マニア垂涎のスカイラインGTS-Rを毎日普段使い。だから“トラブルも早期発見、早期治療ができます!”

  • GAZOO愛車取材会の会場である世界遺産の万田坑で取材した日産・スカイライン GTS-R (R31型)

    日産・スカイライン GTS-R (R31型)



スカイラインの歴史の中において、屈指の直線基調となるデザインを特徴としていたのが、『セブンス(7th)』の愛称で呼ばれる、7代目のスカイラインのR31型だ。今回紹介するオーナーである『kiramari』さんも、その独特のフォルムに魅了され、カーライフの相棒として所有するお方である。

「免許を取って初めてのクルマは、兄から譲り受けたセリカXX(A60型)。自分でお金を出して初めて買ったのは、スカイラインGTS(R32型)の4ドア、NAエンジン車でした。本当はR31が欲しかったんですけど、すでに生産が終了していました。当時はクルマの知識があまり無くて、中古車を買うことに不安があったので、やむなくの選択でした」

「その後、ちょっと落ち着いたクルマにしようと、2リッター5気筒エンジンのホンダ・ビガーに乗っていたんです。その頃に、3リッターの12系クラウンに乗っていた父親が『4リッターV8の130型クラウンが欲しい』と言い出したので、一緒に中古車店を訪ねることにしたんです。すると、そのお店には、憧れだったブラック2トーンのスカイラインGTS-X(R31型)が販売車両として並んでいたんです」

一度は購入を諦めていたはずのR31だったが、思わぬタイミングでの出会いに縁を感じたというkiramariさん。しかも、乗っていたビガーを好条件で下取りしてもらえるという話もスムーズに纏まり、なんと、その場で商談が成立。そんな経緯でR31型GTS-Xを手に入れることとなった。

70km/hを超えると自動でせり出すオートスポイラーや、純正のBBSホイールなど、理想のアイテムがフル装備されていたGTS-Xには大いに満足していた。それから数年後に結婚して子供も授かり、実用的な4ドア車に乗り換える必要に迫られ、泣く泣く売却。しかし、マニュアル車好きのkiramariさんはフツーの4ドアセダンで納得できるハズもなく、選んだクルマはアルファロメオ155であった。

「当時はDTM(ドイツツーリングカー選手権)全盛期で、ワイドフェンダーが付いた155のレーシングカーがカッコイイと思っていました。4ドア車という嫁さん側からの条件もクリアしているし(笑)。アルファにはスカイラインとはまた違った良さがあって、その後も156、147、GTVと4台を乗り継ぎました。ハイ、嫁さんもちょくちょく運転していました。彼女もマニュアル車が好きで、今もアルトワークスを買い物用に使っています」

こうして結婚を機にR31スカイラインとの生活に一度は終止符を打ったはずのkiramariだったが、それからしばらく月日が経過したある日。いつも通勤途中で見かける中古車販売店の前を通ると、濃紺のR31の姿が…。

「この頃、もう一度R31に乗りたいなと思っていた時期だったんです。最初はGTS-Rとは思わず、どうせ“GTS-R仕様”だろうと、冷やかし半分にお店に立ち寄ってみたところ、本物のGTS-Rでした。自分的にはGTS-Xでも良かったけど、純正でTO4タービンと等長タコ足が付いたRB20DET-Rエンジンの走りを一度試してみたいという気持ちもあったし、これもまた何かの縁だと思い、嫁さんを説得して購入を決めました」

「実はその4年ほど前に同じお店でスカイラインGT-R(BNR32)を見つけて、欲しい! と思ったことがありましたが、当時はエルグランドをメインのファミリーカーに使っていたため『維持費がかかり過ぎるからダメ!』って、嫁さんから一度却下されていました。でも、今度は排気量が2000ccだから良いかなって」

