待ちに待ったフェアレディZ オーナーが信念をもって淑女を選んだそのワケは

  • 宮城県石巻市のオシカーズのミーティングで取材した日産・フェアレディZ(RZ34)

    日産・フェアレディZ(RZ34)



都市部を中心に若者のクルマ離れが〜と言われるようになって久しいが、地方のイベントでは『新車で買いました!』といった元気なヤングドライバーもまだまだ多いのは嬉しい限りである。

そんな若きクルマ好きたちと話をしていて感じるのは、取材担当がクルマに乗り始めた頃と比べると、新車を買うというハードルが随分高くなっていることだ。

車両価格や維持費の負担はもちろんだが、加えて近年の新車購入事情で驚いてしまうのは納期の長さだ。新車納期の長期化には様々な要因が複雑に絡み合っているとはいえ、ネット通販なら翌日配達が当たり前の現代に、半年以上もザラというのは購入希望者にとって大きな悩みの種である。

ここで紹介するオーナーもオーダーしてから2年間待ち続け『オシカーズ自動車大博覧会』の前日に、晴れてRZ34型フェアレディZが手元に来たばかり。ということで、納車記念も兼ねて取材させていただくことにした。

「いやあ、お待たせしちゃってスミマセン。もともとこのイベントには参加できると思っていなかったのですが、朝から参加していた仲間たちから『来るまで待っているから!』ということで、とりあえずZを見せに来ました。神社でお祓いをしてもらっていたので、こんな時間になっちゃいました」

オーナーは終了間際のイベント会場に、ピッカピカのフェアレディZで登場。さっそくクルマの話を伺いたいところだが、それよりもまず気になったのは『新車をお祓い』という言葉が、28歳の若者の口から飛び出したことだった。

「えっ、皆さんのところではやりませんか? ウチでは今でも新しいクルマが来たらお祓いをしています。納車は昨日だったのですが自宅にこのZを置いて、御神酒と塩、スルメをお供えして家族全員で無事故を祈願。今日は改めて私一人で初乗りがてら、地元の岩手県内の神社で安全祈願のお祓いをしてもらいました」というから、これにはオーナーさんよりも遥かに古い人間である担当者も驚いてしまった。

冒頭でもお伝えしたように、オーナーがこのRZ34型フェアレディZの購入を決意し、オーダーをしたのは約2年前という。購入を決めた理由と、納車までの気持ちはどんなものだったのか気になるところだ。

「オーダーしたのは2022年の4月28日です。初回の受注がその日で締め切られると知って、慌ててディーラーに行ったのを覚えています。購入するキッカケは、それまで乗っていたZ34型のフェアレディZを峠でぶつけてしまったことでした。修理をしようか悩んでいたところに新型の発売を知ったのですが、相対的に新車を買ったほうが得かな? と感じたんです。もちろん納車を待っているこの2年以上は“楽しみ”という気持ちに変わりはありませんでしたが、実際問題として納車までの間にクルマがないのは大問題。しかたがないので、中古のスズキアルトを購入して乗っていました」

日本を代表する、歴史あるスポーツカーであるフェアレディZを2台乗り継ぐことになったオーナー。Zにこだわり続ける理由も気になるところだ。

「18歳で運転免許を取得して、最初に購入したクルマは日産のエクストレイルでした。当時ハマっていたスノーボードを楽しむために、雪道にも強いSUVを選択しました。エクストレイルには約3年乗って、次に中古で購入したのがZ34型のフェアレディZだったんです」

「スポーツカーに乗ろうと思ったキッカケは、NC系ロードスターに乗っている仕事関係の知り合いの勧めでした。それまで“大雪が降る山形県じゃスポーツカーなんてムリ”と思っていたのですが、話を聞いているうちにスポーツカーに興味が沸いてきたんです。候補としてはスバルのWRX STIや、三菱のランサーエボリューションなどのスポーツ4WDも考えていたのですが、予算的に合わないために断念。300万円以下で買えるマニュアルシフトというのと、地元ではあまり見ないクルマということで最終的にZ34を選ぶことにしました」

夢と現実ではないが、スポーツカーであるZ34に乗ってみて、その楽しさや満足度はどうだったのか? また懸念していた雪の降るシーズンでの苦労はどうだったのだろうか?

「やはりマニュアルシフトは操作も楽しいです。理想としているのは『Zを手足のように扱えること』で、アクセルワークやブレーキングを磨くために走り込んでいました。その結果Z34をぶつけてしまったというワケなのですが…」

「しかし、スポーツカーの走りが楽しめるのは雪のない時期だけで、やはり冬は決して楽しいとは言えません。雪道でのFR車は、とにかくリヤのトラクションを確保しなければ走れたもんじゃありません。そこで私の場合はトランクスペースに30kgの米袋を4つ積んでいましたが、それでも厳しい時は実家の軽トラを借りて通勤していました」

そんな雪国ならではの苦労もありながら、2台目のスポーツカーとして新型のRZ34を選んだオーナー。新車ということならば、GRヤリスなど4WDモデルという選択肢は検討しなかったのだろうか?
「元々フェアレディZは、コミックの湾岸ミッドナイトに登場するクルマくらいの知識でしたが、Z34に乗り始めてからS30系からの長い歴史や、歴代モデルの特徴などをネットで調べました。なかでも私がとくに好きなのが、初代フェアレディZ(S30)と、スカイラインGT-R(BNR32)とほぼ同時に登場したフェアレディZ(Z32)です。このRZ34のスタイルは、そうしたフェアレディZの歴代モデルをオマージュしていることにすごく魅力を感じましたので、他のクルマは一切検討しませんでした」とオーナーは力強く語ってくれた。

最後に、待望の納車から2日目となるRZ34のファーストインプレッションと、今後の計画を伺ってみることにしよう。

「まだ走行距離は300kmですが、Z34と比べるとRZ34の方がパワーはあるし、さらに乗りやすい印象です。ただシャーシはZ34と基本的に共通なので、フロントヘビーな前後バランスはできる範囲で改善したいと思います。ZはGTカー寄りとも言われますが、私が目指しているのはスポーツカーにすることです。慣らし運転が済んだら、前のZ34と同様に、サスペンションやマフラー、エンジンコンピュータの現車セッティング、さらにカーボンボンネットの導入や、シートを交換して軽量化していきたいと思っています」とのことだ。

オーナーの住む山形県は、これから降雪を迎える。
RZ34で本格的に走りを楽しめるのは来春か? 将来的には貴重となりそうなガソリンエンジン搭載のスポーツカー、フェアレディZ。今度は攻めすぎてぶつけることなく、大切に乗り続けていくことを祈っています。

(文: 川崎英俊 / 撮影: 堤 晋一)

※許可を得て取材を行っています
取材場所:鮎川浜山鳥渡し駐車場 (宮城県石巻市鮎川浜)

[GAZOO編集部]

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