憧れだったNSXには手が届かなかったけれど…今ではS2000にベタ惚れです
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ホンダ・S2000
ここ数年、日本のみならず世界中のクルマ好きから注目を集めている、スカイラインGT-RやRX-7、AE86やシルビア、そしてシビックなど、1980~1990年代に一世を風靡した国産の絶版スポーツカーたち。
そして、今から25年前の1999年。ホンダ『Sシリーズ』を受け継いで、29年ぶりに発売されたS2000もまた、そんな人気絶版モデルの一台である。
S2000のオーナーさん『おはぎ』さんは、愛車S2000に長く乗り続けるため常日頃のメンテナンスを大切にしながら、ドライブライフを楽しんでいるという。
「昔からクルマは好きでした。ただ、父親はクルマが好きではなかったようで家にはクルマが無かったんです。そんな背景もあって、余計にクルマに乗りたいという気持ちが強かったと思います。そうして18歳となって免許を取り、大学生になってから『何に乗ろうかな』と調べているうちに、クルマを所有するということは、維持費にもお金がかかることを知りました。そこで、どうせお金がかかるなら普通のクルマじゃなくて変わったクルマがいいなと思い、ホンダ・CR-Xデルソルを買ったのが最初の愛車です」
その後、ホンダのフィットやシティターボⅡ、日産・マーチ、BMC・ミニ、スズキ・ジムニーといった愛車遍歴が続いた。
「ちょっと変わったクルマと、普通のクルマをほぼ交互に乗ってきたんです。というのも、マニアックなクルマは楽しいけれど、維持費や手間がかかり過ぎて嫌になって普通のクルマに乗り換えるんです。でも結局それでは物足りなくなって、また変わったクルマに乗るというのを繰り返しているんです(苦笑)。それと自分が最初に買ったクルマがホンダ車だったこともあって、極力“ホンダ縛り”で探すことが多かったですね。あとは比較的小さめのクルマが好きです。ローバーミニに乗った後は、ジムニーですら大きく感じましたよ」
そんなおはぎさんには、昔から憧れてクルマがあるという。それが1990年に発売された2シーターミッドシップの最高峰、ホンダ・NSX(NA1)であった。低く構えた流麗なボディはオールアルミ製で、軽量で高剛性というシャーシ性能の面でも秀でた存在であった。
「ジムニーにちょっと飽きてきたので、NSXに乗りたいと思ったんです。NSXはこれまで乗ってきたコンパクトなクルマとは違いますが、このクルマだけは昔からの憧れだったんですよね。ところが、以前見積もりをとった時には300万~400万円だったんですけど、気付けば500万~700万円に上がってしまい、今では1000万~2000万円となって…。当時買っておけば良かったなと、今でも思いますよ」
そして、すでに手の届かない価格に跳ね上がっていたNSXの代わりに狙いを定めたのがS2000だった。ホンダ車好きのおはぎさんにとって、NSXの後にホンダのスポーツ車でフラッグシップモデルとなったFRオープンスポーツカーは、乗りたいと思わせるに十分な魅力があったという。
「年式やボディカラーへのこだわりは特になかったんですけど、予算的には前期型かなと。あと程度がいい個体が欲しかったことと、故障を見込んで1年保証が付くことからホンダディーラーで探すことにしたんですけれど、全国に何台もなかったですね。その中で比較的程度が良かったのがこの黄色のクルマで、ちょうどS2000のイメージカラーでもあったので、その点も気に入りました」
こうして7年前の2017年3月に、新たに迎え入れた愛車は1999年式のホンダS2000(AP1型)のMT車。走行距離は4万kmとそれほど伸びていなかったが、購入時の程度を振り返ってもらうと「今思えば酷かったですね。そんなに走っていないのにサスペンションなどは相当ヘタっていました」と、懐かしそうに目を細めた。
ダイレクトに感じられるドライビングフィールはお気に入りの様子で、この7年間は休日のドライブカーとして大活躍しているとのこと。
「よく、日帰りや一泊二日のドライブを楽しんでいますね。中でもここ数年は、毎年フェリーにクルマを乗せて、北海道のドライブを1週間くらいかけて楽しんでいるんですよ」
