風を切る心地良さと、愛する奥様との距離感。ホンダ S660を買って本当に、本当に良かった!
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ホンダ・S660
奥様とご結婚され、お子様を授かってからというもの、瞬く間に時が過ぎていったと話してくれた『sinS660』さん。ハイハイで後追いしていた我が子の成長の早さは、禅寺の筍が若竹に変化する勢いだったと、ここ数十年を懐かしそうに振り返っていた。
今年で結婚30年になったそうだが、ホンダ・S660(JW5型)を愛車に迎え入れたのは7年前で、子供達が手を離れた2018年のことだったという。
「子供達を育てられたのは、自分の人生にとってものすごく大きな財産となりました。そしてこれからは、嫁さんと2人の時間を大切にしていきたいと思ったんです」
そう考えていた時に、ドライブへ出かけた阿蘇で、sinS660さんの前をコペンに乗った老夫婦が颯爽と駆け抜けていったのだという。オープンにして、風でシャツと髪を緩やかになびかせながら、満面の笑みで話している姿があまりにも幸せそうだったので目で追っていると、奥様が「ああいうのって、良いよね」と呟いたのだそうだ。
その直後「『俺も同じことを思ってた!』と顔を見合わせ、オープンカーに乗ろうよ! しかも、2人しか乗れないやつね!! と、すぐに話がまとまりました(笑)」
この話の流れでいくと、次期愛車にはコペンを選びそうなものだが、S660にしたのはご夫婦揃ってホンダ車に思い入れがあったからとのこと。
奥様の場合は、F1とアイルトン・セナの大ファンで、ホンダ車が好きだったから。sinS660さんの場合は、シビックが自分にとって初めてのクルマで、そのクルマで走っていた時に奥様と出会ったので、ホンダ車は自分にとって“幸運を呼び寄せてくれるクルマ”というイメージがあるのだと、照れくさそうに教えてくれた。
子供の頃からクルマが大好きで、運転免許を取ったらスポーツカーに乗ると決めていたsinS660さん。次第にクルマについて深く知りたいと思い、“自動車科”がある高校へと進学する。卒業後はそこで学んだ知識を生かすべく、クルマ関連の量販店に就職し、昼間はお客様のクルマを、仕事終わりは自分のシビックをいじっていたそうだ。
貰ったお給料は、全てをパーツの購入に充ててカスタムを謳歌。その効果を試しに走りに行って、ああでもない…こうでもない…と、トライアンドエラーを繰り返していたと、当時を思い出して笑っていた。それが若さというやつで、間違えなく青春の1ページだったと、良い顔つきで教えて下さる。
こうして、昔から走りにこだわってきたからこそ、S660を選んだのだという。
ミッドシップのガソリンエンジン、さらにはオープンカーで、ハンドリング性能やボディ剛性がしっかりしていて、トルク重視のエンジン特性を持つなど、一癖ありそうな面白さがS660から垣間見えたのだとか。
実際に乗ってみると予想は的中で、低いアイポイント、後ろから聞こえるエンジン音、ラインを綺麗にトレースするようなコーナーリング性能など、スポーツカーに乗っているということを感じさせてくれたそうだ。
とどのつまり、いつもの交差点が数倍楽しくなる“何か”がそこにあったと大絶賛していた。そんなsinS660さん曰く、このクルマの1番の魅力は“オープンカーであること”なのだという。
お恥ずかしい話…と、照れくさそうな顔をしながら申告してくれたのは、納車前からYouTubeを見て、何度も幌の開け方を勉強していたことだそうだ。待ちに待った納車当日、福岡にあるショップから自宅のある熊本まで帰るわけだが、距離的にも時間的にも十分に余裕があるはずなのに、1秒でも速くオープンにしたい! 勿体無い! という気持ちが、最初のパーキングエリアに入らせたという。
「本来ならば、ショップで外したかったくらいなんですよ。だけど、それだとお店の人に、『この人、よっぽどオープンで走るのを楽しみにしていたんだな〜』と見透かされてしまいそうで、それが何となく恥ずかしくて我慢しちゃったんです(笑)」
きっとそういう人は多いはずだから、お店の人は特段気にしないだろうが…その気持ちは分からないでもない。ということで、焦らされてピットインしたパーキングで、予習した通していたとおりに3分もかからずに幌を外し、ボンネットにある収納スペースに幌を押し込んで、いざ本線へと合流したそうだ。
