一家3世代が同じハンドルを握るアルテッツァは、家族の歴史そのもの
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トヨタ・アルテッツァ(SXE10型)
運転する楽しさとファミリーカーとしての性能を併せ持った4ドアのコンパクトセダンというパッケージを活かし、オーナー本人はもちろん、その父や子にまで世代を超えて愛され、大切に乗り継がれている愛車がある。
今回お届けするのは、そんなご家族とその愛車トヨタ・アルテッツァ(SXE10型)の物語である。
『エム・エイチ』さんがクルマ好きになった背景には、この日一緒に取材を受けてくださった父親の『エム・エイチじぃじ』さんの存在無くしては語れない。
エム・エイチじぃじさんはトヨタディーラーで40年勤め上げたという元整備士で、エム・エイチさんは幼い頃からそんな父親の職場へ何度も遊びに行くうちに自然とクルマ好きに育ったという。
そんなエム・エイチさんが18歳でマニュアルの運転免許を取得して最初に乗ったのは、父親が所有していたクラウン。学生時代は父親と共有して運転を楽しみ、就職後に初めて自分のお金で購入したのは、中古のいすゞ・ジェミニであったという。
「“街の遊撃手”というキャッチコピーが記憶に残るコンパクトカーで、僕が乗っていたのは4ドアセダンタイプです。マニュアル車に乗りたかったのと、手頃な価格だったことから選んだのですが、同じ車種のハイグレードモデルに乗っていた先輩から頂いたBBS製のホイールやレカロ製シートなどを装着していたこともあって、見た目がカッコ良くて気に入っていましたね」
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(写真提供:ご本人さま)
「ジェミニに2年ほど乗った後は、スープラ(JZA70型)に乗り換えました。後期の最終型モデルはビルシュタイン製のサスペンションが装着されていたりして、ノーマルのままでも楽しく走れそうだと思ったんです。当時はJZA80型が現行モデルだった頃で、70スープラは型落ちで安く買えるタイミングでした。とはいっても23歳の時なので、気合いのフルローンでの購入でしたけどね」
“ノーマルで楽しく走れそうだから”と購入したスープラ。しかしエム・エイチさんはゼロヨンに夢中になり「カスタムしまくっていました」と懐かしそうに笑う。
遊びグルマとしては申し分なかったスープラだったが、仲間とドライブやスキーに出かける時などは、移動手段としての役割としては少々難ありだったそうで『乗りにくい、うるさい、狭い』など、不満の声も上がっていたのだとか。そんな時に発売が開始されたのがアルテッツァだった。
「4ドアの6速マニュアル車が発売されると知って『これ、欲しいな』と思ったんです。僕の仕事はSE(システムエンジニア)なのですが、ちょうどその頃はコンピューターの“2000年問題”があって仕事が多忙を極めていた時期だったんです。クルマ遊びがまったくできず、ストレスMAXだったこともあって、アルテッツァを買うことで気分一新、ストレスを発散できるかなって思いまして…。4ドアなのも友人と出かける上で都合が良かったですしね。親戚筋のディーラー営業マンを通して購入しました。僕にとっては初めての新車だったので、嬉しかったですね。そうそう、それまで乗っていたスープラは、ローンごと親父が引き継いでくれました(笑)。昔から父がフォローしてくれるから僕は好きなクルマに乗れているんです」
というのも、実はスープラに乗り換えた時も、エム・エイチじぃじさんはジェミニを通勤用として引き継いでくれたのだそうだ。
こうしてエム・エイチさんが1998年に購入したトヨタ・アルテッツァ(SXE10型)。3S-GE型エンジンを搭載した6速マニュアル車で、内外装もスポーティなRS200 Zエディションをセレクトした。
「ボディ色は一目惚れしたホワイトを選びました。また、限定オプションで開放感のあるサンルーフ付にしてもらったのがこだわりですね! アルテッツァは実際に乗ってみると運転も楽しいですし、交換したマフラーの音も気に入っていて。結婚するまでは平日は父が通勤用に、週末は僕が友人たちとスキーやキャンプに行ったりと、常に僕たち親子の相棒として一緒に走ってくれていました」
