「いつかは前オーナーに挨拶を」 1桁ナンバーの魅力で衝動買いしたコロナマークII
1970年式のトヨペット コロナマークIIを8年前に購入した『花』さん。ナンバープレートの分類番号には新車登録当時の『和 5』という和歌山県の頭文字と、1桁のナンバーが並んでいる。購入の決め手となったこのナンバーとの出会いや、そしてそこに至るまでの花さんの愛車遍歴をお話しよう。
約60年前、オーナーの花さんが物心ついた3〜4歳の頃には、すでに父親の影響でクルマが大好きな子供に成長していたという。
「その当時、親父は鈑金屋をやっていて、仕事が終わると毎日のように“試走”だと言って、修理したクルマの様子を見るために近所を運転していたんです。僕はそれで毎日いろんなクルマを見られたり、横に乗せて走ってもらえたりするのが大好きな子供でした。気に入ったクルマがあれば『もう1周走って』とおねだりするほどでしたね」
そんな鈑金屋を営む父のもと、運転免許を取って最初に購入したクルマはいすゞの117クーペだった。その後は、父のお下がりとなったクルマで愛車生活を送っていたという。
花さんのクルマ選びの転機のひとつとなったのは結婚してお子さんができたことだ。2人の子供を乗せるならば、万が一、事故が起こってしまっても無事なようにと、トヨタ・クラウンの2800ロイヤルサルーンをチョイスした。
「本当はハードトップに乗りたかったのですが、高価だったのでセダンにしました。ノーマルのままでは紺色の役員車みたいだったから、小さなフロントスポイラーを追加して乗っていましたね(笑)」
やがて、就職先だった愛知から地元の和歌山に戻ってくると、父が経営する保険の代理店業を継ぐことになり、自身が代表となって現在に至っている。
そんな花さんは、高価なクルマを1台買うよりは、用途に分けて予算を配分して様々なクルマを乗り換えたいという性格であったため、多い時には5台もの自家用車を所有するといったペースで多種多様なクルマを乗り継いできた。
そんな中でも思い出の1台が日産・スカイラインの3代目モデル、いわゆるハコスカのGTXグレードであった。
「一度は欲しいクルマだったので、30年前に手に入れて、4速から5速ミッションに載せ換えをお願いしたり、2ドアのリヤフェンダーを切らないで済むギリギリまでオフセットを合わせたワタナベのホイールを履いたりと、とてもこだわったカスタマイズをしていたんです。けれど、ちょうど2人の子供がお金のかかるタイミングと重なり手放してしまいました」
まるで叩き売りのような価格での売却だったようで、そのまま所有しておけば……と後悔をしているそうだ。しかし、その甲斐があって、2人のお子さんを県外の大学へ進学させることができ、そのための仕送りと下宿代も用意できたそうだ。
そして、2人とも大学を卒業して、花さんが自由に使えるお金が増えたことが、このコロナマークIIの購入に繋がっていった。
「いよいよ自分で遊べるクルマにお小遣いを回せると思って、最初に買ったのはスズキのマイティボーイでした。愛知時代の知り合いが病気になってお見舞いをした時に思い出のクルマということで譲り受けました」
軽自動車×ピックアップというマイティボーイ独特のパッケージに、よりハイパワーなアルトワークスのエンジンを載せ換え、公認車検を取得。主に冬の時期に遊べる楽しいクルマとして乗り続けているそうだ。
そしてコロナマークIIは8年前、そのマイティボーイのエンジン載せ換えを依頼した、とあるプライベートガレージの代表に購入を持ち掛けられたのが最初だったという。
「その人には“マイティボーイの他に趣味のクルマを1台増やしたい”という話はしていて、しばらくしたら『良いクルマが入ったよ』と話しが来たんです。なんだろうと見に行ったらこのコロナマークIIがありました。ナンバーが、当時でも滅多に見ない1桁だったから即決で購入しました」
花さんによると、和歌山県ではこの車両の登録年次である1970年まで1桁ナンバーの発行がされていて、2桁に切り替わったのは4月のタイミングだったという。車検証には年号までの記載しかされていないため、おそらく1970年の1~3月に登録された、1桁ナンバー最後の世代にあたるようだ。
そして前オーナーとの同一管轄内のため、ナンバーもそのまま変更する必要なく継続車検が終わり、いざ引き取りにガレージを訪れた花さん。
しかし、ドアを開けると枠にはめられていたウェザーストリップがポロリ…。ナンバーを見て即決はしたものの、外観のみのチェックで、車体の状況はほぼ気にせずに購入したゆえキレイに乗りたい花さんにとっては気になる点が多くあったという。
そこで改めてメンテナンスを依頼し、約半年後に修復された満足な状態で愛車として乗り始めることができたのだった。
「ボンネットは塗り直して、他も細かいところの不具合が多く出ていたので、その都度修理してきました。8年間でだいたい壊れるところは一巡したので、今が一番調子の良いタイミングですね(笑)」
修復で大変だった箇所は、ガソリンタンクの穴開きだったそうだ。この時代のトヨタ車ならではの、トランクガーニッシュの中央から給油するタイプだったので、どこかに空いてしまった腐食穴から、トランク内のスペアタイヤが入っている窪みにガソリンが溜まってしまうようになっていたという。早期発見できたことで、大事故を未然に防げたのが幸いであった。
他にも対処する部分は多かったものの、今では、夏ならばクーラーを効かせながら昭和の音楽を聴き、気持ちよくドライブできる。そんな休日を楽しめる趣味グルマとして活躍しているそうだ。
そんな一方で、花さんならではの困りごとも。かつてハコスカを購入した時にカスタムを楽しんでいたように、コロナマークIIもできることなら自分なりのカスタムを加えてオリジナリティを出したいという癖(!?)があることだ。
「会う人、会う人に、どうしたらいいかな? と相談するんですが『そんな貴重なナンバーのクルマをイジるのはもったいないからノーマルで乗れ』と、皆から説得されました。私が愛車に手を加えるのは、人と被らないのが好きだからという理由からですが、このクルマならそもそも被らないからイジらなくてもいいか、と納得しました。それでも、フェンダーミラーとホイールは替えさせてもらいましたけどね(笑)」
そんな愛着のあるクルマに8年間乗り続けている間、ついに昨年、このコロナマークIIの前オーナー時代を知る人物と知り合うことができたという。
「イベントの最中にジムニーで参加している人から頼まれて、エンジンルームを見せたら『これ俺の仕事やねん』と言われました。前のオーナーからラジエターの修理をお願いされたことがあったそうで、オーナーについても少し教えてもらいました。県内で料亭をされている方のようで、それなら一度コレに乗って、食事を兼ねつつ挨拶に行きたいと思うようになりました」
1桁ナンバーが証明する通り、54年もの長い期間を和歌山県内の同じ地域で過ごしてきたコロナマークⅡ。
花さんはこのクルマが持つ歴史の重さを実感しながら、今日も昭和の音楽とともに青空の下、気ままなドライブを楽しんでいるだろう。
(文:長谷川実路 / 撮影:清水良太郎)
※許可を得て取材を行っています
第四回 昭和の乗り物大集合in片男波海水浴場2024
取材場所:片男波海水浴場(和歌山県和歌山市和歌浦南3丁目1740)
[GAZOO編集部]
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