地元仲間に作ってもらったホンダ・シビックタイプR。良いモノを大切に育てていく大人の嗜み
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ホンダ・EK9型シビックタイプR
まさに“目の覚めるような”という表現がピッタリのボディカラーに彩られたシビックタイプR(EK9型)で取材会場に現れたオーナーの『changタイプR』さん。
五木寛之氏の小説『雨の日には車をみがいて』をきっかけにクルマ好きとなり、これまでサニートラック、2ストロークエンジンのジムニー、ランドクルーザーの60と40、ボルボ850T-5Rおよび240と、バラエティに富んだ車歴を経験。10年前に現在の愛車、ホンダ・シビックタイプRを愛車として迎え入れることに。
「そろそろスポーツカーにも乗ってみれば? と話を持ちかけてきたのは、鈑金整備業を営む義弟でした。ちょうどその頃、乗っていたボルボ240セダンが、クーラーやセルモーターなど、トラブルが続いていて悩んでいた時期でもあったし、確かに他のクルマに乗り換えるというのも面白そうだなと思って『オススメの物件があったら教えてよ』と、お願いしたんです」
自身にとって初めてのスポーツカーということで、スカイラインGT-R(BNR32型)、RX-7(FD3S型)、RX-8(SE3P型)といった面々も候補にあがったが、最終的に選ばれたのは軽量・コンパクトな車体と、リッター100ps以上の性能を秘めたVTECエンジンを武器とするEK9型シビックタイプRであった。
1990年代スポーツカーの中古車市場の高騰により現在では超プレミア級のプライスが付けられている同車だが、10年前はその影響がまだ見受けられず、手頃な予算内でベース車を探せたことも選択理由のひとつだった。
「ベース車が見つかった後は、義弟の仲間たちが力を合わせてフルレストアと言っていい程のリフレッシュを施してくれました。ボディカラーは私が17歳の頃から所有してきた、カフェレーサー仕様のヤマハSR500と同じキャンディレッドに全塗装。エンジンは義弟の会社内のレーシング部門、WEBスピード(240ZやAE86レースカーを保有)でオーバーホール。圧縮比を若干高め、ECUの設定変更をしていますが、排気量は純正のままです」
「年式相応に劣化していた内装の張り替えは、天草の『MITSUNAGA-AUTO』さんにお世話になりました。苓北・天草近郊って、職人系のショップが結構多いんです。他にもピロボールの足まわりやステンメッシュのブレーキホースなど、色々と手を加えていますが、見た目はあえてノーマル風にこだわっています」
こうして地元の精鋭たちが腕を奮い、新車並みのコンディションに仕立てられたシビックタイプRの走りは痛快の一言。レジャーブーム時代はランドクルーザーでアウトドアを満喫したchangタイプRさんだったが、初めてのスポーツカーでドライビングの面白さとその奥深さに開眼。秘められたポテンシャルを安全な環境のもとで存分に体感するために、オートポリスでの走行会にも定期的に参加している。
「タイヤを通じて伝わってくる路面からのインフォメーションが的確で、すごく楽しい。ちょっとカッコつけて言うと、クルマと対話しているみたいです。タイヤは純正と同サイズのポテンザRE003。あえてムチムチの高扁平です。もっとワイドにすればタイムアップを狙えるかも知れませんが、車体側への負担が大きくなるし、ロールケージも入れてないので、私にはこれで十分。VTECエンジンのフィーリングも感動モノで、これほど気持ちの良いエンジンは、今後はもう出てこないでしょうね」
柔和な表情でシビックへの思い入れの深さを語るchangタイプRさんは熊本・阿蘇郡西原村で『CHANG-PLANT』というカレー専門店を営んでいる。クルマやバイクへのこだわりも強いchangタイプRさんだが、料理へのこだわりも人一倍。将来自分の店を持つことを志したのは中学生の頃。20歳からは本場のカレーや、そこに使用されているスパイスへの見識を深めるべく10年もの間、バックパッカースタイルでタイ、ベトナム、カンボジアなどを歴訪。その後、30歳にして現在のお店をオープンしたとのことだ。
「両親が商売人で忙しくて、僕が毎日のように兄弟の分まで料理を作っていました。最初は仕方なくやっていたけど、仕事を終えて帰ってきた父が僕の料理を食べて『うまい、うまい』と褒めてくれていたことが料理人を目指すひとつのきっかけでした。お店を始めてから今年で24年になります。カレーには小麦粉を一切使わず、インドから取り寄せたスパイスで、一から私自身のレシピで作っています。地元のあか牛を使った“しゃばしゃばカレー”や“ステーキカレー”、“チキンレッグカレー”などが好評を頂いています」
お店の場所は九州・熊本の超定番ドライブコースからも近く、店内にもクルマやバイク関連の様々なアイテムをディスプレイしていることから、クルマやバイク好きも多く訪れるという。赤いシビックも看板代わりの目印とされ、ミニカーや手描きのイラスト、関連する雑誌などがプレゼントとして寄せられている(現在は来客用の駐車スペースを広く取れるように、セカンドカーのアルトワークスでの出勤が多いとか)。
「僕がサーキットを走るようになったのも、トヨタ・86に乗る常連のお客様に勧められたからです。主要なメンテナンスは義弟から紹介された“名医”の方々にすべて任せているし、オイルの管理もGRガレージ熊本さんにお願いしているので、僕は乗るだけで何もしていません(笑)。僕のカーライフは周りの皆さんの支えがあってのことだと、常々、実感していますね」
シビックに乗りはじめてからは『頭文字D』や『MFゴースト』も読むようになったというchangタイプRさん。スポーツカーへの関心度の高まりと共に、クラシカルなスタイルやオープンエアの爽快感が魅力のロードスターや、パワフルな4駆ターボのランサーエボリューションなど、ふとした時に他のクルマへの浮気ゴコロが顔を覗かせることもあるようだが、それは一瞬の気まぐれに過ぎない。
「やっぱり自分にはこのクルマが一番しっくり馴染みます。壊れたら直すし、色が褪せてきたらまた塗り直せば良い。メーカーからの純正部品はほとんど出なくなりましたが、先ほども申し上げた名医がたくさんいるので心強いですね。クルマに限らず、私の友人たちには本当に気に入ったものを定期的にリフレッシュさせながら長く使い続ける、という考え方を持っている人が多いんです。まぁ、いま風に言うとクルマ版のSDGsというトコロでしょうか。オドメーターはもうすぐ24万kmだけど、まだまだこれからですよ」
そんなchangタイプRさんの影響を少しずつ受けつつあるのが、奥様の美智代さん。店舗駐車場のシビックの隣に見えるブラックのトヨタ86は彼女の愛車で「ミッションがATだから、おとなしく街乗りしています」と言いながらも、サーキット走行にも興味津々の様子である。ちなみに、シビックのコンソールに置かれている象(タイ語でchang)のマスコットは彼女の手作りによるものだそうだ。
シビックタイプRと86に乗っているという、さながらコミック雑誌の設定であるかのようなクルマ好きカップル。いつの日か、サーキットで2台仲良くランデブー走行ができる日が来ると良いですネ!
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三角西港(浦島屋、旧三角簡易裁判所ほか)(熊本県宇城市三角町三角浦)
[GAZOO編集部]
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