「頼りないけど愛くるしい愛犬」自分と同年齢のフィアット126 Maluch Townに一目惚れした青年の物語
仕事中、偶然街で見かけたクルマに一目惚れしたという「おいなり小島」さん。オーナーを口説いて譲り受けたそのクルマは、フィアット126 Maluch Town。乗り始めてから約3ヶ月が経ち、自身の気持ちや周りの反応に変化があったのだとか。
24歳という若さで、なぜ旧車に魅了され続けているのか。その答えのヒントは彼の幼少期からの生活にありました。
今回は、おいなり小島さん×フィアット126のお話です。
――今の愛車であるフィアット126とはどこで出会いましたか?。
1年ほど前、仕事中に偶然通った街中の住宅地に、フィアット126が停まっているのを見つけ、一目惚れしたのが出会いでした。
前々から気になっていた車種だったので、これは運命なのかもしれないと、インターホンを鳴らし、オーナーさんに名刺を渡して挨拶をしました(笑)。
――すごい行動力ですね!オーナーさんは驚いていたんじゃないですか?
それが、僕がフィアット126を知っていることに大変喜んでくださって……。その後もお話をして意気投合したんですよ。勝手な予想ですが、「この人なら安心してフィアットを渡せる。」と思っていただけたのかもしれません。
――熱意が伝わったんですね。元々、輸入車の旧車が好きだったんですか?
クルマに限らないのですが、昔からヨーロッパの服のデザインや古い物が好きでした。国産車が嫌という気持ちは全く無いのですが、好きになるのは、なぜか輸入車の旧車が多かったです。
見た目だけではなく、クルマの歴史を調べることで、さらに魅力が増すんですよ。
――例えばどんな歴史を調べるんですか?
デザインは誰が担当して、どんな経緯で開発されたのかとか。モータースポーツでは活躍していたのかを調べて、当時の背景を知ることで「良いな!」と感じて、手に入れたくなることが多いです。
――このフィアット126も歴史を調べる中で、興味深いと感じたんですね
そうですね。簡単に言うと、フィアット500(チンクエチェント)の後継車となる126は、先代の500で評価されていた部分をちゃんと継承しつつ、快適性もアップしているんです。
でも、当時は500が偉大すぎて、影に隠れちゃったという背景を知ると、この頼りない見た目の可愛さと相まって、グッと来るものがありました。
以前からずっと、500に乗ってみたいと思っていたんですが、先代の雰囲気も感じることが出来る126は、めちゃくちゃ気に入っています。
――ところで、おいなり小島さんは昔から旧車が好きなんですか?
小さいころ、街中を走るスーパーカーとかを見るのが好きだったんですけど、気付くとなぜか、旧車ばかりを目で追っていました。
僕が住んでいる長野県は、草むらの中に廃車になった旧車たちが眠っている場所があるんですよ。雑誌でもよく取り上げられていて、世間からは“草ヒロ(草むらのヒーロー)”と言われていますが、それを見るのが大好きで、よく見に行っています。
――S N Sでも草ヒロのお写真を投稿されていましたね。
草むらの中に旧車が眠っていると、クルマが土に還っていく感じがして、時代の移り変わりを感じて感慨深いものがあります。
ピカピカの旧車ももちろん好きなんですけど「昔はこんなクルマが街を走っていたのか」って想像できるのが、ロマンチックじゃないですか。自分が見たことのない時代を感じられるんですよ。
――それで、自分も旧車に乗って運転したいという気持ちになったんですね。初めてフィアット126に乗った時はどう感じましたか?
23馬力と聞いていたのと、空冷エンジンというのもあり、かなり非力なんだろうなと思っていました。ですが、意外とトルクがあって、街や平地なら問題なく乗れそうな走りに、驚きました。
ステアリングも、後ろにエンジンがあるおかげなのか、重ステの割には軽くて、予想とは全く異なるものだったんです。
――フィアット126特有のクセはやっぱりあるんですか?
