若き日の憧れを諦めずに追い続け、その先にあった『S2000』と家族で彩る新たなストーリー
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ホンダ・S2000(AP1型)
『純粋に走りを楽しめるスポーツカーをいつか手に入れてみたい』
そう考えているクルマ好きは多いものの、実際にはその望みを叶えられる人ばかりではない。
特にネオクラシック世代のFRスポーツなどは、昨今の価格上昇によって手を出しにくい状況が続き、なおかつ経年による故障やトラブル、そしてパーツの供給状況など、ある程度の覚悟を決めて乗りださなければならない。そもそも中古車市場でも選択肢が限られてきているだけに、理想の一台を手に入れることは難しくなっている。
そんな現代において、ピュアFRスポーツとして名高い2002年式ホンダ・S2000(AP1型)と巡り会い、手に入れることができたのが『コウスケ』さんだ。
低く薄いボディにオープン2シーターのパッケージを採用するS2000は、1999年に本田技研工業の創立50周年を記念して企画されたピュアスポーツカー。エンジンをフロントミッドシップに搭載するなどして運動性能を高めたことで、多くのスポーツカー好きから愛されるモデルとなった。当然、昨今のスポーツカー高騰の憂き目にあい、今ではコンディションによっては新車価格を優に超えるプライスが掲げられていることも珍しくないのだ。
そんなS2000を1年半ほど前に手に入れたというコウスケさん。気がついたらS2000の中古車市場価格はうなぎのぼりに上昇し、もはや手に入れることは不可能と考えていた矢先のことだったという。
「S2000は運転免許を取った頃にデビューして、ずっと憧れていたクルマだったんです。でも当時はお金がなくて乗ることができず、そのうちドリフトに興味を持っていたのでシルビア(S14/S15型)やマークⅡ(JZX100型)といった車種を乗り継いでいたんですよ。あの頃はこの辺りのクルマでもリーズナブルに手に入れることができたので、今の価格を見るとびっくりしちゃいますね。それからしばらくは落ち着いたクルマに乗り換えていたんですが、ちょうどこのS2000が下取り車として入ってきたんです。前のオーナーさんの時には、修理なども受けていたので状態も分かっていたし、現実的な価格で買えると分かったので今しかないと考えて購入を決めました」
ちなみに、コウスケさんは車両販売から修理・カスタマイズまで、クルマのことなら幅広く対応してくれる『ハートアップワールド米子店』にお勤めで、職業柄こうしたクルマに出会えるチャンスが一般の人よりも多いのは幸運だったといえる。
とはいえ「クルマ屋さんだからといって、気に入ってすぐに購入できるわけではないんですよね。というのも、やっぱり家族がいる身なので、妻の許可が得られるかは大きなハードルでした。最初の頃はバイクと同じだからと説き伏せたんですが、不要と言われてしまって…。それでも諦められず、家にいる間はずっとS2000が欲しいとつぶやき続けて、半年がかりでようやくOKをもらえました」といった苦労や努力も重ねた結果、ようやく夢を叶えることができたようだ。
若い頃からハイパワーなターボ車を乗り継いでいたものの、やはりS2000のF20Cエンジンは格別だというコウスケさん。
「5500rpmあたりでVTECが切り替わる瞬間は、何とも言えない刺激が脳を直撃するんですよ。NAなのにターボのような加速と甲高いエキゾースト音。さらに9000rpmまでしっかりとパワーが乗る。この気持ち良さはS2000に勝るクルマはないんじゃないですかね」
ホイールに関しては、真っ先に自分好みのアイテムへと交換。このS2000ではドリフトなど車体にストレスがかかる競技は行わないようにするという自戒の念も込めて、あえてインチアップでスタイリッシュな方向性を目指しているという。
一方、前オーナーがノーマルで大切に乗り続けていたことを示すように現在はノーマルマフラーを装着しているが、VTECのサウンドをもっと楽しめるように、今後はマフラーの交換も考えているのだとか。
この年代のクルマの泣き所と言えばヘッドライトの黄ばみだが、その点は新品交換や磨き処理によってリフレッシュを行っている。目元がクッキリと輝いているだけで経年を感じさせない姿になり、長く乗り続けていくためのモチベーションアップにもつながるというものだ。
足まわりに関してはオーリンズ製に交換し、日常からワインディングまでS2000らしい走りが楽しめるようにセットアップ。エアロパーツなどは装着せずに、車高のダウンとホイールのインチアップで、流行に左右されないシックな印象を作り上げている。
ステアリングは前オーナーが使用していたMOMO製をそのまま利用している。コウスケさん自身が20年愛用しているMOMOもストックしているが、こちらは表面のレザーがボロボロになってしまっているため、家に飾ってあるのだとか。
運転免許を取得して以来、ずっとMTに乗り続けてきたため、このS2000もMTだったことが購入に踏み切った大きな理由のひとつでもあるという。
「ちょっと落ち着いたクルマをと考えて選んだBMW 318isもMTが条件で購入しましたし、その後に通勤用として購入したハスラーやミニキャブもMTでした。やっぱり操っている感覚がないと、クルマに乗っている感じがしないんですよ」
シートは2脚とも純正のレーザーシートがそのまま装着されている。しかし、表皮の劣化などが気になってしまうため、今後はバケットシートに交換し、純正シートは家で保管しておく予定だとか。
ひと昔前なら外した純正パーツは捨てていたというが、しっかりと残しておくことはネオクラ世代との付き合い方というわけだ。
「本当なら妻と一緒にこのS2000で出掛けたいんですが、妻はクルマにまったく興味がなく、オープンカーは恥ずかしいと言われちゃって…。だから、出掛ける際は息子のサクと2人がほとんどです。サクはS2000でのドライブを喜んでくれているので、家族のためのクルマとしても十分に役割を果たしてくれています。将来的にサクがこのままS2000に興味を持ってくれればいいなとは思っていますね」
助手席は現在5歳のサク君の指定席となっているため、ジュニアシートが置かれている。今後の成長に合わせて運転席とともにバケットシートに交換し、スポーツカーの楽しみ方やカスタマイズの魅力などを伝えていこうとも考えているそうだ。
「昔いっしょにクルマ遊びをしていた仲間も家族ができて、ファミリーカーに変わっていっちゃいました。けれど、自分は乗りたいクルマに乗ろうと決めていたので、S2000が手に入ったことでその思いもさらに強まりましたよ。自分で直したこともあるクルマだし、前オーナーさんのメンテナンスが行き届いていたこともあり、現在のところ不具合はまったくありません。この先は何が起きるかわかりませんが、このまま元気な状態で乗り続けていこうと思います」
若い頃に手に入れたいという思いを叶えられなかった夢のクルマ。そして大切な家族を手に入れたコウスケさん。この贅沢なカーライフは、諦めることなく願い続けたことで実現させることができた結果と言えるだろう。
それだけに、次の目標でもある『奥さんと2人でのドライブ』も、諦めることなく願い続けて、いつか実現させてほしいと願うのであった。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:米子駅前だんだん広場(鳥取県米子市弥生町2-20)
[GAZOO編集部]
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