マツダのクラフトマンシップが感じられる、全部盛りのステーションワゴン アテンザワゴン
趣味性を重視したクルマ選びでは、ある一定のこだわりに基準を置くことが多い。例えばボディスタイルであったり、MTなど操作性であったりと、人それぞれ感性を刺激するポイントが異なるのは面白いところだ。
そんな中、免許を取得して初めて運転したクルマからセダンに心惹かれ続け、歴代の愛車はすべてセダンを乗り継いできたというのが、この2015年式マツダ・アテンザワゴン XDプロアクティブ(GJ2AW)のオーナー『つか』さん。ライフステージの変化によって、このアテンザではじめてワゴンに乗り換えたのだという。
3代目アテンザワゴンとして2012年に誕生したGJ型は『SKYACTIVE TECHNOLOGY』を採用した次世代モデルとして注目を集めた。
中でもSKYACTIVE-Dと呼ばれるディーゼルエンジンは、従来のディーゼルエンジンから格段の進化を遂げ、省燃費性能はもちろん振動や黒煙といったネガティブ要素をクリアにし、ディーゼルエンジンの可能性を世に知らしめたモデルでもある。
実際にクリーンディーゼルのコンセプトは、このアテンザ世代を皮切りに日本はもとより世界に広まり、各地でトップセールスを記録。現在もクリーンディーゼルの進化は続き、幅広い車種に搭載されているほどだ。
歴代の愛車としてセダンを乗り継いできたつかさんが、そんなクリーンディーゼルのアテンザワゴンに乗り換えるキッカケのひとつは、前述の通り家族が増えたこと。さらにディーゼルエンジンへの興味が高まったことも理由のひとつだった。
「免許を取ってから、長らくアコードセダンを乗り継いでいたんです。家族が乗っていたアコードEXL(CB1)を皮切りに、CD5を3年で6万kmほど、CL7RでははじめてのMTを経験し6年で12万kmも走りました。その後ははじめての輸入車としてVW・パサートV6 4モーションを手に入れたんですが、このクルマではじめてのAWDというのも体験しました。でもやっぱりアコードセダンが忘れられず、再びCL9に乗り換えたのですが…。6年ほど乗ったところで電装系のトラブルが頻発するようになってしまったんです。そのタイミングで2人目の子供ができたこともあり、ファミリーカーとして使いやすいワゴンを探したのがアテンザにたどり着いたキッカケですね」
家族が増えるタイミングは、新たなクルマに出会うチャンス。これまでホンダ車に傾倒していたこともあって、第六世代のマツダ車も経験値として試してみようと考えていた矢先でもあった。そこで、これまで未経験かつ気になっていたディーゼルエンジンを搭載するアテンザに白羽の矢が立ったというわけだ。
「出会いというか、ちょうど近所の販売店にこのアテンザワゴンが並んでいたんですよ。その時は家を建てている最中で、クルマを乗り換える目処は立っていなかったのですが、現車を見にいったら欲しくてたまらなくなってしまったんです(笑)。そうこうしているうちに、このクルマの販売情報がインターネット上から消えてしまい諦めていたのですが、3ヵ月ほど経ったところで、長野県で販売されているのを発見したんです。なんでも系列会社に移されていたようで、すぐに見にいきましたよ」
とは言っても、まだ家が完成した直後で引越しが済んだばかりというタイミング。まずは一人で現車を確認に行ったのだが、次の週末には奥さんと家族を連れて改めて店舗を訪れ購入を決意。一度は諦めていたクルマが再び目の前に現れてしまったのだから、もはや運命と感じて購入するのは当然の流れだったといえよう。
搭載されるエンジンは、当初の狙い通りクリーンディーゼルを採用するSKYACTIVE-D。2.2リットルの排気量とディーゼルならではの太いトルクは、街中でのドライブから高速道路まで快適そのもの。
“この性能ならば長距離ドライブも難なくこなせるはず”と踏んでいるので、来年の夏には広島県のマツダミュージアムまでドライブすることを計画しているとか。
ディーゼルエンジンの搭載だけでなく、このアテンザワゴンに固執したもうひとつの理由が、マニュアルミッションを搭載していること。3代目の愛車でもあるCL7R型アコードで体験した、操る楽しさを再び経験できるというのも、この個体を熱望する一因でもあるわけだ。
「でもMT車は妻が運転できないので、正直なところ難色を示していましたね。でもブレーキの踏み間違えリスクを軽減できると、販売店のスタッフが援護射撃をしてくれたので、無事に妻の決済をクリアできました」
「気になっていたディーゼルエンジン、さらにMTのステーションワゴンという稀有な存在はこのアテンザワゴンくらいですよね。さらにAWDやアダプティブクルーズコントロールといった、歴代の愛車にあった特徴を全部盛りしているので、これまでの愛車遍歴の総決算とでも言うべきモデル。その点が気に入ってしまい、気づいたらこれまでの愛車の中で一番長い7年も乗り続けていますよ」
