MT車好き夫婦が選んだファミリーカーは“至宝のスポーツセダン”WRX STI

  • 宮城県石巻市のオシカーズのミーティングで取材したスバル・WRX STI

    スバル・WRX STI



鮮やかなブルーのスバルWRX STIに生後8ヶ月のお子さんを乗せ、颯爽と『オシカーズ鮎川自動車大博覧会』にエントリーした、根っからのクルマ好きでMT車を心より愛するご夫妻。ふたりは共通の趣味であるオートバイを通して知り合い、以降はクルマにも遊びの輪を大きく広げていったという。

元を辿れば熱烈なMT派だったのは奥さんの方で、当時の愛車はリフトアップしたJA11型ジムニー。週末のレジャーだけではなく、毎日の通勤に使うほどの溺愛ぶりで、圧倒的な走破性やコンパクトなボディも気に入っていたと振り返る。結婚してからも手頃な大きさの4WDを欲する趣味嗜好はまったく変わらず、次なる相棒に選んだのは現行モデルであるJB74型ジムニーシエラだったという。

しばらくは快適性が上がった新たな相棒とカーライフを楽しんでいたが、次第に『家族が増えた時、どんなクルマがベストか』を考えるようになる。走りなど、クルマとしての面白さを一時的に封印し、ミニバンに乗り換えるという選択肢もあったというが、ふたりが下した決断は『ミニバンだけがファミリーカーじゃない!』であった。

確かに開口部の大きいスライドドアや積載量など、ミニバンならではのアドバンテージは存在する。走りだって決して無味乾燥としているワケではないはずだ。それでも刺激のあるクルマやバイクを乗り継いできたふたりには、不満とまでは言わなくとも積極的に食指が動かなかったのだ。

最終的にファミリーカーとして迎え入れたのが、2015年式のスバルWRX・STIタイプS(アプライドA)だった。

「コレを選んだ理由はいくつかあります。比較する対象が3ドアのジムニーシエラなので当然だけど、4ドアならではの実用性は圧倒的ですね。室内のスペースもミニバンにこそ及びませんが、5人が当たり前に乗車できて積載量もそこそこ。トランクスルーも思っていた以上に便利でした。クルマ以外の趣味として釣りやスキーも楽しんでいるんですが、それらの道具もルーフボックスを使わず車内に収納できますからね」

ルーフが低いスポーツセダンという見た目の印象に反し、リヤの居住空間がかなり広いのも決め手となった。後述するチャイルドシートの取り付けはスムーズにできるし、子供が成長してからも窮屈な思いをさせずに済む。後にセカンドカーとしてスズキ・ハスラーを購入したとのことだが、近場での買い物などはともかく、長距離を走る時はいつもWRXが出動する。動力性能・快適性・経済性・利便性といった多くの項目を過不足なく満たす、スポーツセダンの完成形に近い名車だと考えているという。

いっぽうで奥さんは「6年も乗ったジムニー (JA11型)は快適性なんてまるで考えていませんでした。WRXも、ミニバンや普通のセダンに比べれば多少は乗り心地が硬いかもしれませんが、私にとってアレ以上にハードなクルマはないと思っているので快適そのものです。
もちろん無骨さも大好きなポイントだしジムニーを手放した今も思い入れは変わらないけど、WRXは速いうえに4WDなので雪道や悪路も安全に走れます。それに、新しいクルマなのでトラブルを起こすという不安からも解放されました」と笑う。

このクルマを選んだもうひとつの理由は心臓部だ。スバルを代表する名機として1988年に産声を上げた、EJ20が最後に搭載された車両がこのVAB型のWRX・STI。世界ラリー選手権を筆頭に多くのモータースポーツで輝かしい実績を収め、国内はもとより海外にも熱烈なファンが多いエンジンは、新旧ジムニーを乗り継いだご夫妻の心も鷲掴みにした。

燃費こそ最新のエコカーには及ぶべくもないが、300psオーバーの加速はストレスをまったく感じさせず、排気量が2000ccなので自動車税も比較的リーズナブル。まさに、経済的にもファミリーカーとしての要求を満たしてくれる。さらに、オーナーの感性を強く刺激したのは、バイクを想起させるエンジンの吹け上がりもだ。

冒頭で述べた通りふたりの出会いはバイクであり、オーナーは現在もドカティのMH900eという、世界でわずか限定2000台の名車を所有している。マン島TTレースで優勝したマシンがモチーフだけに、プレミアム性だけじゃなく運動性能も刺激的そのもの。

「エンジンの回り方やサウンドに、何となく近いモノを感じています。ジムニーとはまた違う意味で走りが楽しいクルマですね」

カスタムはノーマルの完成度に満足しており、今のところホイールとタイヤを交換した程度。スバルの青いボディとよく調和するゴールドのウェッズスポーツ製ホイールを組み合わせて、イメージどおりの外観に仕上がったと満足げに語ってくれた。

足まわりは純正のままでも十分にスポーティだし、スキーや釣りを考えると車高はこのままがベスト。購入した時から装着されていたHKS製のマフラーは、音量も音質もお気に入りなのでそのまま愛用している。

カスタムより優先するのはイベントに連れてきた愛娘を交えたカーライフで、チャイルドシートとベビーカーは安全性に定評のあるレカロをチョイス。高い衝撃吸収能力のパッドやレインカバーを搭載するほか、走行安定性やトランクへの収納性にまでこだわっており、見た目もスタイリッシュでクルマ好きには垂涎の逸品だ。

さらにご夫妻は十数年後の将来像をこう描いている。

「まだまだ先の話にはなりますが、娘には私たちのようなクルマ好きに育ってもらい、いずれはWRXを受け継いでもらいたいんです。16歳になったらまずは二輪の免許を取って、18歳で大型二輪と普通自動車だねと妻と話しています。あとは私の仕事が漁業で、妻も小型船舶の免許を持っているので、娘が海にもチャレンジしたくなれば応援したいですね」

2024年に生まれた娘さんが運転免許を取得する頃、家族の一員であるVAB型WRX STIの車齢は27年に達する。その頃、自動車がどのような進化を遂げているかは分からないが、ガソリンエンジンのスポーツカーは今より希少な存在になっている可能性は高い。両親が出会い、自身がこの世に生を受けたきっかけであり、ライフワークと呼ぶに相応しい趣味のクルマとオートバイ。彼女がステアリングを握るであろうその日まで、WRXと娘さんはご夫妻の手で大切に、大切に育まれていく。

(文: 佐藤 圭 / 撮影: 中村レオ)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:鮎川浜山鳥渡し駐車場 (宮城県石巻市鮎川浜)

[GAZOO編集部]

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