ホンダ シビックは恋人を越えた家族。大切にすることと、「一緒に月まで走る」ことを約束

  • ホンダ・シビック(FC1)

日々、魅力的なクルマの写真をSNSに投稿されるなにょんさん。充実したクルマ趣味とカメラ趣味の始まりは、シビックの購入からでした。今回はなにょんさん×シビックを中心としたお話です。

――SNS上で掲載されている写真は、どれも素敵なものばかりですね

ありがとうございます。綺麗な風景を見かけたら、つい「どこにクルマをとめ、どこから写せば心に響く写真になるか」を考えてしまいます。

  • ホンダ・シビック(FC1)オーナーのなにょんさん

――写真の話は、おいおい聞かせていただきますね。まずなにょんさんがクルマに興味を持ったのは、いつくらいでしょうか

クルマに興味を持ったのは運転免許を取得し、大学を卒業してからです。ただ、私が子供の頃、父が乗っていた(4代目)シビックセダンは大好きでした。今、私が(10代目)シビックセダン(以下、シビック)に乗っているのは、間違いなく父のシビックの影響です。

  • ホンダ・シビック(EF)

――親御さんの乗っていたクルマの影響って大きいですよね。クルマに興味を持つ前に運転免許を取得されたのは、就職のためですか?

なんとなく、ですね。今でこそクルマが必須な環境に住んでいますが、当時は公共交通機関だけで事足りる地域に住んでいたので、(運転免許を)取らなくても就職に問題は出なかったと思います。

当初はオートマチック車限定免許を取るつもりだったのですが、祖母に「いつかスポーツカーに乗りたくなるかもしれない」と、マニュアル車免許を取るよう勧められたんです。信じたわけではないのですが、その言葉が心に残ったのでマニュアル車免許を選びました。

――格好いい助言ですね。それでは次に、愛車歴を教えて下さい

4年前、群馬県に引越しし、しばらくは家族のフィットに乗っていましたが、やっぱり自分のクルマが欲しくなりました。父の影響もあって「買うならホンダ車がいいな」と思い、最寄りのU-Select(ホンダの中古車販売所)に行ったんです。そこで試乗車だったというブルーのシビックを目にし、スタイルや複雑な色合いに心を奪われてしまって……。

――それが今、お乗りのシビックなんですね

はい。けれど、このモデルのシビックはサイズが大きいじゃないですか。問題なく運転や維持ができるか悩んでいたところ、スタッフさんに「欲しいクルマがあるのに、買わない理由はなんですか?」って聞かれてしまい、「それもそうか」となぜか納得。

――納得しちゃいましたか

売り場を一巡し、一通りクルマをみた後に契約しちゃいました。今、思えば、悪いスタッフさんですよね(笑)

――いや、まったく(笑)。シビックを見たご家族の反応はいかがでしたか?

それが納車してからしばらくの間、「クルマを買った」って言えなかったんですよ。事前に相談せず、勢いで買っちゃったのが後ろめたかったんでしょうね。幸い、駐車場は実家から離れていたのでバレませんでした。

けれど、いつまでも黙っているわけにもいきません。思い切ってクルマを買った旨を伝えたら、ちょっと驚かれたものの、すんなりと受け入れてくれました。あらためてシビックをお披露目した際、「大きいクルマを買ったんだね」とか「格好いいクルマだな」って好意的な言葉をかけてくれたので、ホッとしましたね。

  • 購入当時のホンダ・シビック(FC1)

――初めてシビックに乗られた時の感想はいかがでしたか?

フィットや(社用車の)プロボックスとの比較になりますが、やっぱり速いなぁと。あと、思った通りに曲がってくれるのが印象的でした。

――なにょんさんは4年間、シビックに乗られています。シビックの魅力はどこにあると思いますか?

聞いちゃいます? 長くなりますよ(笑)

――お手柔らかにお願いします(笑)

まず、ボディの流れるようなシルエットが美しいですよね。ボディカラーはコスミックブルーメタリックというのですが、撮影する角度によって、印象が大きく変わるところがお気に入りです。

フロントのウィンカーがヘッドライトユニットから独立し、サイドマーカーを兼ねた位置にあるのも格好いい。このサイドマーカーが点灯していると、写真の印象がガラリと変わります。

足回りは心地の良い固さで、路面の情報をよく伝えてくれます。キャビンも広く、前席、後席のシートを倒せばトランクまで利用でき、横になって寝ることもできます。

――おぉ、次から次へと矢継ぎ早に。車中泊とかもされるんですか?

