“乗ったら必ず洗車する”ルーティンを四半世紀続けてきた愛車アリストV300 TTEバージョン

  • GAZOO愛車取材会の会場である霞ヶ浦緑地公園で取材したトヨタ・アリストV300 TTEバージョン

    トヨタ・アリストV300 TTEバージョン



走りを楽しめる高級セダンとして1991年にデビューしたトヨタアリスト
その2代目モデルは、新開発されたプラットフォームを採用し、高級セダンとしての快適性を損なわずに走行性能や質感を高められた『新世代ハイパフォーマンスセダン』と銘打って1997 年に登場し、10th Anniversary Editionなどの期間限定モデルや、トムスが手掛けた『VA300 TOM'S G』といった少量生産のいわゆるコンプリートカーなどが販売されたことも特徴のひとつと言える。

なかでも、レーシングチームTTE(トヨタ・チーム・ヨーロッパ 現TGR-E)が、世界の一流パーツメーカーと共同開発したパーツを組み込んで作り上げた『V300 TTEバージョン』は180台限定で販売された特別仕様車。
そんなV300 TTEバージョンを新車で購入し、現在まで乗り続けているのが『CLE会長』さん。
独身時代から初代アリストを愛車として選び、足まわりなどのカスタマイズを楽しんでいらしたそうで「アリストの2代目が出た時に、乗り換えようと思ったりもしたんですが…」と、当時から“アリスト”というモデルに惚れ込んだクルマ好きであったようす。

2代目アリストに乗り換えずにいたのは、ご結婚など、クルマ以外にも時間が取られることが多くなっていたためで、2代目アリストが登場して2年が経過した2000年、CLE会長さんが29歳の時には、奥様がご懐妊されていたそうだ。
「その頃に、TTEバージョンが出たんですよ。もう私にとっては、このコンプリートカーが衝撃的で『どうしても欲しい!』となったんです」

とはいえ、必要となる予算は500万円オーバー。初めてのお子さんを授かる父親として、趣味のクルマにそんな大金を注ぎ込むのはなかなか難しい。
「出産予定日まで1ヵ月もない頃で、そんな時に奥さんに『新車に買い替えたい』なんていえないじゃないですか? 子供や家族のためのミニバンに買い換えるならまだしも、500万円超えのセダンなんて絶対に『ダメ』と言われるに決まっていますから、相談もできない。でも、限定なんです。いつも行っているディーラーで『あと1週間もするとオーダーできなくなるよ』って言われてしまって、オーダー締切りまでの日にちはどんどん迫ってくるし…結局ディーラーのセールスマンに『どうするんですか?』と決断を迫られて、注文書を書いちゃったんです」と、奥様から了承を得る前に契約してしまったそうだ。

もちろん、奥様に黙っているワケにもいかないので、その日の内に、奥様に事後報告として注文書を見せながら、購入の経緯を説明されたそうだが「当然、呆れられて。その後は1、2ヶ月ぐらい、ほとんど口をきいてくれませんでしたね」と、当時を振り返ってくれた。

そんな購入時の一悶着はあったものの、20世紀最後の年となる2000年、CLE会長さんは、TTEバージョンを手に入れると共に、めでたくご長女を授かる。まさしくTTEバージョンと共に育まれた娘さんは、昨年、ご結婚されたそうだ。

そんな娘さんにとってもTTEバージョンは思い出深いクルマであり、父とTTEバージョンは切っても切り離せないものだったに違いない。
『生まれた時からずっとお父さんが大切にしてきたクルマ』を、結婚式の生い立ちムービーに登場させたそうだ。CLE会長さんのTTEバージョンの可愛がり様を見て育てば、そのようになるのも頷ける。

CLE会長さんの可愛がり様を表すエピソードは数多いのだが、その中でも特にすごいのが洗車への情熱だろう。
「納車されてから、一度も欠かすことなくやっているルーティンがあるんです」

それが洗車だそうで『乗ったら必ず洗車する』というルーティンを、購入後から現在に至るまで、一度も欠かすことなく続けているというのだ。
「近所を5分10分乗っただけでも、必ず洗車してからガレージに入れてます(笑)」。しかも軽く拭くだけとか、そういうレベルではなく、いわゆるボディ部分だけではなくホイールハウス内や下回りも含んだCLE会長さん流の洗車フルコースを行うというのである。

