“自分が自分に戻るため”のプジョー106から始まった、クルマと出会いとSNSが織りなす最高の愛車ライフ
親御さんの影響で、幼い頃よりプジョーを身近に感じていたレボさん。106を購入するも楽しすぎるため、落ち着いて乗れるグランドツアラーの増車を検討。色々と乗り継いでBMW M3に辿り着きます。今回はレボさん×プジョー106&BMW M3のお話です。
――レボさんはプジョー106とBMW(2代目)M3の2台を所有されています。やはり欧州車にこだわりがあっての選択ですか?
いえ、欧州車はもちろん好きですが、“欧州車であること”にこだわりはありません。国産車も好きですし、実際に(国産車を)所有していた時期もあります。
欧州車が好きなのは、両親の影響が大きいですね。306や406など、我が家はずっとプジョーを所有していて、子供心に「格好いい」と思っていました。そんな私を見て、母は「この子はクルマ好きになる」と感じたそうで、よくミニカーや自動車雑誌を買ってくれました。あと映画『TAXI』シリーズも欧州車好きになった要因ですが、こちらも母が見せてくれたものです。
――ずっとプジョーに乗られていたなんて、格好いいご両親ですね。それではレボさんの愛車歴を教えて下さい
一番、最初はトヨタの(8代目)スプリンターセダンです。大学に入って最初の夏に、自動車部の先輩の紹介で購入しました。納車した時点では、まだ運転免許証を取得していなかったので、しばらくは先輩が乗っていました。
同年の秋に免許証を取得。スプリンターではドライブのほか、自動車部の練習会でサーキットを走行していました。
程度が今ひとつだったこともあり、スプリンターは10ヶ月でお役御免。この頃はジムカーナに熱を上げていたので、当時、(ジムカーナで)主流だったトヨタ(5代目)スターレットをネットオークションで落札し、乗り替えました。
スターレットは軽い上にターボモデルなので速く、また小回りも効いて、とても楽しいクルマでした。また競技車両を参考にしてステッカーを貼るなど、ルックスを自分好みに仕上げる面白さも教えてくれました。
(大学)3年生になり、自動車部員としてステアリングを握るのは引退。以降は裏方に徹し、後進を支えることに決めました。競技参加を意識せず、自由にクルマを選べる立場になったので、前々から乗りたかったプジョー106への乗り替えを検討しました。
――106の他に、気になったクルマはありましたか?
アルファロメオなどのホットハッチも候補に挙がったのですが、最終的にはデザインが好みで、親しみのあるプジョーを選びました。
――ついに欧州車デビューですね。輸入中古車を選ぶことに、不安はありましたか?
予算の少ない大学生ですから、少なからずありました。ですがSNSでやり取りしていた欧州車ユーザーのみなさんからアドバイスをもらえ、90年代後半の欧州車の維持費は、同年代の国産車と比べてもさほど変わらないことが分かりました。またSNS仲間から、地域掲示板で「106のオーナーが買い手を募集している」ことを教えてもらいました。
維持費の不安も解消され、タイミング良く出物もあった。ここまで背中を押してもらえたんです、もう思い切るしかありませんよね。急ぎオーナーさんに連絡を取り、現車を確認。程度はそこそこ、価格も出せる額だったので購入を決めました!
――はじめて106を乗ったときの印象は、いかがだったでしょう
小さいのですがボディはとてもしっかりとしており、ドアを閉めた時の音が重厚なのが印象的でした。足回りは固めですが乗り心地は良く、欧州車の方向性がどんなものかを教えてくれましたね。
――この106が、今も所有される106ですか
いえ、今の106は2台目になります。(1台目は購入から)2年を経て走行距離が20万キロを超え、全体的に消耗品の交換時期を迎えました。そんな折、SNS仲間から「中古車販売店で、イエローの106が売りに出ている」と、教えてもらいました。
さっそく106を確認すべく、中古車販売店に行ってみました。ボディはとても綺麗で、全体的なコンディションも良好。加えてサスペンションにビルシュタインを装着する、願ってもない個体だったんです。タイミングとして乗り替えない手はなく、その場で売ってもらいました。
――レボさんはM3も所有していらっしゃいます。こちらはどういった経緯で購入されたのでしょう?