「上を見たら空…。この開放感とは何たるや! 状態ですよ(笑)。頭上をビュウビュウと流れる風や、幌を閉めた時よりもダイレクトに聞こえるエンジン音、アクセルを踏むと後ろから押されるような加速など、オープンにしただけなのに、体感は2倍になったくらいS660を強く感じられるんです。これが、楽しくて楽しくて」
夢にまで見たオープンに酔いしれながら高速を降りると、信号待ちでオートバイに乗ったおじ様に『このクルマカッコ良いね!』と声を掛けられたり、駐車場では小学生達が手を振ってくれるというサプライズもあったそうだ。
今までクルマに乗っていて声をかけられる経験などなかったので、納車して数時間で味わった非日常の連続に、逆に困惑してしまったくらいだと腕を組んだ。嬉しい、緊張、ワクワク、幸せなど、様々な感情が渦巻いていたという。
奥様がS660に乗ったのは、それから1週間後のこと。初めてのドライブ候補地として阿蘇か天草か悩んだそうだが、海岸沿いをオープンカーで走りたいという奥様の夢を叶えるべく、天草に決定したということだ。
その日は絶好のドライブ日和で、真っ赤なボディが太陽の光を反射してキラキラ輝いていた。助手席からの、「ねぇ、やっぱりS660にして良かったよね!」というひと言を聞いて、本当に買って良かったと再確認し、ハンドルを握る力が強くなったと、幸せそうに微笑んでいた。
また、助手席に奥様が座ることで、新たなる発見もあったという。2シーターに乗ったことがなかったため、正直なところ“狭いかな”と感じていた居住性は、肩が当たるか当たらないかの絶妙な距離感が、実はS660には正解だったのだと気付いたそうだ。
「オープンにすると、外の音がそれなりにするでしょう? でも、この距離感だとお互いの声はキチンと聞こえるし、相手の表情も見えるんです。利便性や快適性を優先するよりも、2人の空間を大切にした結果、きっとこの距離感だったんですよ。それが、大切な人を横に乗せて、やっと分かりました」
sinS660さんのお子様は、双子さんだったそうだ。可愛さも2倍だったが、育児の大変さも2倍で、毎日がアッという間に過ぎていったという。奥様と2人で協力しながら子育て出来たからこそ、乗り越えられたことも沢山あったと話してくれた。だからこそ、これからの人生は2人で目一杯楽しみたいという。
かつて恋人だったご夫婦が、『彼氏、彼女』だったあの頃へとタイムスリップ。再びドキドキするような素敵な時が、S660と共に流れ始めたのである。
そんな楽しい時間が始まってから7年。日常使いのみならず、週末は必ずどこかへドライブへと出かけるようなカーライフを送っていると、走行距離6000kmだったメーターは、いつの間にか10万kmを指していたそうだ。最近ではエンジンの振動が大きくなり、ゴム部品などが劣化しはじめて、細かなメンテナンスが必要になってきているそうだ。
メンテナンスを自分ですると、昔を思い出して腕が鳴り愛着も湧いていくそうだが、それと同時に『一体、あと何年乗れるんだろうか?』という不安にも襲われるそうだ。
「買い替えたら? と言われるかもしれませんが、そのつもりはまったくないんです。なぜなら、S660に乗るようになって、色々な人に出会えたからです。オフ会、SNSに写真をアップすると『S660に乗っている人ですよね〜』なんて声をかけて頂けて、プライベートがとても充実したんです。そのご縁を繋いでくれたのはS660だから、クルマだけどクルマと思っていないんですよ。僕にとっては、これからも人生の相棒なんです」
思えば、いつもクルマが生活の傍にいたという。青春時代、子育て期、これからは奥様との人生を楽しく過ごすため。
だからクルマはやめられない、S660は降りられないのだと、笑顔で走り去っていった。
(文: 矢田部明子 / 撮影:平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:三池炭鉱 万田坑(熊本県荒尾市原万田200-2)
[GAZOO編集部]
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