)の展示車両が…。

「偶然というか、運命的というか。最初はただ単に友達の付き添いで行ったつもりだったのですが、ふと気づくと自分も物件探しモードになっていました。この時は展示されていた4台のうち1台を軽く試乗しただけで終わりましたが、これをきっかけにGT-R熱が再発」

「当時は今のようにGT-Rの中古車価格が高騰する前でしたから。それから3ヵ月ほどが過ぎても、まだそのクルマが在庫として残っていたので、再び試乗に出向いてその日のうちに購入を決めました」

こうして30歳を前に、長い間憧れ続けて来たスカイラインGT-Rを愛車として迎え入れる夢を叶えたKENTAさん。所有して改めて驚かされたのが、短時間の試乗だけでは知り得なかった、想像を遥かに超える走行性能だった。
RB26エンジンがもたらす、アクセルを踏み込むのが恐ろしくなるほどのパワー感。そして、4つのタイヤがガッチリと路面を捉えるスタビリティの高さなど、街乗りレベルでも国産スポーツのフラッグシップとしての凄味を十分に実感できたという。

「GT-Rはあらゆる面で余裕があって、それまでよりも逆にスピードを控えるようになったくらいです。安定感もバツグンで、あまりにもドッシリと落ち着いているので、高速道路での移動は手持無沙汰になるほどです。早いもので買ってから15年が経過しましたが、エアフロメーターのトラブルが発生してエンジンが吹けなくなった以外、大きな問題は起きていません。もちろん無事故ですヨ」

ちなみにトラブルの原因は、経年劣化によるエアフロメーター内のハンダの剥離だった。しかし、前オーナーがECUユニットを社外のコンピューターに変更していたため、ディーラーでは修理を受け付けてもらえず、ネットの情報を頼りにDIYでどうにか対処したという。

さらに、エンジンはリフレッシュを兼ねて一度オーバーホールを受けており、その際にブーストアップ仕様だったECUのセッティングも完全なノーマルデータへと初期化。
念の為にとオークションサイトで純正ECUも手に入れているが、先々チューニングを行なうことを想定して、エンジンマネージメントについては社外のコンピューターをそのまま使用している。

その他、外観については車高調整式サスペンションで若干のローダウンが行なわれている点を除けば、基本的にノーマルの状態が保たれている。しかし、唯一にして最大のアピールポイントとなっているのが精悍なマットブラックのボディカラーだ。なんと、これはKENTAさん自身が施工したラッピングフィルムによるものだと言う。

「以前からラッピングに興味があって、まずは自分のクルマで試してみようと軽いノリで作業を始めたものの、予想以上に大変でした。ラッピングって、ボンネットやルーフパネルなど面積が広い部分への施工は割と簡単で、逆にバンパーのエアダクト周りのような奥行きや凹凸がある細かい部分の方が難しいんです。自分では割と器用な方だと思っていましたが、まだまだ努力と経験が必要ですね」

KENTAさんは謙遜するが、その仕上がりはいわゆるDIYという次元を大きく超えるもので、一見しただけでは全塗装と見間違えそうなほどナチュラル。近くに寄って見てもフィルム同士の継ぎ目はほとんど分からない美しさだが、KENTAさんがクオリティに対しここまで厳格にこだわるには大きな理由があった。

「ウィンドウフィルムやプロテクションフィルムなどを扱う、カーディテーリングに関する仕事を起業したいと思っているんです。そのきっかけは、海外を拠点に活躍されている超スゴ腕の施工技術者の方と、SNSを通じてコンタクトを取ることができたこと。カーラッピングの世界大会で4度の優勝を飾るほどの有名な方で、以前からずっと動画をチェックしていたのですが、昨年、日本に帰国するタイミングに合わせて地元までクルマを見に来てくれたんです。その時の車体はブルーでラッピングしていたのですが、指導を頂いた点を踏まえて、施工をやり直したのがこのマットブラックの仕様なんです」

現在も週末には自宅敷地内のガレージでラッピングの施工の練習に励んでいるというKENTAさん。GT-Rのケアについてはアンダーフロア周りのサビ対策やR35用エアフロメーターへの交換、内装の劣化部分の補修などにも気を使う。

その他にも色々と手を加えたいところがあるようだが、それは『起業』という、人生における新たなステップアップへのチャレンジに一定の見通しが立ってから。もうしばらくは、希望に満ちながらの“お預け”ということになりそうだ。

(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)

許可を得て取材を行っています
取材場所:秋吉台展望台(山口県美祢市秋芳町秋吉秋吉台)
取材協力:美祢市観光協会/秋吉台観光交流センター

[GAZOO編集部]

MORIZO on the Road