2台目の106を購入する前の話ですが、社会人になり、乗り心地に優れるグランドツアラーが欲しくなったんです。もちろん106に不満はありませんが、乗ると気分が高揚して疲れちゃうんですね(笑)
ネットオークションを眺めていると、出品されていたスバルのアルシオーネSVXに目がとまりました。ジウジアーロが手がけたデザインはとても美しく、価格も手に届く範囲。価格はつり上がると予測して入札したら、なんとそのまま落札。「これもクルマとの縁」と、現車確認を行わずに購入しました。
目のあたりにしたアルシオーネは工芸品の様なオーラを放ち、ロングドライブでも疲れない、抜群の乗り心地を提供してくれるクルマでした。ただいかんせん、購入時で生産終了から20年以上が経過しており、交換部品が入手しづらい状態でした。
アルシオーネを所有することで、SNSでも新たにアルシオーネのオーナー仲間ができました。彼らのおかげで維持ができていたのですが、燃料パイプが寿命を迎えた際、ついに交換部品が手に入らなくなってしまって……。
この時はワンオフでパーツを作ってもらい、しのぐことができました。けれど先のことを考えると、維持は厳しい。とても気に入っているクルマでしたが、手放す決意をしました。
106とアルシオーネ。方向性の異なる2台の所有は、とても理想的な環境でした。引き続きホットハッチとグランドツアラーの2台持ちを続けたく、アルシオーネの後釜を探しました。
――そこでBMWを検討されるんですね
はい。かつてはBMWを所有するなんて、考えていませんでした。けれどSNSのフォロワーにBMWオーナーが多数おり、彼らのポストを眺めていたら興味が湧いてきてしまって。オフ会などで様々なBMWに乗せてもらったところ、すべてのモデルがクルマとしての完成度が高く、「自分が望んでいるクルマは、BMWではないだろうか」と思うようになりました。
今、乗っているM3の前に、ホワイトの(3代目)323iクーペ、スポーツパッケージを所有していました。「山梨県の中古車販売店に、私の希望通りの個体がある」と、SNS仲間から連絡があり、訪れて試乗。あまりの乗り心地の良さに感動し、その場で契約してしまいました。
この323iクーペで十分に満足していたのですが、心のどこかにM3への憧れもあり、けれど価格の高さで候補から外していました。そんな思いをSNS上でつぶやいたところ、(2代目)M3のオーナーから「乗ってみますか?」とのお誘いがあり、ご厚意に甘えることにしました。
――やはり323iクーペとM3は違いましたか?
違うといえば違うのですが、(M3は)ちゃんと323iの延長線上にあり、その上でチューニングやセッティングが素晴らしい! 当初は「乗り心地は悪く、扱いにくいのではないか」と想像していたのですが、そんなことはありませんでした。
運転させてもらった直後は「いずれM3を所有したいけれど、もうちょっと323iでいいかな」と考えていました。しかしM3の中古相場が日に日に上がっていき、どこか焦るような、モヤモヤしていました。
SNSで繋がるM3オーナーから聞いた限り、維持費は同年代のBMWと変わらない。そして今すぐ動けば、予算にもギリギリ手に届く……。最終的にはSNS仲間からかけてもらった「20代の到達点に、(M3)を買うんだろ」との言葉で吹っ切れ、購入を決めました。
(2代目)M3の中古車価格はピンキリ。自動車の整備工場に勤める友人に相談して探したところ、予算内のM3が何台か出てきたのですが、いずれもボディカラーはブラック。ホワイトを希望していましたが、タマ数が少ないのでしょうね。ボディカラーは妥協し、そのすぐあとに見つかったM3を購しました。
――おめでとうございます。M3を所有されての感想は、いかがでしょう
走り、乗り心地、デザインと、自分にとっての理想を絵に描いたようなクルマです。正直、コンディションは今ひとつだったのですが、それは追々、直すことができるので気にしていません。これは主観ですが走っていても駐車していても、M3は夜の街がよく似合います。オーナーの所有欲を心から満たしてくれる一台ですね。
――それでは現在、乗られている106について、おうかがいします。一見してノーマルとたたずまいが違います。どれくらい手を入れましたか?