  • (写真提供:ご本人さま)

「まず、全体をホースの水で流していくんです。ホイールハウス内を洗わないのは、お風呂に入った時に股間を洗わないようなもんですよ(笑)。砂埃やタールで、特に汚れる部分ですからね」
ホースの水で流した後は、シャンプーを使って全体を洗う。もちろんホイールハウス内も。そして各部をエアブローした後、セーム革を使って吹きあげていくそうだ。「シャンプー用のスポンジも、拭きあげ用のセームも、ボディ用と下回り用、ホイール用と使い分けています」というこだわりようである。
さらに、ここで洗車終了というワケではない。この後、室内に掃除機を掛けて、さらには拭き掃除まで行なうというのだ。

この行程を、TTEバージョンが納車された25年前から毎回欠かすことなく続けてらっしゃるというから、もはや脱帽という他ない。

とは言っても、例えば遠方のイベントなどに参加して、帰宅時間も遅くなったなんて時は、やらなかったりもしたんじゃないですか? という意地悪な質問をさせていただいたのだが、「洗車しなかったことはこれまで一度もないです」というお答えが返ってきた。

「洗車しておかないと、翌日、性格的に落ち込んじゃって、絶対に仕事に身が入らないと思うんです。人間だってお風呂に入らないまま仕事したら集中できないですよね? それと同じで、洗車しないままだったら、もう我慢できなくて仕事どころじゃなくなると思いますね(笑)」

週末には自宅にあるほかのクルマも全て洗車し、さらにはお風呂掃除までおこなっているというその手には、いくつもの絆創膏が。洗車によってできた“あかぎれ”が、次の週末までに治ってはまたできて…という状態を繰り返しているのだという。

旅行などで宿泊する時はどうするのかと尋ねると「クラブのみんなで泊まりで行った時は、泊まった旅館で洗車しましたね。駐車する時に、水道がある場所を確認して、その近くに停めておいて『洗車したいので、あの水道、お借りしても良いですか?』みたいな感じで、旅館の人に許可をもらって(笑)」
もちろん洗車用具は持参していったそうだ。

ちなみに今回の取材時は、生憎の雨だったのだが、撮影前には、持参した洗車用具を使って、見学しに同行してくれていたクラブの仲間と共に、しっかりと洗車をしてくださった。

そんなクラブのお仲間も、CLE会長さんとTTEバージョンの話をする上で欠かせないものとなる。CLE会長さんは『CLUB L-EURO』というアリストの愛好家が集うカークラブの会長を務める。

「ネットが普及する前は、クルマ仲間と言えば、近所の友達や先輩後輩までだったじゃないですか? そんな狭い世界だと、なかなか同じ価値観の人と巡り会えなかったですよね? でもネットで繋がれるようになって『自分と同じ感覚を持った人が世の中に居る』ってわかって、そんな仲間たちとアリストのクラブを作ったんです」

「やっぱり仲間。仲間の存在無くして、クルマって楽しめないと思うんです」
そんな同じ感覚を持つ仲間が居るということは、クルマに限らず、趣味の世界では重要ということを多くの人はご存じであろう。

同じクルマを所有し、同じ感覚を持つ仲間との交流を大事にしながら、TTEバージョンに乗り続けるCLE会長さんに「洗車ができなくなった時が、TTEバージョンを降りる時ですか?」という、意地悪な質問を最後にぶつけてみた。

「それはどうかな? このクルマはずっと持っていようと思ってます。もうここまできたら手放せないですよ。クルマ人生は多分、あと20年ぐらいだと思いますが、できる限り乗っていきますよ。ルーティンの洗車も、できる限りずっとやりながらね」

20年後も、ピカピカの愛車に乗るCLE会長さんと、世界で一番大切にされているアリストV300 TTEバージョンの微笑ましい光景が目に浮かぶようだ。

(文: 坪内英樹 / 撮影: 土屋勇人)

※許可を得て取材を行っています
取材場所: 霞ヶ浦緑地(三重県四日市市大字羽津甲)

[GAZOO編集部]

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