「ちなみにそのGT-Rに付けられていた価格は98万円でした。今の相場を考えると、買っておけば良かったなぁ、と(笑)。2015年に購入したGTS-Rの価格は車検代込みで120万円。修復歴アリのクルマだったけど、運転に支障の無い程度だし、見た目もキレイなので特に気にしていませんでした。お店の方も何かあったらと、試運転に十分な時間をかけて下さって、納車の一週間前にはパワーステアリングのホースが破裂したため、予定が少し遅れますという連絡も頂きました」

4台のアルファロメオを乗り継いだ後、ビートやコペンなどを経て、ほぼ30年ぶりにR31との生活が始まることとなったkiramariさん。しかも、今度の相手は同じR31とはいえ、限定生産台数800台という稀少な『GTS-R』。

“日頃はガレージ内に保管して、天気の良い週末にツーリングに出掛ける”といった、マイレージを抑えつつコンディションの維持と管理にウエイトを置いた使い方をされている…と思いきや、まさかの答えが返ってきた。

「毎日、通勤に使っていますね。もちろん季節を問わず、雨でも乗っています。だからあちこちヤレも出ているし、このサイトに載っている皆さんのクルマみたいにピカピカじゃないから申し訳なくて。例えば、エアコンのコンプレッサーを3回も交換しているほどですからね。機械系のパーツについては、ネットオークションの他、知り合いの日産のサービスフロントに相談しながら工面しています」

「今はご存知の通り、市場に流通している旧車用パーツは軒並み値上がりしていて大変ですね。そんな中でも頼りになるのが、様々な年式の車両や、パーツ数などR31に関する膨大なノウハウをお持ちである岐阜県の『R31HOUSE』さん。私もフロントバンパーやサイドストライプ、マフラーなど、同社の製品を多用しています。おそらく、世の中のR31オーナーの大半は、何らかの形でお世話になっているのではないでしょうか」

毎日乗り続けるということは、日々、愛車との楽しい時間を共にできるという美点がある反面、思いもよらぬ交通事故に遭う確率の増加も意味する。実際、kiramariさんも3年前にあわや全損かという事故を経験している。

「国道のバイパスを降りて、一般道へと合流するカーブを抜けた先のど真ん中にクルマが停まっていたんです。ハザードも点けず、ブレーキランプすら点灯しておらず、そのままドーンと追突。突っ込んだクルマの方に話を聞くと、道に迷っていたとのこと。相手は最近の対衝撃吸収構造を備えたクルマでバンパー周りがちょっとヘコんだ程度でしたが、私の方はフロントがぐっしゃり…せめて端に寄せるなり、ハザードを点灯させるなり、何らかの意思表示をしていてくれたら…」

「R31HOUSEさんで修理用のパーツを調べていたところ、程度の良いGTSの4ドアハードトップがあったので、一時はそっちに乗り換えようかとも思いました。けれど、いつも整備でお世話になっているショップの方が『せっかく一度エンジンオーバーホールをしているし、このまま廃車にするのはもったいない』と言って下さったので、修理をお願いして乗り続けることにしました」

こうして多少の紆余曲折はあったものの、現在も毎日、GTS-Rとのカーライフを満喫中のkiramariさん。今後、近い将来で大きなトピックとしては、経年劣化が目立ち始めたボディ外装を、思い切って全塗装しようかどうか? が視野に入ってきているという。しかしながら、そこには一つの問題が。

「このクルマが機械的な限界が来るまで私が面倒を見るので、せっかく塗り替えるなら、グループA時代に長谷見選手が乗っていたリーボックカラーにしたいなぁと。星野選手が乗っていたカルソニックカラーは結構見かけるので。でも、嫁さんと娘からは“そんな色にしたら、恥ずかしくて一緒に乗れない!”と大ブーイングを受けました。やっぱり街乗り用のクルマでレーシングカラーは派手過ぎますかネ?」

これから先もGTS-Rを大切に、かつ自分流に乗り続けたいという想いを持ちながら、奥様と2人のお嬢さんからの意見もしっかり重んじる、とても誠実なkiramariさんであった。果たして、その結論はいかに?

(文: 高橋陽介 / 撮影: 西野キヨシ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:三池炭鉱 万田坑(熊本県荒尾市原万田200-2)

[GAZOO編集部]

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