ついに出会えた憧れのZと新たな環境を愛車と一緒に切り拓く
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日産・フェアレディZ(Z33型)
高校生の頃、アニメ『頭文字D』を観たことをキッカケに、スポーツカーに興味を持つようになったという『hottino』さん。さらに、その後に読んだ『湾岸ミッドナイト』でフェアレディZのカッコ良さに魅了され「いつかは自分もZのオーナーになりたい」と夢を抱くようになっていったそうだ。
「学生時代を過ごした広島では、タント、ミラジーノと軽自動車を2台乗り継ぎました。卒業後は地元の鹿児島に戻る予定だったので『鹿児島のどこかの中古車店で、イイ感じのZと出会えたらなァ』と思いながら、なんとなくインターネットや中古車雑誌でZを探すようになりました。Zと言えば、やっぱりS30型が王道かもしれないけど、毎日乗るには旧車はいろいろと大変そうだし、僕は歴代Zの中でZ33型のスタイルが好きなので、自然とZ33に絞って探していました」
この時はまだ『そのうち、縁があったら』という程度の気持ちだったが、運命の出会いは予期せぬタイミングで訪れるもの。
翌春に卒業を控えていた年末、中古車雑誌で条件にピッタリのフェアレディZ(Z33型)を鹿児島で発見! 気持ちとしてはすぐにでも見に行きたいと思ったものの、まずは正式に就職が決まってからと一旦立ち止まり、はやる心を落ち着けたとのことだ。
「鹿児島での就職が決まるまでの間『どうか売れずに残っていてくれ!』とひたすら祈っていたところ、3月になってもまだ在庫として掲載されていました。本来ならば喜ぶべきですが、いざその時が来ると、ホントに勢いだけで買って良いのか? と、ちょっとビビってしまい、しばらく悩みました」
「でも、販売店の方もそれなりに年式が古い(2006年式)クルマだからと、維持していく上でのリスクについて詳しく説明してくれました。念のため家族にも相談したところ、母親は私の稼ぎで維持できるか心配していましたが、父親からは『カッコイイじゃん!』と背中を押してもらえたので、最終的には自分が後悔しないようにと腹をくくって購入を決断しました」
こうして、憧れのフェアレディZのオーナーとしての第一歩を踏み出したhottinoさん。
排気量660ccの軽自動車から、いきなり3500cc・280psというハイパワースポーツカーへの乗り換えということもあって、アクセルをひと踏みした時の感覚の違いにビックリ。中古車店でキーを受け取ってからの帰り道は、緊張の連続だったという。
「お店を出たあと高速道路に入り、本線に合流するために軽くアクセルを踏んだつもりがグァーッ! て加速して。他にもタイヤが太いからハンドルが重かったりと、当たり前ながら軽自動車との違いに驚きました」
このように、当初はZを手に入れた喜びで頭がいっぱいとなっていたそうだが、次第にボンネットの色褪せや前後バンパーのキズ、ルーフの小さな凹みなど、気になる部分が目につき始めるようになる。さらに機関系についても次々と問題が判明することに…。
「とはいえ、最初のオーナーさんがとても大事にしていたクルマだったようで、新車時から記録簿やパーツの交換履歴も残されていたし、2番目のオーナーさんもノーマルを維持されていました。だから問題部分が見つかったことについても走行距離や年式を考えれば『まぁ、こんなもんだろう』と、あまり深く悩まず、逆に3人目のオーナーとして僕がキレイにして乗ってあげようと、しっかり時間をかけて“初期化”することにしました。その際は、購入店のYRCさんや、鹿屋市の西牧自動車さんには本当にお世話になりました」
数ヶ月をかけてボディやエンジン整備などの初期化作業を終え、改めて対面したZ33は見違えるような姿に。
変色していたヘッドライトはレンズを研磨したうえでクリア塗装を施したことで、Z33の特徴でもあるキリッと引き締まった鋭い目ヂカラが復活。剥がされていたリヤゲートの『FAIRLADY』のエンブレムも、工場側の心遣いによって部品取り車から移植。アルファベットが一文字ずつ分割されているため均等間隔での貼り付けには苦労したようだが、塗り直されたバンパーとも相まってリヤ周りの印象も一新されたという。
「Zを駐車場に停めた後に、何度か振り返って見直す変なクセがつきました。『う〜ん、俺のクルマ、やっぱカッコイイな』と(笑)。フロントの雰囲気も好きだけど、一番のお気に入りは斜め後ろからの見た目ですかね」
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(写真提供:ご本人さま)
「僕はドライブ旅行が好きなので、九州各地や四国にも行きました。排気量が大きいので長距離でも疲れないし、高速巡行なら燃費も意外と良いんですよ。四国は徳島の阿波踊りを見るのが目的でしたが、せっかくなら一周まわってしまえ! と、4日間で全県を走破しました。今後行ってみたい場所は長野県。だいぶ遠いけど、ビーナスラインを走ってみたいですね」
そうして購入から3年が過ぎ、当初はただただ驚くばかりだったV6エンジンの性能特性にもすっかり慣れ、仕事からプライベートまでZとの時間を満喫していたhottinoさん。そんな中、生活環境における大きな変化が訪れる。
「2025年の今年度から、島根大学に着任することになったんです。自分がやりたかった研究分野についての人員募集があったのでチャレンジしたところ、無事採用になりました。これまで島根県には特に縁は無かったけど、とても住みやすい場所ですね。偶然にも私の隣の研究室の先生もユーノス100とファミリア・アスティナを所有するクルマ好きで、よくクルマの話で盛り上がっています。誰も知り合いがいない中で『Zに乗ってるの?』と、声をかけていただけて嬉しかったですね。今回の取材会に関する情報も、実はその先生から教えてもらったんですよ!」
鹿児島からの引越し時には、Zのタイトな車内に荷物を満載して来たというhottinoさん。今年のゴールデンウィークには鹿児島から両親が島根を訪れ、出雲大社をはじめとする観光スポットを案内することになったが、Zは2シーターのため移動の手段は公共機関を使用するなど、初めてピンチとなる場面にも遭遇。
「母からは“大きなクルマなのにどうして2人しか乗れないの?”とブツブツ言われましたが、そんな機会は年に一度あるかないかだろうし、どうしても複数が乗れるクルマが必要になったら、幸い家の近くにレンタカー屋さんがあるので、そこで借りれば良いだけの話なので、僕は短所だとは思っていません」
「税金だって安くないけど、そんなちょっとしたモヤモヤは忘れてしまうほど、乗るたびに満足度を実感しています。万が一、Zが壊れた時に乗り換えるクルマは? と考えても、ちょっと思い浮かばないですよね。おそらく僕にとって最初で最後のスポーツカーだと思っているので、これからも大切に乗り続けます」
そんなhottinoさんの情熱もあってか、クリーンな状態に保たれたシルバーのZはとても精悍であった。
良いオーナーと巡り会えたクルマには、例えフルオリジナルの状態であっても、言葉だけでは言い表すことができない独特のオーラが宿っているものだ。
(文: 高橋陽介 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:島根大学 松江キャンパス(島根県松江市西川津町1060)
[GAZOO編集部]
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