106は、2000年前後に流行した「ヨーロピアンカスタム」をテーマに手を入れています。少し前にサーキットでフロントバンパーを壊してしまったのですが、新しいフロントスポイラーを装着してからは「欧州車メーカーが参戦したラリーカー」を、カスタムの指針にしています。
ヘッドライトの丸目4灯は、実際にラリーカーで採用されたキットを取り寄せて装着しました。ホイール、ステアリング、シートにシートベルトも同様です。106はラリーカー風にステッカーを貼ったソフト仕様に見えますが、実はラリーカーに準じたハード仕様であることにこだわっています。
――なるほど、ヨーロッパのイベントで見かける車両みたいなカスタムですね
実は一緒にカスタムを考えてくれる、SNS仲間の助力も大きいんです。その人は106のスペシャリストで、ラリーカーという方向性も提案してくれました。色々なラリーカーの画像を見せてくれて、ステッカーも作ってくれれば作業も手伝ってくれる。ひとつのカスタムが終わり、「次はどうする?」って相談する時間は、この上なく楽しいですね。
――計画中のワクワクする気持ちが伝わってきます。M3は手を入れられていますか?
M3はホイールと吸排気にだけ手を入れています。いずれは外装にも手を入れたいのですが、今は106だけで手一杯で。これからどういう方向でカスタムするか、あれこれ考えて楽しんでいます。
――SNSを拝見していると、レボさんは多くのイベントやオフ会に参加されています。特に思い出深かったイベントやオフ会を教えてください
それなら全国からヨーロピアンカスタム車が集まる「ど真ん中ミーティング」ですね。昨年まではギャラリーとして参加していたのですが、たまたま、私のM3を目にしたヨーロピアンカスタムの大御所の方が、ホイールのチョイスを褒めてくれたそうなんです。憧れの人の言葉に、天にも昇るような気持ちになり、エントラント参加へのモチベーションが爆上がりしました(笑)
そして今年のイベントでは、ヨーロピアンラリーカーに仕上げた106でエントラント参加を果たしました。たくさんの人が「106の伝わってほしいところ」に反応してくれて、嬉しかったですね。
あとアルシオーネを所有していたとき、誕生30周年記念ミーティングに参加できたのですが、特別な節目を祝う場に立ち会うことができて感慨深かったです。
――同じ趣味のオーナーが集まるイベントは、楽しさもひとしおですよね。SNSを活用するにあたって、レボさんが心がけていることはありますか?
最初のスプリンターを除けば、なんらかの形でSNS仲間がクルマの購入に関わっています。人とクルマ、それとSNSが連鎖して素敵な関係が生まれ、豊かな経験を提供してくれます。どれかひとつでも欠けていたら、現状には至らなかったでしょう。人、クルマ、SNSへの感謝を忘れてはいけないと、常に心がけています。
――なるほど。それでは最後になりますが、レボさんと106、M3との関係を、それぞれ教えてください
うーん、服でしょうか。その日の気分やシチュエーションで服を選んで着飾るように、2台を使い分けています。
106は私の好みを凝縮した、自分が自分に戻るためのクルマ。服でいえば遊びたいときに着るカジュアルですね。M3は自分がクルマに求めている要素をすべて備えた、格好いい大人に背伸びさをせてくれるクルマ。服でいえば、気持ちを引き締めてくれるスーツです。2台を所有するスタイルをくずすつもりは、当分、ありません。
106とM3。異なる方向性の両車を乗り分けることで、日々に潤いとメリハリを作り出すレボさん。これからも多くのSNS仲間に囲まれ、互いに声を掛け合いながら、充実したクルマ趣味を続けられるのでしょう。
【X(Twitter)】
レボさん
(文・糸井賢一)
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