アルテッツァはエム・エイチさん家族の大切な時間を支えてくれた存在になったのだ。そしてそれは結婚後も続き、家族の成長を見守り続ける。
「長女が生まれたとき、病院から妻の実家まで初めて乗せたのもこのクルマです。泣き止まない我が子をあやしながら、どうにか家に着いたときの安堵感は忘れられません。初めての子育て、スーパーへの買い物や公園への送り迎え、家族旅行など、すべての思い出がこのクルマには詰まっています」と、エム・エイチさんは優しい表情で目を細めた。
しかし子供も成長期になり家族も増えると、次第に大きなSUVの必要性を感じるようになったという。
「嫁も大きなSUVのオートマ車にしたいと言っていたので、乗り換えを考えもしたんですが、どうしても手放すことができなくて…。親父に相談したところ、アルテッツァを快く引き受けてくれたんです」
いつも息子さんのカーライフをサポートしてくれる大切な存在であり、元トヨタ整備士で日々の整備やメンテナンスもお手のもの。息子さんからしても、これ以上に心強い預け先はなかったことだろう。
「僕が実家に帰るたびに、親父がこのクルマを丁寧に洗車してくれていて。その姿は、今も心に深く刻まれています」
それから現在に至るまで18年、エム・エイチじぃじさんは「アルテッツァに乗るのは楽しいですよ」と、通勤や日常の足として大切に乗り続け、息子が使用する休日には真っ白なボディを丹念に磨き続けた。さらに仕事を退職してからはアルテッツァの洗車が日課のようになったというのだから、愛車は常にピカピカの状態を保ち続けているわけだ。
「マンションの駐車場で青空駐車なんですが、ほぼ毎日洗車とワックス掛けをしてます。もう趣味みたいなものです。同じマンションに住む方からは『今日も洗車してるね』『まだやってたの?』と、通りがかりに声を掛けられますよ」と、エム・エイチじぃじさんは嬉しそうに話してくれた。
そしてそんなアルテッツァライフに新たな風が吹いたのが、2024年のこと。大学生になった長女が「おじいちゃんとパパの思いが詰まったクルマだから、私も乗りたい」と、今時では珍しくなってきたマニュアル車の運転免許を取得してくれた。娘さんにとっても、アルテッツァは特別な家族の一員なのだ。
「娘はおじいちゃん子で、僕が教えると喧嘩になるので、親父と一緒にドライブに行ったりしながらこのクルマで運転の練習をしています。運転する時は『MT車注意』のマグネットステッカーを貼って頑張っています。このクルマを運転するのも楽しいみたいで嬉しいですね」
余談だが『エム・エイチ』というイニシャルはこのアルテッツァを大切に想う3名共通のイニシャルなのだそうだ。そんな共通点もまた縁を感じる。
現在、アルテッツァの走行距離は20万kmを超えるが、エム・エイチじぃじさんがシッカリ整備しているだけあり、トラブルはないという。そしてカスタムしている所といえば、エンジンレスポンスが軽快になるトムス製のフライホイールと、メンバーフレーム補強、そして15年前に当時同じ車種に乗っていたオーナーの友人が譲ってくれたという車高調整式サスペンションとマフラー。あとはエム・エイチさんがメインで乗っていた頃に追加したアンテナをあえて残しているだけ。見た目は当時のままで、青空駐車にもかかわらず塗装の艶は健在だ。
「このクルマは、僕にとって単なる移動手段ではありません。僕の青春、家族の思い出、そして親父との絆なんです。たくさんの大切なものが詰まった、まさに人生を共に歩んできた相棒ですね。実は過去には、新車で購入して半年で追突されて、修理に半年もかかった苦い経験もあるんです。それでも、このクルマが私たち家族の歴史を語る掛け替えのない存在であることに変わりはありません。これからもたくさんの思い出を作り、いつまでもこのクルマを大事に乗っていけることを夢見ています」
そう話すエム・エイチさんの表情はとても優しかった。きっとこれからもこのアルテッツァは、家族の絆の象徴として物語を紡ぎ続けていくことだろう。
(文: 西本尚恵 / 撮影: 中村レオ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 千葉みなと さんばしひろば(千葉県千葉市中央区中央港)
[GAZOO編集部]
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