アバルト500は「欠点が魅力」。手なづけるながら乗る非日常感が楽しい!
アバルト500(チンクエチェント)を愛車にするエンヤさん。アバルトとの日々は、エンヤさんが抱いていた「欠点のないクルマが好き」という思い込みを吹き飛ばし、欠点が魅力になると気付かせてくれたそう。そんなアバルト×エンヤさんのお話です。
――鮮やかなレッドですね。ルーフに浮き彫りみたいなのが施されているようですが?
はい、そこがこのクルマを購入する決め手になりました
――なるほど。そちらは後ほど詳しくうかがいます。それではエンヤさんの愛車歴を簡単に教えて下さい
18歳で免許証を取得。父親がミニを2台、所有していたので、しばらくは借りて乗っていました。
――お父さんのミニはBMWですか?
いえ、ローバーミニのMk-1(マークワン)とMk-1仕様です。特にMk-1は、ずいぶんと探して入手したと聞いています。
――免許を取ってすぐに旧ミニの運転、難易度が高かったのでは?
ペダルレイアウトの都合でシートが正面を向いていないとか、Mk-1はMTの一速がノンシンクロとか、Mk-1仕様の方は程度が今ひとつとか(笑)。今のクルマのようにユーザーフレンドリーではありませんね。ちゃんと走らせるには、こちらがミニに歩み寄らないといけない。けれどネガティブな面を吹き飛ばすくらい楽しいクルマです。運転の基本的な部分を学ばせてもらいました。
――ミニからの英才教育ですね
たしかに。自分で最初に購入したのは、中古のユーノスロードスターです。もう古いクルマだったので次第に手入れが必要となり、当時フリーターだった自分には維持することができず手放しました。
就職してお金を貯めてから、中古のホンダCR-Zを購入。けれど半年ほどで致命的な箇所が壊れ、廃車にしました。その次が今の愛車、アバルト500です。3年前に購入しました。
――ロードスター、CR-Zの次にアバルト。がらりと方向性が変わりましたね
ロードスターもCR-Zも楽しくていいクルマだったのですが、どこか物足りなかったんです。そんなことを職場の同僚に話したら、アバルトを勧められました。
――他に候補に挙がったクルマはありましたか?
ルノールーテシアとBMWのミニです。当初は一通り、試乗をしてから決めるつもりでした。たまたま最初に足を運んだのが、アバルトを展示していた中古輸入車専門店だったんです。
2階のラウンジからアバルトを見下ろしたとき、ルーフに(アバルトの)エンブレムが浮き彫りになっているのが見え、これがとても格好良くて! 試乗もせず、その場で購入を決めました(笑)
――もし展示されていたアバルトのルーフに浮き彫りが無かったら、別のクルマに乗っていたのかもしれませんね
本当にそうです。出会いはあるんだなと思いました。
――アバルトを初めて運転したときの感想を教えて下さい
正直、性能にはあまり期待していなかったのですが、良い意味で裏切られました。加速がよく、足回りもしなやか。キビキビとよく走って排気音もいい。あと性能とギャップのある、のんびりとしたデザインも好きですね。こんなにも自分の感性とあうクルマがあったのかと感動しました。
――べた褒めですね!
ただ、しばらく乗っているうちにネガティブな面も出てきました。車内がせまくシートポジションが合わない。ブレーキペダルやクラッチペダルにクセがあって踏みづらい。今時、サイドミラーが手動。なによりメーターパネルとメーターフードが邪魔で、前方が見えづらい。
――一転して、辛口!
アバルトはある意味、旧ミニと一緒だったんです。ユーザーに合わせてくれるフレンドリーなクルマではない。ちゃんと走らせるには、こちらから歩み寄らないといけない。そして、ちゃんと走らせてあげると、ネガティブな面が途端に楽しくなるんです。
この楽しさを知ってしまったら、もうアバルトから抜け出せませんね。アバルトに乗るまでは、自分は欠点のないクルマが好きだと思っていましたが、実は違っていたようです。
――好き嫌いがハッキリと分かれるクルマだったんですね。アバルトに手を入れたところは、ありますか?
まず外装ですが、後期型と比べてグリルが寂しかったので「ロゴインパクト」を装着。ホイールにA.TRUCCOの「レトロフィット16」を履かせました。あとはサイドマーカーをオレンジにしたくらいでしょうか。
内装はステアリングをナルディの70周年ウッドモデル、シフトノブもナルディのマホガニーに交換しました。シフトパターンのシールはユーノスロードスターのものを貼っています。これは密かなこだわりです(笑)。あとマフラーを純正オプションの「レコードモンツァ」と交換しました。
――ブレーキのディスクローターがドリルドディスクのようですが、こちらは交換されたのでは?
そうそう、私も後になって気付いたのですが、どうもエッセエッセキット(公式のパフォーマンスアップキット)が組まれているみたいなんです。ショップからはなんの説明もなかったのですが、もしそうならお得な買い物をしたことになりますね。
――購入されてから、ちょうど3年が経ちました。アバルトに乗っているからこそ、できた体験はありましたか?