そうして現在、走行距離は10万kmを超えてきたが、もちろん何もせずただ乗り続けていたわけではない。できる限りノーマル状態を維持しつつ、長く楽しく乗り続けるためのカスタマイズやメンテナンスにもしっかり気を遣い、マメに消耗パーツ交換やオーバーホールを行なっているそうだ。
「カーコミュニティサイトの“みんカラ”を見て、『このくらいの距離を乗っている人は、ここがダメになるんだな』といった情報を確認して、オーバーホールの計画を立てています。ブレーキ関係やブッシュ類の打ち換え、アーム類の交換などを徐々に進めているんです」
その中でも交換して大きく変わったと感じるのは、サスペンションやタイヤ、クラッチなどの足まわり関係だという。
「サスペンションは3年くらい前にS2000の20周年記念に復刻されたモデューロ製に交換したんですが、20年も経っていたサスペンションだったので、驚くほどに生き返りました。今思うと、これまでよくあんな状態で乗っていたなと思うくらいですよ」
「タイヤはこれまでブリヂストンを履いていたんですが、物は試しとミシュランを履いてみたら、これが私好みの乗り味でした。ミシュランのキャラクターが可愛いのも良いですね。タイヤ以外も、クラッチを交換したらこれまた全然フィーリングが変わって、アクセルを踏んだ時に進む距離が違った感覚になったのも驚きました。さらに、スピードが出るクルマなのに甘いと感じていたブレーキも、マスタシリンダーの交換とキャリパーのオーバーホールをしたら、ものすごく効くようになりました」
ただ、最近では純正部品も消耗パーツ以外は出にくくなっているらしく、オーバーホールも一筋縄ではいかない様子だ。
「ここ1、2年で急激に純正部品手に入りにくくなってきた気がしています。ブレーキ関連などの基本性能に関わるものはまだ出ますが、電子部品などのパーツは無くなってきていますね。私はオーナー同士のつながりはなく、SNSもやっていないので、この先純正パーツが入りづらくなると大変だなとは思っています。今は埼玉にあるS2000の専門店でメンテナンスをお願いしているんですが、専門店とはいえ、電子部品が無くなったらどうしようもないので難しいところです」
ちなみに今現在は、ホイールを車体に取り付けるハブのベアリングを交換したいそうだが、バックオーダーがたまっている“ご相談パーツ”状態だとか。さらにはこんな悩みも。
「私の場合、普通より手荒く乗っていたいと思うので、こまめなオーバーホールは大事だと思っています。けれど、お金の工面には正直苦労していますね」
S2000に限らずだが、純正パーツ価格の値上がりが激しくなるであろう今後は、金銭面での負担が増える心配は尽きないだろう。
そんな中、おはぎさん自身が運転を楽しむためにカスタムしたのが、マフラーとシートだ。
「マフラーはYouTubeの紹介動画を見て『すげーいい音だな』と思ったマフラーにしたんですけど、動画ではマフラー出口の音を拾っていたので、運転席に座って聞こえてくるマフラー音と全然違ったんですよね。交換した際に『どうですか?』と言われたけど、正直イメージと違って(苦笑)。でも、逆に良かったかなと思うのは、マフラーサウンドを聴くために耳を済まさなければならないから、運転に集中するようになったことです(笑)」
「シートはガチガチじゃなく、快適性を売りにしていたレカロのバケットシートに交換しました。自分の乗り方に合っているかなって」
長距離ドライブが趣味だけに、快適なドライビング環境を確保できるシートへの交換のメリットは、さぞ大きかったに違いない。
そんなおはぎさんに、今後のS2000との付き合い方についても伺ってみた。
「今後も乗れるうちはきちんと手をかけて、快適に乗り続けていきたいです。ただ、補修パーツ等が手に入らなくなって維持ができなくなった時は、手放すことも考えないといけないのかな? とは思っています」
この日、取材の時にホンダのTシャツを着てくるくらい、ホンダ車を好きになり、S2000を購入してから早7年。
『変わったクルマに乗ってみたい』と、行き着いた先のS2000は、おはぎさんにとって本当に大切な1台となっている。お金の工面は大変なことだけれど、メンテナンスに気を配りつつ、どうかいつまでも乗り続けて下さいね。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:山梨県庁 噴水広場(山梨県甲府市丸の内1丁目6-1)
[GAZOO編集部]
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