よく、していますよ。長距離を移動することも多いので、乗り心地がいいことと好燃費にはホント、助けられています。

――シビックの燃費はどれくらいで?

レギュラーガソリン仕様でリッター20km以上、出たこともあります。

――長距離移動の目的は旅行ですか?

旅行もありますが、SNSでやり取りしているホンダ仲間やシビック仲間、カメラ仲間に会いに行くことの方が多いですね。一度のお出かけで数日かけて、あちこちを走り回っています。

  • ホンダ・シビック(FC1)と雲海

――シビックに乗っているからこそ体験できた、思い出深い出来事を教えて下さい

数え切れないほどありますが、あえて挙げるならふたつ。ひとつ目は事故を起こしてしまったことです。

購入から2年経った大雨の日。いつも通り運転していたら、いきなりタヌキかなにかが道路に飛び出してきたんです。とっさに避けたまではいいのですがスリップし、シビックをガードレールに当ててしまいました。私は無傷でしたが、シビックの受けたダメージは大きく、修理代の見積もりが車両保険の上限を大きく超えてしまって……。

廃車を勧められましたが、もし、ここで手放したらシビックへの申し訳なさと自分の情けなさで、一生、後悔するなと思ったんです。「事故を起こしたのは私が悪いのだから、絶対にシビックは直す!」と腹をくくり、(シビックを持ち込んだ)販売店のスタッフさんに修理する旨を告げました。

修理代を少しでも安くあげるため、可能な限り自分でパーツを探して手配して持ち込み、なんとか直せる目処を立てました。そして事故から一ヶ月後、ついにシビックが帰ってきてくれたんです!

久々に握ったステアリングの感触や、慣れ親しんだ乗り心地に「やっぱり、これだ!」と、手元に帰ってきてくれた実感がこみ上げてきましたね。もう二度と事故を起こさないことと、月まで一緒に走ることをシビックに約束しました。

  • ホンダ・シビック(FC1)の運転席

――月まで一緒に走る?

まぁ、本当に月まで走ることは無理なので、月までの距離(約38万km)を一緒に走る約束ですね。(思い出深い出来事の)もうひとつは、デザイナーの方に感謝のメッセージを送ることができたことと、お返事をいただけたことです。

――たしか10代目シビックは、北米ホンダのデザインでしたよね

はい、デザイナーの方はロサンゼルスのホンダにお勤めでした。SNS仲間に「シビックのデザイナーの方に、感謝のメッセージを送るのが夢だ」って話したら、「送れるうちに送った方がいいよ」と、背中を押してくれたんです。たしかに会社を移られたら、連絡を取るのもひどく難しくなります。そこでホンダの窓口に相談したら、内容を確認した上で転送していただけるって話になって。

もちろん、メッセージは英文で書かなければなりません。それは承知の上ですが、ちゃんと感謝の思いを伝えられるか、不安ではありました。そしたらシビック繋がりの、大学で英語を教えているという先生が、メッセージの添削をしてくれるという話になりました。

――すごいトントン拍子。やっぱり行動を起こした人には運が味方しますね

ここまでお膳立てをそろえてもらったら、もう引き返せません。英語の辞書を手にメッセージを書き上げ、添削をしてもらった上で、先のホンダの窓口の方にメールをお送りしました。

実際にデザイナーの方に読んでいただけるかは分かりませんが、やれることはやったので、私としては満足していました。ところが数ヶ月後、ホンダの窓口の方からメールをいただけ、デザイナーの方からの返信メッセージが添付されていたんですよ!

詳しい内容はお話できませんが、私からのメッセージを喜んでもらえたようで、しばらくは天にも昇るような気持ちでした。ホンダの窓口の方、メッセージを添削してくれた先生と、多くの人に迷惑をかけてしまいましたが、メッセージを送って良かったと心から思いました。いただけた返信メッセージは一生の宝ですね。

――貴重な体験談をありがとうございます。なにょんさんはシビックの他にも数台、クルマをお持ちでしたよね

あっ、愛車歴の続きですよね。シビックが修理から帰ってきてから、「これ以上、ボディ(塗装)を痛めたくないな」って思うようになったんです。それで日常使いにフォルクスワーゲンのアルテオンを購入。その翌年、知人からポルシェの(2代目)ケイマンを勧められたので、アルテオンから乗り替えました。

 
  • フォルクスワーゲン・アルテオン
  • ポルシェ・ケイマン

――日常使いにケイマンですか?

