ついに念願のモデルを手に入れた! オリジナル度が高い初代デリカスターワゴン
元々は小型キャブオーバートラックとして、1968年に三菱自動車のラインアップに加わったデリカ。それをワンボックスのバン型としたライトバンやルートバンが派生し、それをベースにした9人乗りの乗用モデル、“デリカコーチ”にも発展するが、1979年まで生産された初代は、基本的には商用モデルであった。
そんなデリカのイメージが大きく変わったのが2代目の時となる。1979年のフルモデルチェンジで、商用モデルと共に『スターワゴン』という乗用モデルがラインナップされたのだ。
乗用モデルと9人乗りというのは初代と同じであったが、2列目3列目をフルフラット化できたり対面シートなどにも発展したりと、シートアレンジの豊富さで人気を博し、スターワゴンの名を高めていったのである。
しかし、この時点でのスターワゴンは、多くのクルマ好きの記憶に残っている、いわゆるスターワゴンとは異なる。やはりスターワゴンと言えば、大径タイヤを履く、車高が高い4WD車というイメージが強いのではなかろうか?
日本初の4WDキャブオーバーワゴンとして、デリカスターワゴン4WDが追加されたのは1982年。同年には大ヒットしたパジェロも誕生し、デリカスターワゴン4WDと共に『SUVの三菱』というイメージが、その後、定着していくこととなる。
デリカスターワゴン4WDの4WDシステムは、本格クロカン4WDであるパジェロからそのまま流用されたもので、デリカスターワゴン4WDは、パジェロ同等の悪路の走破性も持ち合わせているのも大きな特徴となる。
そんなデリカスターワゴン4WDで『昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024』に参加していたのが、これまでに3台のデリカを乗り継いできたというオーナーの『デリカ好き』さんである。
「今から25年前に、会社の先輩が乗っていたリフトアップしたデリカスターワゴンに一目惚れしまして、自分も1993年式の同じスターワゴンに乗り始めたんです」
ちなみに現在所有するスターワゴン4WDは、スターワゴンとしては初代で、デリカ好きさんが初めて所有したスターワゴンは1986年にデビューした2代目だ。そのスターワゴンを、先輩同様にリフトアップするなど自分好みにカスタマイズしながら、20年近く乗っていたそうだが「修理できない故障が発生して、泣く泣く乗り換えることになったんです」とのこと。
乗り換えるスターワゴンを探し始めたちょうどそのタイミングで、初代スターワゴンの写真をたまたま見つけたという。「元々、角張ったスタイルのクルマが好きなんです」というデリカ好きさん。スターワゴンに乗る以前は、角張ったスタイルが特徴の日産のテラノに乗っていたというから、角張ったデザイン好きは、筋金入りだ。
そんなデリカ好きさんだけに、2代目よりも角張ったデザインの初代がより魅力的に映ったに違いない。
「さらに旧いクルマになってしまうけど、どうしても初代のスターワゴンが欲しくなったんです」と思案していたが、そう簡単に初代スターワゴンに乗ることはできなかった。
「流通する初代スターワゴンの数自体がかなり少ない上に、ディーゼル車ばかりだったんです。結局、ガソリンエンジンが見つからず、その時は仕方なく、デリカスペースギアを買ったんです」と、これが2台目のデリカとなる。
なぜディーゼルではダメだったのか聞いてみると、オーナーがお住まいの地域ではディーゼル規制があり、旧いディーゼル車が登録できないのだ。
スペースギアに乗り始めて1年、初代スターワゴンを所有したいと思い続けていたところ、ネットオークションでついにガソリンエンジンの初代スターワゴンを発見し「関東からの出品で、値段も200万円近かったんですが、即決で落札しました!」とのこと。
そのスターワゴン4WDこそが、ここでお見せする1985年式デリカスターワゴン4WDエクシードである。
『ザ・角張ったデザイン』と言える初代スターワゴン。そのスタイリングのどのあたりがお好きなのかを伺った。
「真横から見たスタイリングが特に好きですね。スペースギアは、衝突安全性を高めるために、フロントはボンネットが飛び出した形状になっていますが、初代スターワゴンは、シルエットだけだとどちらが前かわからない! そんなスタイリングも気に入ってます」
2代目スターワゴンに乗っている時はリフトアップするなどカスタマイズしていたデリカ好きさんだが、初代スターワゴンは基本的にノーマル。オリジナルに近い状態で乗っているという。
「元々の車高が高いので、リフトアップしようと思わないんです。タイヤとホイールは替えていますが、標準サイズとそう変わらないものになっています」
タイヤ&ホイール以外で変更されているのが、前後バンパーとボディカラーだ。
「スターワゴンは、本来、樹脂製のバンパーが装着されているんですが、前のオーナーさんが、バン用のスチール製バンパーに交換しているんです。好みとしては、樹脂製バンパーの方が好きだし、本来の樹脂製バンパーも譲っていただいてあるので、その内、何かのタイミングで元に戻すと思います。ボディカラーも手に入れた時点で純正色とは異なるグリーンメタリックに塗装されていました」
それ以外の部分は、オリジナル度が高い。インテリアも同様で、しかも極上のコンディションを保っている。赤系の色は、紫外線による色褪せが生じやすいが、デリカ好きさんのスターワゴンのシートは、本当に綺麗なままの状態を保っていた。
「カンガルーバーやサイドミラーも、社外品とか、純正オプション品のように見えますが、標準装着品なんですよ。エクシードというのは当時の最上級グレードなので、例えば、ワインレッドの派手なシートもエクシードの専用なんです」
「インテリアと言えば、これも前のオーナーさんがいっしょに譲ってくれたんですが、後席の人用に、昔の旅客機などで使われていたのと同じ仕組みのチューブイヤホンが、純正装備品として付属しているんです。使ったことはありませんが(笑)」
後席のウインドウに備わるレースのカーテンも、「デリカのDの文字があしらわれた模様が入っているんですよ」という、純正装備品ならではのものだそう。
理想のクルマを手に入れて3年。コンディションが良い個体とは言え、ほぼ40年前のクルマだからトラブルも発生する。
「ラジエターやその周辺からの水漏れが何度か発生して、修理してもらってます。それからエアコンも、現在効いてくれてはいるんですが、コンプレッサーオイルが漏れているところがあるようで、このままだといずれエアコンが使えなくなると言われているんですよね」
それとは別に、純正オーディオのカセットデッキが壊れていて、現在どのように修理するかを模索中だ。カセットデッキやテープといったアイテムも、オーナーにとってはお気に入りのひとつなのである。
「いつも修理をお願いしているクルマ屋さんに、カセットデッキの部分だけを取り外して預けて、今は修理してくれる業者さんを探してもらっています。このスターワゴンを手に入れた時には、すでにカセットテープが手元に残ってなかったので、新たに沢田研二さんのカセットテープを買って、スターワゴンに乗る時はいつも聴いていたんです。けど、デッキが壊れてしまってからは、音楽無しでのドライブになってしまって寂しいんですよね」
今時のデジタル音源のカーオーディオに交換するという手もなくはないが、オリジナル度の高いスターワゴンだけに、元々付いていた純正カセットデッキを修理することにこだわる。
そんなこだわりを持ったデリカ好きさんだからこそ、初代スターワゴンは、昭和の香りをしっかり残したまま走り続けていく。
(文: 坪内英樹 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
第四回 昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024
取材場所:片男波海水浴場(和歌山県和歌山市和歌浦南3丁目1740)
[GAZOO編集部]
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