走行距離よりも整備記録を優先して手に入れた涙目インプレッサとの濃密生活
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スバル・イプレッサWRX STi(GDB型)
ひと昔前までは『10年10万キロ』がクルマの買い替え目安とされていた。しかし、工業製品としての精度や耐久性が向上した現在では、この数字は単なる通過点になっているといっても過言ではないだろう。特に、絶版となったスポーツカーなど趣味性の高いモデルになると、憧れていたユーザーから見れば10万キロはまだまだ買い頃。むしろ走行距離ではなくメンテナンス履歴の確認の方が重要となってきているようだ。
そんなひと昔前なら“過走行”と言われていた10万キロを優に超えながら、前オーナーのメンテナンス記録に納得できた、2004年式スバル・イプレッサWRX STi(GDB型)を、愛車として迎え入れたのが『ウメ』さんだ。
WRCでの活躍によって、世界のラリーファンから今も高い人気を誇るインプレッサ。その2代目となるGD系は2000年から2007年まで販売されたロングセラーとして、長らくスバルのモータースポーツシーンを支えていた。もちろんこの長い販売期間には、度々フェイスリフトが行なわれ、丸目、涙目、鷹目といった通称で区別されるモデルが存在している。中でもウメさんが望んだのは涙目か鷹目の2モデル。しかし人気が高止まりするインプレッサだけに、希望する予算で手に入れられるクルマはなかなか見つけられなかったという。
「このインプレッサは、運転免許を取って初めての愛車です。だから購入する時は色々なクルマを見て回ったんですが、希望するモデルとなるとどれも予算を超えてしまっていて…。何台か迷ったクルマもあったんですが、中でもこのインプレッサが特に手頃だったんです。その訳は、走行距離が19万5000キロも走っていたこと。けれど、前オーナーのメンテナンス履歴がしっかりと残っていて、なおかつフルノーマルで大切にされていたクルマだと分かったので、走行距離はそれほど気にならなくなりました。試乗してみたところ不安な要素は一切なかったし、何よりも自分の予算で手に入れられるインプレッサということで喜びの方が勝っていましたよ」
実際に購入して現在までの間、大きなトラブルはないという。頼りにしているお店がスバル車に強いこともあり、すべてオマカセでメンテナンスをしていることも、コンディションをキープしている要因なのだとか。
そんなウメさんが涙目インプサッレを好きになったきっかけは、幼い頃に父親が作ったラリーカーのプラモデルだったという。
「父がクルマ好きだったので、子供の頃から自然と写真や動画を見る機会が多かったんです。中でも2004年のWRCはよく見ていて、インプレッサがすごくカッコ良く見えたんです。だから免許を取ったらインプレッサに絶対乗りたい、しかもあの時の記憶にある涙目が第一希望となっていました」
インプレッサWRX STiのエンジンは、スバルのスポーツモデルで定番となるEJ20ターボ。2.0リッターの排気量ながら、ターボを組み合わせることで280psというクラス最強パフォーマンスを叩き出し、WRCをはじめとしたモータースポーツでも大いに活躍したユニットである。
もちろん基本設計は1989年のデビューから変わらないものの、年次改良によってその性能は常に進化し続けているのが特徴。最終的には限定生産車において328psまでパワーアップが果たされ、インプレッサ人気をさらに盛り上げていた。また、この水平対向4気筒は、パフォーマンスだけでなく独特のサウンドも人気を集め『スバリスト』と呼ばれる熱狂的なファンを作り上げたことでも知られている。
ウメさんが希望したインプレッサの条件は、涙目のフロントマスクだけでなく、MTであることも重要だったという。特にラリーの映像からインプレッサに興味を持ったため、走らせて楽しみたいと考えるのは自然の流れ。しかし、6速MTのWRX STiともなると、市場価格は一気に高騰してしまう。
その点でも、走行距離を気にしなかったことでリーズナブルに手に入れられたのはラッキーだったというわけだ。
「走行距離は気にならなかったとは言いましたが、乗りはじめてすぐの頃はやはり壊れちゃうんじゃないかと心配になっていたのは本音ですね。でも意外と壊れることもなく、宮崎〜広島の長距離ドライブやサーキット走行もノートラブルで何度も走っているので、もはや心配はなくなっちゃいました。だから、この安心感がさらに長く続くように、そろそろエンジンのオーバーホールもしようかなって考えているところなんですよ」
前オーナーのメンテナンス記録やお世話になっているお店のアドバイスから、メンテナンスの重要性は大いに理解している。だからこそ、大きなトラブルが発生する前にしっかりと手を入れておくことで、より長く絶好調をキープしていこうと考えているのだ。