ちなみに、この世代以降のマツダ車と言えば、深い艶を持つ赤が特徴の『ソウルレッド』が人気のカラー。カタログなどでも一点推しというべき露出が行なわれ、WEBで現行モデルのラインアップを見ても9割がソウルレッドをイメージカラーに採用している。そんなマツダの戦略には乗らず、つかさんが選んだのは『ブルーリフレックスマイカ』という、ブルーとガンメタの中間色。陽の光で変化する色味もまた、自分だけの愛車として愛着を深めるポイントにもなっているのだ。
これまでの愛車歴でセダンを好んでいたのは、車高を下げたスタイリングがカッコいいのはもちろん、運転するポジションも好みに合っていたから。低いアイポイントはスポーティな雰囲気が楽しめるというのも大きな理由だったという。その点でもアテンザワゴンはセダンと共通プラットフォームを使用するため、運転席に座った感じも違和感なし。子供のためにラゲッジスペースは拡大したものの、自身がクルマに求める要素をすべてクリアしているという点もまた、満足度を高めているのである。
現在の走行距離は7万kmを少し超えたところ。しかし運転席のシート座面が少々ヤレてしまったのは想定外なのだとか。そこでシート表皮とクッションを部品として取り寄せ、自分で張り替えてリフレッシュを検討。しかし最終的にはプロの手に委ね、完璧な仕上がりを実現している。というのも、大学を卒業後に自動車関連の部品メーカーに就職したため、クルマいじりには腕に覚えがあるという。そのため、無理なことは早い段階で見極めながら、できる作業は自分で行なうというスタンスをとっている。現在もブレーキのリフレッシュやクラッチのOH、サスペンション交換、オーディオのセットアップなどもこなしているほどだ。また、過去にはJAFのオートテストにも参加するなど、アテンザワゴンの走りも満喫している様子だ。
歴代の愛車にはないターボ仕様ということもあり、ダッシュボード上に置かれたブーストメーターも愛車への満足度を高めるポイントとなっている。
もちろん、ファミリーカーとして位置付けているだけに、リヤシートにはジュニアシートも完備。現在小学校4年生と幼稚園年長さんという2人のお子さんの成長に合わせ、冬には趣味のスキーへも通うなどクルマ以外の趣味にも大活躍している。
また、長距離ドライブも楽しみのひとつで、名古屋や金沢、さらに佐渡島などへの家族旅行もこなしているなど、ワゴンのメリットを最大限に生かしたカーライフを楽しんでいるのだ。
ちなみに、今年の夏にはもう1台所有しているほうのクルマで広島のマツダミュージアムを訪れたそうで、記念に購入したお守りを車内に置いていたのだが「せっかくのマツダミュージアムだったのですが、別のクルマで行ってしまって…。その時にお守りを購入したんですが、やっぱり次はアテンザで行きたいと思っちゃいましたね。だから来年の夏にはリベンジしたいと、計画を練っている最中です」とのこと。
前述の通り、自動車関連部品メーカーに勤めていたこともあるため、歴代の愛車は様々なカスタムが施されていた。そのため専門誌で掲載されるなど、クルマに関する想い出も数多くある。そんな想い出の雑誌とともに、現在はアテンザに関するカタログやスケールモデルもコレクションだ。中でもスケールモデルは『ブルーリフレックスマイカ』を探して手に入れるなど、愛車への思い入れは歴代アコード以上と言えるものである。
「新卒で自動車関連の部品メーカーに勤めていたので、モノ作りの楽しみは理解しているつもりです。そんな中で、はじめてのマツダ車を体験したところ、マツダの考えるクルマ作りの意気込みがよく伝わってくるんです。ユーザーに向けた使いやすさだったり、細部の作り込みであったり、今できる限りの良いものを作ろうと考えた職人魂とでも言うか。そんな考え方に共感できたのは、アテンザワゴンを選んで良かったと思う点ですね。これまでアコードセダンを乗り継いでいただけに、視界がひらけたというか、新しい刺激を受けたことでクルマの楽しさがさらに広がった気がしますよ」
自他ともに認めるセダン好きから、趣旨替えをして7年が経過しても未だに色褪せない魅力は、そういったクラフトマンシップへの共感も理由のひとつ。自身もモノ作りに携わる職業柄から、一見すると地味なステーションワゴンにもマツダの魂はしかと宿っていたと感じることができたから、というのも大きなポイントなのだ。
ファミリーカーとして快適なドライブを提供してくれるだけでなく、自分の趣味趣向を兼ねた絶妙なポジションを確立しているこのアテンザワゴンは、つかさんにとってまさに運命の1台だったと言えそうだ。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 中村レオ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:山梨県庁 噴水広場(山梨県甲府市丸の内1丁目6-1)
[GAZOO編集部]
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