ロードスターと共に歩んだ11年。深まった愛車への絆と、その魅力を受け継いでいく想い

  • GAZOO愛車取材会の会場である島根大学 松江キャンパスで取材したユーノス・ロードスター(NA8C型)

    ユーノス・ロードスター(NA8C型)


仕事が忙しくなりすぎ、息抜きを兼ねた気分転換として新しいクルマを買おうと思ったことがキッカケで、ロードスターに出会ったという『Masa』さん。

「もともとはロードスターを買おうって考えていたわけじゃないんです。ただ、近くの中古車屋さんでこのロードスターが売りに出ていて、衝動的に買ってしまったというのが始まりです。だから、当初は思い入れとかは特にありませんでした。ただ、乗っているうちに運転する楽しさに気付かせてくれたり、オープンエアの気持ち良さやソフトトップ/ハードトップの載せ替えでトランスフォームできる楽しさなど、徐々にその魅力に惹かれていった感じです」

こうして、2014年に手に入れた1994年式のユーノスロードスター(NA8C型)と、10年以上の時間を共にしてきた。

現在は4代目となるND型へとモデルチェンジが行われ、より現代的なライトウエイトスポーツカーへと進化したロードスター。しかし、初代となるNA型は独特のハンドリングと絶妙なアナログ感が楽しめるとあって、現在でも熱心なファンによって多くの個体が現役で走り続けている。

「ちなみに、自分はこのクルマにとって2人目のオーナーになるのですが、前オーナーさんは新車から大事に乗っておられて、売却時には既に天国へと旅立たれていたんです。けれど、遺族の方は大切にしていたクルマだと知っていたから、同様に大切にしてくれる人に乗ってもらいたいと言っていたらしいんです。そんな話を聞いたこともあり、衝動買いではあったのですが、ちゃんと受け継いで大切に乗ろうと考えるようになりました」

購入時の走行距離は15万km程度。ひと昔前で考えれば“過走行”と呼ばれてしまいそうな数字だが、エンジンのコンディションは良好だったという。
ちなみに現在オドメーターは21万kmまでに達していて、この間にはミッションのオーバーホールやエアコンの刷新、サスペンションのリフレッシュなどを行っているものの、エンジンのオーバーホールは未着手。それでもトラブルの予兆は見られず、走行距離を感じさせない走りを楽しませてくれている。

前オーナー時代はコニのダンパーで固められていたという足まわりは、2年ほど前に純正部品に交換。以前と比べるとフワフワ感が出てしまっているが、これもNAロードスターならではの味だという。

「社外パーツは今後も買うことができると思うんですが、純正パーツは新品が買える間しか味わうことができないですよね。ですからフィーリングが一番わかるサスペンションには純正部品を使ってみようと思ったんです。同様にホイールも社外品や純正品など、いろいろ集めてしまっています。中でも、純正オプションで設定されていたワイヤーホイールは、結構レアなアイテムじゃないですかね。ただ、ホイール自体の剛性感が今ひとつなので、使って楽しむというよりもコレクションのひとつになっていますけれど」

購入時には装着されていなかった純正フォグランプは、ネットオークションを駆使して手に入れたという。白熱球を思わせる独特のデザインは、NAロードスターの顔つきに自然と溶け込み、社外品のフォグランプでは再現できないノスタルジックな印象を作り上げている。こういった純正パーツを手に入れるため、パーツリストと整備マニュアルを揃えるのはMasaさんにとっての基本。古いクルマになればなるほど、資料は重要になるというわけだ。

幌とハードトップ、オープンとスタイルの違いを楽しめるのもロードスターの魅力。そのため、オープン時に幌を収納するトノカバーを裁縫でDIYメイクしているのだとか。

「やっぱりロードスターはオープンの姿が基本なので、スタイリングをキレイに見せるトノカバーは欲しかったんです。けれど、花粉症のためにハードトップが欠かせないのは、自分の体質を恨んでしまいますよね」

「乗り始めていろいろ気付かされることがあるのはもちろん、ロードスターの愛好家さん達と接することで、さらに特別なクルマだという感覚が深まっています。特にこのクルマは前オーナーの時代の『広島52』という、当時のナンバープレートを受け継いでいるので、このナンバーと合わせた個体の価値はみなさんに貴重だと言われます。実家にあった2桁ナンバーのV8エンジンのクラウンも容赦なく手放してしまったくらいですから、自分としてはナンバーにはこだわりは無かったのですが…」

大切に乗り続けるとは言っても、大事に飾っておくのはMasaさんの趣向とは異なる。そのため保管は前オーナーと同様に屋根付きで行いながら、普段の通勤や休日のドライブなどフル活用している。
ボディに関しても、特にトランクやリヤデッキは塗装がヤレてきているが、それもこのロードスターが歩んできた歴史の証として、補修ペイントなどは行わず、時間の流れそのままの状態を維持している。

時間の流れそのままを維持しているとはいっても、ヤレを放置しっぱなしというわけではない。特にこの時代のクルマのダッシュボードは紫外線の影響で割れが発生することが多いため、コンディションをキープする目的を兼ね、社外品のダッシュカバーを組み合わせている。
このダッシュカバーも製品をそのまま付けるのではなく、表面にファブリックを貼ってM2風にアレンジ。ドアトリムも3台分所有しているため、気分次第でインテリアのアレンジも楽しめるそうだ。

インテリアはナルディのウッドステアリングやシフトノブ、サイドブレーキノブなどを装着。オーソドックスな組み合わせながらも、ロードスターに鉄板のコーデは、さまざまなインテリアのアレンジを試してきたMasaさんが導き出した最適解というわけだ。

シートカバーは海外のメーカーにオーダーして製作したアイテム。このカラーリングの他にホワイトのカバーも保有しているとのことで、気分に応じてインテリアのイメージを変更することができるという。
また、センターコンソールにはロードスターとしては異例の8インチナビゲーションをセット。もともと2.5DINの設計であるため、パネルを加工して取り付けているそうだ。

「よく新しいモデルに切り替わると、最新のモデルが最良って言われるじゃないですか。でもロードスターの場合はNA、NB、NC、NDとそれぞれに異なる魅力があるので、同一線上で比較できないと思うんです。移動手段としてや、今時のスポーツ感を体感したいならND型が最良なのかもしれませんが、自分が求めたライトウエイトスポーツはやっぱりNA型なんです。11年乗り続けて改めてその良さを知って、さらに乗るごとに愛情が深まっていますからね」

そして、こういった歴代ロードスターに乗る熱心なオーナーさんの期待に応えるように、マツダも様々なパーツを復刻リリースする活動を行っており、だからこそ時代を超えてさらに多くのファンに愛されるクルマとして、ロードスターは走り続けていくのだろう。

「免許を持っている間は乗り続けて、次の世代に受け継いでいければ良いな」
そんなMasaさんの思いは、今はなきファーストオーナーの想いにも通じているのかもしれない。

(文: 渡辺大輔 / 撮影: 稲田浩章)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:島根大学 松江キャンパス(島根県松江市西川津町1060)

[GAZOO編集部]