子どもの頃からの夢を叶え、所有し続けることを誓った “4人乗り”フェアレディZ
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日産・フェアレディZ(GCZ32型)
『日本を代表するスポーツカー』の代名詞とも言える日産・フェアレディZ。1969年に初代となるS30型がデビューを果たし、4代目から5代目に移行する際には一時生産が途絶えたこともあったが、2025年現在は7代目へと歴史が紡がれている。
そんな歴代Zと言えば“ロングノーズ・ショートデッキ”の3ドアハッチバッククーペスタイルを思い浮かべる人がほとんではなかろうか。というのも1〜3代目、そして5〜7代目の6モデルがロングノーズ・ショートデッキの、いわゆる“Zらしい”スタイルを採用しているからだ。
その流れの中で唯一異彩を放つのが4代目となるZ32型。キャビンフォワードのデザインを採用しつつも、Zのアイデンティティをしっかり表現したスタイルは、デビュー当時から大きな話題となった。
そんな4代目フェアレディZの2by2(GCZ32型)を、ちょうど1年前に手に入れたのが『ヒカル』さんだ。
「トミカのミニカーで遊ぶクルマ好きの子供でしたね。持っているミニカーの中でも、特にお気に入りだったのがZ32のフェアレディZだったんです」と、子供の頃からZ32がお気に入りだったそうだ。
Z32のミニカーのどこが気に入っていたのかを伺うと「形ですね。小さい頃はただただその形を気に入っていたんです」。当時のヒカルさんは、Z32をはじめとする低くなだらかな曲線で構成されるスタイリングのスポーツカータイプのミニカーがお気に入りだったという。
幼少期からZ32に憧れを抱いていたヒカルさん。いつかはスポーツカーを手にしたいという夢を胸に、交際当時から奥様に「スポーツカーに乗りたい」と話していたという。とはいえ、クルマに興味のなかった奥様の反応は渋いもの。
しかし、そんな状況だからと諦めるほどヒカルさんのスポーツカーへの思いは弱くはなく、根気よく、交渉していったそうだ。そんなスポーツカーへの思いが、しっかりと奥様に伝わったのであろう。条件付きながら、スポーツカーを所有することを承諾してくれたのだ。
その条件というのが、『4人乗れて、燃費も良い』というもの。「彼女が思い浮かべていたスポーツカーって、恐らくはプリウスとかアクアだったんだと思います」
クルマ好きからすれば、プリウスやアクアはスポーツカーとは思わないが、ミニバンが多数を占める現在だと、クルマに興味の無い方にしてみれば、ミニバンよりも背が低いクルマたちもスポーツカーと分類されていたのであろう。
ヒカルさんは、4人乗りという条件で、当時狙いを付けていたフェアレディZ(Z32型)や、MR-2(SW20型)も諦めるしかないか…と、半ば諦めていたそうだ。しかし、Z32の中古車を調べている時に、あることに気がつく。「Z32には2by2という4人乗りモデルがあったんですよ」
50歳代より上の世代であれば、フェアレディZに2by2があるというのは、ある意味一般常識的な知識。しかし2by2が設定されたのは、4代目のZ32までで、それ以降のフェアレディZは2シーター専用車となる。まだ30歳代のヒカルさんにしてみれば“フェアレディZ=2人乗りだからZ32も当然2人乗り”との認識だったのかもしれない。
ちなみに、4シーター仕様の『2by2』は、2シーターと比較するとスタイリングに大きな違いがあり、3代目までは圧倒的に2シーターの人気が高かったものの、4代目はその秀逸なデザインによって、2シーターと2by2の見た目の違いを極力排したことで、利便性で上回る2by2の人気が高かったことも特徴のひとつと言えるだろう。
というわけで、Z32ならば4人乗りという条件をクリアできると、本格的に2by2に絞ってクルマを探し始めると、ヒカルさんのお目に叶うZ32を見つけたそうだ。
「嫁さんにフェアレディZと言ってもどんなクルマなのかイメージがつかないと思ったので、まずは現車を見せようと、2人でクルマを見にいったんです」
