水溜まりが出来るほど泣いた経験も。憧れのシルビアS13を2台乗り継いで思うこと

  • 日産・シルビア(S13)の左サイド

小学生の頃から呪文を唱えるように、「シルビア、シルビア、シルビア……」と言い続けていたという「赤羽さん」。それを聞き続けてきたお父様が、高校卒業祝いとしてシルビアをプレゼントしてくれたのだそうです。

朝起きて窓の外を見ると、S13シルビアが家の側に止まっているのが信じられないくらい嬉しかったと話してくれました。

今回は、赤羽さん×S13シルビアのお話をお届けします。

―――赤羽さんにとって、小学校の頃から憧れのクルマだったんですね。

  • 日産・シルビア(S13)

そうです。僕が小学生の頃は、FD3SやBNR34などが新車で買えて、いわゆる昨今の旧車ブームで高騰しているスポーツカーを街でよく見かけた時代でした。

S13もそのうちの1台だったんですけど、このクルマはダントツにカッコ良くてね〜。前も後ろも横も、僕の好みど真ん中で、存在自体が輝いているといいますか(笑)。

近所のS13をチャリで偵察しては、インスタントカメラで写真を撮って、観察記録的な感じで保管するんです。

―――それ、対象が人じゃなくてよかったですね……。今なら、クルマでもギリギリアウトなんじゃないかと思います(笑)。

あはは(笑)!コンプライアンスだらけの現代だと、確かにアウトな気がしますね(笑)。まぁ……、時効ということで♪

―――そんなクルマが愛車となったわけだから、さぞかし嬉しかったのでは?

  • 日産・シルビア(S13)の運転席

そりゃあもう!嬉しいなんてもんじゃないですよ!信じられないというのと、ワクワクや嬉しさ。もう、どうしようって感じでした(笑)。

意味もなく運転席に座ったりとか、周りをウロウロしてみたりとか、終始落ち着きがなかったです。

―――一歩間違えると不審者的な……(笑)。でも、そのくらい好きだったからこそ、17年間も乗り続けているんですね。

  • ガレージで撮影した日産・シルビア(S13)

実は、このクルマは2台目のS13なんです。18歳の時に愛車に迎えた1台目は、若気の至りというかなんというかで、1年経たずして全損させてしまいました。

やっと好きなクルマに乗れたのに、何でこんな乗り方をしてしまったんだとショックでした……。なにより、自分の手で走れなくしてしまったと、精神的にかなり落ち込みました。それこそ、水溜まりが出来るんじゃないかくらい泣きましたね。

―――そうだったんですね……。今乗っている2台目を購入したのは、いつですか?

購入したのは、この事故から半年後です。その時に、高校生の時までに貯めた貯金を全部使ってしまったので、車検を取ったのは、さらに半年後です。だから、乗るまでに約1年ほどかかっています。

グレードはK’sで、色、生産された年数、仕様など、ほぼ同じ個体をご縁があって購入しました。

迎え入れた時は、嬉しいという気持ちよりも、親や周りの人に沢山迷惑をかけてしまったから、次はこんなことにならないようにするぞ、少しでも長く大事に乗るぞという、戒めの気持ちの方が大きかったですね。

だからこそ、19歳から現在に至るまでの16年間、維持できているのかなと。

―――今でも、1台目のことを思い出すことはありますか?

  • 日産・シルビア(S13)のリア

もちろんです。解体になる前に、外せるパーツを全て外しておいて、2台目の購入後に移植しているんですけど、その箇所が目に入る度に“クルマを大事に乗るということ”を考えさせられます。

一方で、2台目からは旧車との付き合い方を沢山学びました。自動車ディーラーで働いているんですけど、その時培った経験は、仕事にも活かせることが多いですよ。

―――例えば、どんなことですか?

  • 日産・シルビア(S13)のエンジンルーム

雨漏り、エンジン載せ替えなど、一通りの旧車アルアルは通ってきました。維持をしていくには何十年もそういうトラブルと向き合い、解決するという作業をしていくわけです。

そうすると技術的な知識が嫌でも付いていくんですよ。「あっ!これあの時の症状だな〜」「ほらやっぱり!」みたいな感じで仕事に活かせることもあるし、逆に、仕事で学んだことをS13シルビアなどの趣味のクルマに取り入れたこともありましたよ。

―――印象に残っているトラブルはありますか?

学生の時に、地元に帰省するために高速道路を走っていたんです。そしたら、突然エンジンが吹けなくなって、パワーがなくなっていったことがありましてね。エアフロの調子が悪くなってそうなっちゃったんですけど、こんな感じで失速していくんだと身を持って体感したのは良い経験でした。

あとは、文化祭の買い出し帰りにエンジンがかからないなんてことも……。燃料ポンプの故障が原因だったのですが、家の近くまで来ているんだから絶対にレッカーは呼ばない!とか言って、友達を呼んで押してもらったのは良い思い出だなぁ。

―――テストに出たら、詳しく説明出来ますね(笑)。

  • 日産・シルビア(S13)とローレル(C35)

まさにそれで、これって新型車に乗っていたら経験出来なかったことだと思うんです。

市場に出回る部品が無くなってきて、どんどん資金繰りが大変になっていくこと。S13を大切に乗るために足車として軽自動車を購入したものの、駐車場代などの支払いに追われまくって2台持ちの辛さを身に染みて理解したこととか、教科書や実習では教えてくれないことを学べました。

まぁ、社会人になってからはドリフトに挑戦したくなってきて、ドリフト用でC35ローレルを増車したんですけどね。3倍大変になったけど、色々な体験や経験、人生にとって大切な仲間との出会いもありました。

決してお金持ちではなかったし、なんなら苦しい時の方が多かったかもしれないけど(笑)、もしも乗りたいクルマがあるんだったら、上手く生活出来るレベルでカーライフを楽しんでみて欲しいなと思います。絶対に何か得られるものもあるはずだから。

―――最後に、赤羽さんにとってS13はどういう存在ですか?

S13に対する思いは、かなり強いと思います(笑)。イジるのも好き、乗るのも好き、所有するということ自体に喜びを感じさせてくれるクルマですね。

あとは、自分の好きなクルマとともに人生を過ごせるという幸せを与えてくれるクルマでもあります。

  • 日産・シルビア(S13)と遠くに見える山々

今後も、ずっと乗り続けたいと話してくれた赤羽さん。17年、18年と、まだまだ歳を一緒に重ねていく予定だと話してくれました。

【Instagram】
赤羽さん

(文:矢田部明子)

MORIZO on the Road