慌てず焦らずジックリと。念願だった日産 シルビアと歩む青春のカーライフ
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日産・シルビア(PS13型)
お父様の影響でクルマ好きになり、アーケードゲームに明け暮れていた頃。仲間から「近所に、ちょっと変わったカフェを見つけた」という話を聞きつけた『kiyoler』さん。ドリンクメニューはコーヒーのみで55種類、自家焙煎にこだわり、駐車場には時間毎に面白そうなクルマが停まっているというのだ。
免許取り立てだったkiyolerさんが初めてそのカフェに足を運んでみると、ランサーエボリューション、R34型スカイラインGT-R、トゥデイなどが並んでいた。
そんな様子をぼ~っと眺めていたところ、お客さんでカフェが混んでくる時間帯に差し掛かるとともにそれらのクルマたちはスッと何処かへ走り去っていき、そのお店に配慮したスマートさも相まって、やたらとカッコよく見えたのだという。
「やっぱ、国産スポーツカーってカッコいいよなぁ…。俺も絶対に、いつかは…」
そう、思い続けること6年。念願叶って現在は、愛車の日産・シルビア(PS13型)でそのカフェに通うようになったという。そして気が付けば、隣にはコーヒーを飲みながらクルマについて話せる、同じくクルマ好きの友達がいると嬉しそうに話してくれた。
そんなkiyolerさんが何故シルビアを選んだのかというと、書籍やDVDなどを扱うリユースショップで発掘した、CARBOY誌主催の『ドリコングランプリ総集編』というビデオを見たのがキッカケだという。
ただ思い返せば、幼少期にお父様のご友人のスカイラインの助手席に座らせてもらったり、アニメ『頭文字D』に登場する主人公がAE86トレノでドリフトをしている姿を何度も巻き戻しては再生したりして、カッコいいと憧れを抱いていた。つまり、本能的にドリフトに興味を示していたというわけだ。
「リヤタイヤが滑ってスライドするなど、ドリフトって一見破綻しているような動きに見えるかもしれないけど、ドライバーは自分の思惑通りにコントロールしているというのが良いんです。日常的にはまず出せない挙動を、ドライバー自らが意図的に作り出せる。そんなドリフトに魅力を感じていました」
(写真提供:ご本人さま)
初めての愛車は、AE86トレノのリトラクタブルヘッドライトに影響を受けて購入したロードスターだったそうだが、時が経つにつれて伝説的D1GPドライバー黒井敦史選手が乗っていた、シルビアに180SXのフロントフェイスをスワップした“ワンビア”の走りに興味を持つようになったという。
『欲しい!』と思うと、そのクルマについてもっと深く知りたいと考えるようになり、ドリフト天国という雑誌を手に入れて熟読。その中で主に取り上げられていたのは、リヤフェンダーを加工したり、オーバーフェンダーを装着して幅の広いタイヤを履かせるといったカスタムだったそうだが、たまに掲載されていた『東北仕様』と呼ばれているカスタム手法に興味が湧いたそうだ。
「僕が見ていたドリコンのビデオや雑誌に、たま〜に『東北仕様』が登場するんですよ。当時を生きていたわけじゃないから細かいことは分からないんですけど、純正ベースでシンプルなのに、しっかりカスタムされているところが僕の心にすごく響いたんです」
諸説あるそうだが、kiyolerさんの調べによると…後期型の180SXに使われているサイドステップとリヤアンダースポイラー、シルビア用もしくは前期型の180SX用のリップスポイラー、そしてR32スカイライン タイプMのリヤウイングというのがお決まりのパターンなのでは? ということだった。
「言ってしまえば、当時を知らないので、正直なところこれが正解なのかは分からないんです。だから、YouTubeを見たり、当時の雑誌を買い漁ったり、SNSで東北仕様にしていらっしゃる方にDMをしてお話を伺ったりと、少しずつ答え合わせをしていきました。そんな中、驚いたのが海外にコアなファンがいて、逆にいろいろと教えてもらうということもありましたね(笑)。そうやってたくさんの方に協力して頂き、情報をかき集めて自分なりに再現した東北仕様だからこそ、愛着が湧いているんです」