独特のボクサーサウンドを楽しみたいと考えるオーナーも多いインプレッサだけに、好みのサウンドを奏でるためにマフラーのみ交換するといった考えはよくあること。
購入時は、基本的にノーマルの状態ながら、マフラーのみが社外品に変更されていたそうで、ウメさんもこのマフラーによるサウンドは自分の好みと合致していたため、そのまま使い続けているそうだ。
また、ダッシュボード上に並べられる追加メーターは、サーキット走行などでのエンジンの状態を把握はもちろん、走行距離が伸びたエンジンのコンディションを逐一チェックするためのもの。異常がないか日常的に確認しておくことで、大きなトラブルを未然に防ぐ保険としても役立っているそうだ。
スポーツ走行を楽しんでいるため、タイヤ&ホイールはもちろん、サスペンションも変更している。また機能を優先しながら、スタイリングの変化もウメさんの楽しみ。そのためホイールのインセットは、スペーサーなしでフェンダーとツラが合うように自分で計算してサイズをチョイス。この計算がピタッと合ったことは、満足度が一気に高まったポイントなのだとか。
タイヤやサスペンションだけでなく、自分に合ったポジション作りもスポーツ走行を楽しむには欠かせない要素。そのため、少々遠く感じていた純正ステアリングは、社外品に変えて手前側にオフセットして調整する。
また、現在装着している純正シートはクッションがヘタリ気味のため、今後はホールド性の高いバケットシートに交換したいと考えているそうだ。
はじめての愛車だけに、思い入れが深いのは当然。しかも、憧れていたインプレッサを自分好みにカスタマイズし、満足のスタイリングが完成したとなればその感動も大きく、記念に残したくなるものだ。そんな思いから、完成した愛車の写真を撮影するのは当たり前の流れだろう。ちなみに、この写真は同色オールペンでリフレッシュし、社外のリップスポイラーと車高調を組み合わせた納車間もない頃の記念写真だという。
「機関系のメンテナンスは万全でしたが、やはり経年車だけあって、お店に並んでいた時は塗装のクリア層がハゲていて、ちょっと残念な感じでした。だから納車前に同色でオールペイントしてもらって、ピカピカの状態で納車してもらいました。でも、半年後に右後ろを当ててしまい、バンパーに大きな傷が…。さらに実家の車庫で自転車が倒れてきたりと、気づいたら細かいキズが増えちゃって。この辺りは次のタイミングでまたキレイに直したいと考えています」
購入したのが2023年7月というから、約1年半の間に6万キロほど走行距離を伸ばしているというから、普段の通勤から週末に仲間との集まり、さらに福岡の実家への往復や兄弟の住む広島までのロングツーリングなど、フルに活用していることがわかる。
ウメさんにとってのオドメーターは、クルマの寿命に向かうカウントダウンではなく、メンテナンスサイクルを見る目安といったところなのだ。
サーキットやワインディングを気持ち良く楽しむことができて、さらに4ドアで使い勝手が良いというのもインプレッサの魅力。取材日もリヤシートには純正ホイール4本が積み込まれていて、この撮影の後にはスタッドレスタイヤに組み替えに行く予定なのだとか。
「この春から転職して、島根県に移住することになったんです。その準備で島根に行くこともあって、スタッドレスが必要になったんです。だから今日は、純正ホイールにスタッドレスを組んでもらうために積み込んだまま来ちゃいました(笑)。これから心機一転、島根県民になりますので、島根でも気の合うクルマ仲間が作れたら幸せですね!」
「まだまだこのインプレッサでやりたいことは沢山あります。子供の頃に見た、WRCのステージを走る涙目の姿はやっぱり忘れられませんから、将来的にはWRCのレプリカ仕様にカスタマイズするのも楽しいかも。もちろん、しっかりとメンテナンスしながらいつまでも乗り続けていきたいっていうのは最大の目標ですね。30万キロとか50万キロとか、オドメーターの数字が増えても、今と変わらない安心感のあるクルマでいられるよう、大切に乗り続けて行くつもりです」
近年のクルマはしっかりとメンテナンスしていれば、大きなトラブルに遭うことは少ないとも言える。しかし、メンテナンスコストや、その際の時間や手間が掛かってしまうので、乗り換えてしまうという考え方も一理ある。
ただし、想い入れがある愛車ならば、そんな手間は惜しいと感じないはず。ウメさんにとってのインプレッサは、まさに手間もお金も惜しくはないと思える特別な存在。それだけの価値が詰まっていることは間違いないのである。
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 西野キヨシ)
※許可を得て取材を行っています
取材場所:宮崎県林業技術センター/森の科学館(宮崎県東臼杵郡美郷町西郷田代1561-1)
[GAZOO編集部]
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