4人乗れると言っても、あくまでも2by2のシートは補助的なもの。奥様がそれを見て納得しなければ、Z32を所有するという夢の実現はまた遠ざかってしまう。
そんなリスクを背負いつつ、奥様と共にZ32を見にいったのだが、実車を見た奥様の反応は意外なものだった。「Z32を見て『可愛いっ!』と気に入ってくれたんです」
奥様が気に入ってくれただけではなく、クルマの状態も非常に良かったこともあり、ヒカルさんはそのZ32の購入を決断したという。
2by2で4人乗りをクリアできたとはいえ、もうひとつの条件である『燃費がいい』の方がクリアできていないのでは? と読者の多くがモヤモヤされているかもしれないので、その点をヒカルさんに伺ったのだが「燃費は乗ってからじゃないとわからないので(笑)」と、その場では燃費の話は伏せておいたとのことであった。
晴れて現在の愛車となったZ32は、1993年式の中期型となるモデル。もちろん2by2で、Tバールーフ付き。購入時の走行距離はなんと3万3000kmという低走行距離車だった。エンジンについては、クルマ探しの段階で「燃費を考えるとNAの方が良いだろうし、動画サイトで聴き比べした排気音もNAの方が好みだったんです。でも手に入れた後で『やっぱりツインターボにしておけば良かった』と後悔するのも嫌だったので」という理由でツインターボを選んだそうだ。
低走行距離車とは言え、30年以上も前のクルマなだけに、トラブルが発生しても不思議ではない。そんなトラブルの洗礼を、まさに納車の瞬間に味わったそうだ。
「クルマを引き取りにお店に行って、まさに自宅に向けて動き出そうと乗り込んだ直後に、エンストしたんです。その後、エンジンを再始動させようとするもエンジンは掛からず。その場では、原因不明のまま納車が延期となったんです。エンジンが掛からなかったのは、パワートランジスタという電装系の部品が原因でした。Z32ではよくあるトラブルらしいですね」
そんなトラブルからの門出となったが「そういうのも年式的に仕方がないですよ」と、旧車乗りにある程度必要な寛大さもお持ちのようである。
Z32との愛車生活だが、元々のクルマの程度は、年式を考えればすこぶる良い状態であった。驚くべきは、ボディカラーのレッドで、なんと部分補修以外は工場出荷時のペイントのままだという。レッドと言えば色褪せが激しいイメージを持つ人も多いと思うが、未だ美しい艶を有しているのだ。
「前のオーナーが、きっと大事にしてくれていたんだと思います。購入時から、年式を考えればとても良い状態でした」というヒカルさん。
そんなヒカルさんのお仕事は、塗装面の状態と日々奮闘する“ボディコーティング”で、そんなプロの目からみても『良い状態だった』という塗装面をご自身の手でさらに磨き上げ、コーティングを施したのが現在の状態となる。
コンディションが良いとは言え、もちろん経年劣化が無いワケではない。
「純正のリヤスポイラーは経年劣化してしまっていたので、できるだけ近い形状の社外品を探して交換しました。あとルーフの黒いモールも色褪せしていたので、塗装しています」というように、部分的に少しずつ補修を進めているそうだ。
ちなみに、ヒカルさんはミニカーコレクターでもあり「そんな本格的ではないんですが、ミニカーが好きなので、自宅には集めたミニカーを飾っているんです」とのこと。
「Z32はずっと乗りたいというか、ずっと所有したいと思っているんですよ」というヒカルさん。“ずっと所有”というのは、色々な事情で乗り続けるのが難しくなっても、自宅で保存しておきたいということだそうだ。
以前からその傾向は強かったようだが、Z32を所有してからはフェアレディZのミニカーや模型のコレクションも増えているそうで「いずれ、そんなミニカーと一緒にこのZ32を飾れたらいいなぁと思っているんです」とのこと。いつの日か“実物大のミニカー”としてZ32がヒカルさん宅に飾られる日が来るのかもしれない。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:徳島中央公園 (徳島県徳島市徳島町城内1-番外)
[GAZOO編集部]
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