嬉しかったのは、CARTUNEというクルマ好きのウェブサイトでこのクルマをアップロードした時、意外にも温かいコメントが多かったことだそうだ。東北とは距離のある熊本で、正確な情報が分からないまま手探り状態でカスタムしただけに、もしかすると否定的なコメントもあるかもしれないと覚悟していたのだとか。
ところが、いざアップしてみると東北に住んでいらっしゃる方からも『昔、友達がこのカスタムをしていた』などの言葉をかけてもらったと、照れ臭そうに話してくれた。そして、もしかすると自分が東北仕様をリスペクトしているという思いが伝わったのかもしれないなと、なお嬉しそうな笑顔を見せた。
今後の目標は、値段が高すぎて手に入れられなかった、サイドステップとリヤアンダースポイラーを純正品にしたいとのことだった。
「実際にやってみて分かったのは、コアなカスタムすぎて、思ったよりもパーツが揃うということなんです。これは嬉しい誤算でしたね」
6年前に夢見た“こういう雰囲気のクルマで街を流したい”と、思い描いていたカスタムが実現できたわけだから、去年は居ても立っても居られずに色々なところに足を運んだそうだ。
全国からクルマが集まる神奈川県の大黒パーキングエリアまで出向いたり、気心知れた仲間と美味しいものを食べにドライブしたり、九州内でもふらっと流して気分転換をしたり、クルマ好きの集まるイベントの主催にも挑戦したそうだ。そうしてたくさんの人との出会い、そしてたくさんの学びがあったと語ってくれた。
「最近、例のカフェに高校生が自転車で来店したことがあったんです。話をしてみると、クルマが好きでスポーツカーが集まるらしいという噂を聞きつけて来たということでした。免許取り立てでカフェに来た、当時の自分を思い出してしまいましてね(笑)。そういう人もクルマを楽しめるような場を、ちょっとずつ増やしていければな〜なんて」
そういったクルマ好きが集える場所は、同じ趣味を共有できるだけではなく、運転が上手い人、整備士などのクルマの構造に詳しい人などもいて、自分だけでは到底知り得なかったことも学べたからだという。共通点は“クルマが好き”ということで、何気ないことを気軽に話せる友達がいるというのは、自身の人生にとって大きな財産になっているそうだ。
また、クルマが好きという気持ちは、意外にも学校の授業に対する自分のモチベーションを上げてくれたという。例えば数学は大嫌いな科目なはずなのに、足まわりをいじる時に使うとなると、何となくいつもよりも授業に身が入ったのだと笑っていた。
見た目だけではなく、しっかりとメンテナンスを行なったうえで作り込んでから走りたいという考え方は昔から変わっていないし、これからもそれを実現させるために勉強していくと意気込んでいた。
「今後はこのクルマでドリフトをするという目標があるんです。だからこそ僕は2ℓでターボでマニュアルという個体を手に入れましたから。高校生の時にビデオに映っていた東北仕様のシルビアで、今度は自分がステアリングを握って走りたいんです」
そのためにはまず腕を磨くことからと、サーキットに通い始めたり友人とカート大会に参加したりと、これまでとはジャンルの違ったカーライフも満喫しているとのこと。
チューニングに関しても仲間に助けてもらいつつゆっくりと仕上げていくそうで、運転席にはバケットシートや4点式ベルトを装備し、リヤシートを取り払って2名乗車仕様への変更もおこなっているという。
「よくよく考えると、僕って高校生の頃からずっとシルビアについて考えているんですよ。それこそ、長い片思いからスタートしているわけだから、直ぐにどうこうしようとは焦らずに、じっくり楽しんでいきたいと思っています」
これからもイベントへの参加や、サーキットでのドリフト走行を楽しんでいきたいという目標を掲げている中で、その過程のひとつとして年1回開催されているイベント『WEKFEST』で、愛機のシルビアを展示したいという希望も持っているそうだ。
これからのシルビアは、kiyolerさんの思い描いた仕様へとアジャストさせながら、素敵な進化を遂げていくことであろう。
(文: 矢田部明子 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三角西港(浦島屋、旧三角簡易裁判所ほか)(熊本県宇城市三角町三角浦)
[GAZOO編集部]
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