同じアバルトに乗っている人が、すれ違う際に手を振ってくれたり、挨拶をしてくれることですね。私からすることは少ないのですが、もちろん手を振り返しています。皆、好きじゃないと乗り続けられないクルマだと身に染みているので、アバルト乗りには仲間意識を持っているのだと思います。
――アバルトの主な利用は通勤とのことでしたが、旅行とかはされないんですか?
仕事で全国をクルマで移動するため、クルマ旅行にはなかなか行く時間がありません(笑)。
――お仕事をうかがってもよろしいですか?
フリーランスで、現在はレーシングシミュレーター(以下、SIM)の開発や販売を行う会社に常駐しています。SIMの設置やメンテナンス、各種サービスの他、e-Sports関連のイベント参加や、データ収集も兼ねてレース参戦も行っているので、週末の度にあっちこっちに飛び回っています。
他にも記事制作やアナウンサーを請け負っています。
――会社でレースの参戦を!?
はい。『MEC(メック)120』という、レーシングカーによる耐久レースに参戦しています。
――やっぱりSIMの開発には、リアルなレース経験が求められるんですね。ちなみにドライバーとして、ですか?
いえいえ! 私はデータエンジニアという立場で、ラップタイムや燃費の管理、そこからのレース戦略を考えたりする役割です。当初はレースのお手伝いで(チームに)参加したのですが、いつの間にか任されていました。
ただ2023年はご縁があって、『マツダ ファン・エンデュランス(通称「マツ耐」)』にドライバーとして2レース、参戦できました。
――ご縁とは、どのような
かねてよりスーパー耐久シリーズに参戦するレースチームさんとお付き合いがあったのですが、そのチームをお手伝いしている方の中に、SIMに関わる私をドライバーとして走らせたらどうなるか、興味がある方がいらっしゃいました。
私も実際に試してみたかったので、その旨を伝えたら、マツ耐にロードスター(NC)とデミオで出走できるよう話がまとまってしまって。
――それは面白そうな試みですね。そして、結果は?
ロードスターに乗って出走した第6戦第1レースではクラス2位の総合10位。デミオに乗って出走した第2レースではクラス優勝、ロードスターを除いた車種のクラスで3位に入り、連続して表彰台に乗ることができました。
――はじめてのレースと2度目のレースで表彰台ですか!? すごいじゃないですか!
ロードスターにせよデミオにせよ、チームのドライバーは私だけではありませんから。でもSIMでの走行が実戦でも通用することを証明できたのはうれしく、自信になります。
――いつもと違う立場で挑んだレースは、いかがでしたか?
走行中は楽しかったのですが、レースが始まるまでは、とにかく緊張しました。私は緊張すると眠くなる体質で、ずっと眠かったのを覚えています。
――レースのために、SIMで特別な練習とかはされましたか?
特別というわけではないのですが、職場の同僚でS耐にも参戦しているドライバーから「ピットインの練習をしておくといい」とのアドバイスを受けたので、重点的に行いました。これが本当に効果的で、やはりプロのアドバイスは的確だなと、あらためて感心させられましたね。
――経験者ならではのアドバイスですね
あと世界中の何千といるプレイヤーと定期的に耐久レースを行っているので、この経験も役に立ったと思います。
――SIMで耐久レースですか?
はい。2~3時間から24時間まで、実際のレースに即した時間、チームを組んでレースを行います。24時間寝ずに運転をしたり、ほかのドライバーのスポッターをして完走したこともありますが、これはさすがにシビれました。
――今後もドライバーとしてレースに参戦されるのでしょうか
機会があれば、ですね。自分のレースとの関わりは、やっぱりレースエンジニアです。現在はトラックエンジニアの勉強をしています。経験を積んでノウハウを溜め、レースエンジニアとしてのステップアップを果たしたいですね。
――是非、応援させてください。話は変わりますがエンヤさんは、SNSをどのように活用されているのでしょう
SNSを始めたきっかけは情報集めです。SNSは、まだ公式サイトに記載されていない開発ツールの最新情報が拾え、運が良ければ開発者からも助言が得られる。すごいことですよね。
自分からの投稿にテーマやこだわりはなく、アバルトのこと、仕事のこと、レース活動のこと……その場の思いつきで書き込んでいます。そういえば現在のSIMの仕事も、10年以上の交流があるグランツーリスモ仲間との繋がりで誘われました。SNSがなければここまで長い交流を築くこともできていなかったでしょうね。
――SNSで、人生が変わったとも言えますね。では最後になりますが、エンヤさんとアバルトはどんな関係ですか?
いい意味で、お互いが日常に溶け込んでいない関係だと思っています。アバルトは私のことをなんとも思っておらず、手足のように走ってなんかくれない。そこを「言うことを聞いて下さい」ってお願いし、聞いてもらうのが楽しいんです。
アバルトに乗っている時間は非日常、いつも新鮮な気持ちにさせてくれます。
人馬一体ではなく人とクルマが別の方向を向いているからこそ、色々と考え、一緒に走るのが楽しいというエンヤさん。これからもアバルトと対話を重ね、お互いが気持ちよく走れる方法を模索しながら、愛車生活を楽しまれるのでしょう。
【X(Twitter)】
エンヤさん
(文・糸井賢一)
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