以前運転していた旧車はFFだったので、エンジン音が後ろから聞こえてくる違和感があったのと、操作性がやっぱり独特ですよね。FFとかFRとは違う、コマみたいな感覚というか、後ろにひっぱられる感じ……。
でも、それが面白く感じて、今までのクルマにはない挙動に“個性”を感じて気に入りました。
――フィアット126に乗って、私生活で何か変化はありましたか?
まず、気持ちの面で気楽になりました。今まで乗っていた旧車は、舗装されていない道を走ると、下を擦ってしまうんじゃないかと気を遣ったり、走っていると目立ち過ぎるから乗りづらいなと思っていたんです。
126になってからは、小さくてそこまで目立たないですし、身構えをせずに、ちょっとしたお出かけでも気楽に運転できます。細かいことを気にせず乗れる、とっても良いクルマです。
――フィアット126との生活の中で、印象的な出来事はありましたか?
前オーナーさんから126を受け取りにいった時の帰り道なんですけど、ガソリンが無くなりそうだったので、給油しに行ったら「この可愛いクルマは何ですか?」って聞かれたのがうれしかったです。
というのも、今まで乗ってきた旧車は、中年の人が懐かしむ感じで話しかけられることが多かったんです。『クルマの知識は無いけれど、ただ可愛いから声をかけちゃった』みたいな声のかけられ方だったので「そうか、それがコイツの力なのか!」と感動しました。
旧車イベントに行くと、大人よりも子供の方が興味を持ってくれるのもあり、愛嬌のある126でしか体験できないカーライフを堪能しています。
――このクルマならではの経験談ですね!ところで、おいなり小島さんは、お仕事もクルマ関係なんですか?
いいえ、家業で造園業をやっています。
他には、例えば川にいる魚の種類を調べて、データを提供したりなど、環境調査の仕事もしています。
――クルマへの愛情がすごかったので、てっきりお仕事もクルマ関係なのかと…。
クルマも大好きですが、昔から虫捕りや山菜を採るのが好きだったんですよ。たまたま、好きな事を活かせる仕事が出来ているんです。
――おいなり小島さんのお話を聞いていて思ったのですが…。旧車ってどちらかというと “原始的なモノ”に近い感じがしませんか? 多分、おいなり小島さんの中に、自然や昆虫みたいな“原始的なモノ”が好きっていう根っこがあって、『旧車に惹かれる理由』にも繋がっているのではないかと思うんです。
今言われて初めて気付きました(笑)。確かにそうかもしれません。旧車は生き物として見ている気がします。動物っぽいというか。
昔のクルマって、今ほどデザインの枠組みが決まっていないんですよね。例えば、動物を参考にしてデザインされていたり、クルマ以外からデザインを集めて作っていたものもあって、好みのデザインが多いんだと思います。
機械面でも、気圧の関係で調子が悪くなって、グズったりするので、生きているようで可愛いんですよね。
クルマの博物館に行っても、生き物的なデザインにグッとくるので、生き物として確実に見ていると思います。新たな気付きです(笑)。
――フィアット126も、おいなり小島さんにとっては生き物ってことですね。
そうですね。例えば、坂道でアクセルを踏み込む時も「頑張れっ!」って声をかけて応援しちゃいますし、ドライブ後は「よく頑張ったな!」って褒めちゃいます(笑)。僕にとっては、もう“愛犬”に近いですね。
旧車のイベントに行く時は、自分が楽しむ反面、数少ない友達に会わせてあげる感覚で連れて行っています。今後も動かせるうちは、一緒にずっと走っていきたいです!
おいなり小島さんの独特な感性に、まさにぴったりとハマったフィアット126。クルマという道具として運転しているのではなく、一緒にお出かけしている感覚で、まるで愛犬をなでるように運転しているような気がします。
これからも、フィアット126との“お散歩”ドライブを楽しんでください。
【Instagram】
おいなり小島さん
(文:秦 悠陽)
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