はい、シビックは屋根のある駐車場を利用し、ケイマンは青空駐車です。ケイマンはとてもよくできたクルマで、日常使いにもまったく問題を感じません。

あとアルテオンの前に、ホンダのS660を購入しています。こちらは父が乗りたがっていたから買ったもので、普段は実家に置いてあり、自由に使ってもらっています。

――それはスゴイ。親御さんにクルマを買ってあげるなんて、なかなかできることではありませんよ

父は70歳を迎え、これまで色々とガマンしてきたと思うんです。もちろん私も乗りたかったのと、当時は生産終了がアナウンスされる直前で、底値だから買えたってのもあります。もし今だったら、とても手が出せませんね。

S660を納車してすぐに、父と日帰りで旅行に行ってきました。「(S660は)小さいけれど、格好いいね!」って、すごく喜んでくれて、買って良かったと、しみじみ思いましたね。あとポルシェは憧れのクルマだったと聞いたので、ケイマンにも乗ってもらっています。

  • ホンダ・S660

――聞いていて、心が温まります。けれど、その若さでクルマを3台の維持されるのは、経済的にキビしくないですか?

私は家計簿をつけていますが、自由になるお金の70%はクルマに消えています。カメラ趣味も併せたら85%くらいでしょうか。キビしいとは思いませんが、クルマとカメラ以外は贅沢ができない生活ですね。

けれどクルマに乗らず、カメラ趣味も持たない人生は、今ではちょっと考えられません。こんなに充実して楽しい日々を送れているんですから、大きくプラスな人生です。節制も苦じゃありませんよ。

――失礼しました。それではカメラの話題がでたので、そちらもおうかがいしますね。カメラ趣味は、どれくらいからですか?

昔から写真を撮るのは好きでしたが、デジイチ(デジタル一眼レフカメラ)は所有しておらず、スマートフォンでの撮影にとどまっていました。けれどスマートフォンでは、シビックの深みのあるボディカラーが描写しきれないんですね。それが歯がゆく、けれどデジイチの購入には踏み切れない状態が続いていました。

そのことを友人に話したら、お薦めの機種を教えてくれました。安くはありませんが、リセールバリューも高いというので、思い切って購入。早速、シビックを撮ってみると、ボディカラーの描写は、まさに理想の通り! ボディに写り込む風景まで、しっかりと描写されていたのには驚きです。なにより表現の幅が広く、特徴や機能を知れば知るほど、そして撮れば撮るほど写真が面白くなるんですよ。今では予定の無い週末もカメラを抱えて出かけ、シビックやS660、ケイマンの写真を撮りまくっています。

  • ソニー・α7
  • ポルシェ・ケイマン

――なにょんさんの週末が、どれほど充実されているかが伝わります。なにょんさんは積極的にSNSを活用し、オフ会等に参加されているように見受けられます。活動の指針や目的とかはありますか?

シビック、ケイマン、S660の魅力を引き出す写真を撮ること。それにくわえて、今は色んな人と会ってお話しし、クルマの写真を撮らせてもらうことも目的にしています。おかげでオフ会に撮影役として呼ばれることも増えてきました。ただ、撮影役は(オフ会に)参加されている皆さんとは離れて動くことが多く、あまりお話ができません。そこは痛し痒しですね。、

――クルマを撮影してもらった皆さんも、(SNS上で)喜んでいらっしゃいましたね。それでは最後になりますが、なにょんさんとシビック、ケイマン、S660との、それぞれの関係を教えて下さい

S660は気の置けない友達ですね。シビックにはない気安さがあり、私が落ち込んだ時、オープンの走行で元気づけてくれます。ケイマンは先に卒業しちゃう、親しい先輩でしょうか。そんなに長く維持はできないので、思い入れが過ぎないよう気を付けているのですが……乗るほど愛着が湧いてしまい、今から別れが辛いです。

シビックは恋人……いや、もう家族ですね。シビックは私の人生を良い方向に変えてくれました。この先もずっと、一緒にいて欲しい存在です。

  • ホンダ・S660とポルシェ・ケイマン
  • ホンダ・シビック(FC1)と港

土曜日は東のシビック仲間と会い、日曜日は西のオフ会で撮影役を勤めるなど、アクティブな週末を過ごす、なにょんさん。シビックと一緒ならば、長距離移動や車中泊も楽しいそう。きっとこれからも愛用のカメラを抱え、シビックで各地を訪問することでしょう。

【X】
なにょんさん

(文:糸井賢一)