CX-5が、久しく忘れていた、クルマを操る楽しさや撮影の楽しさを思い出させてくれた



かつてはスポーツカーが好きで、3台もの日産・フェアレディZを乗り継いだ「カエル。さん」。しかし、まったく違うクルマに乗りたくなったことと、移動の快適さを重視するようになったことで、愛車の遍歴はガラリと変わります。今回はカエル。さんとマツダCX-5のお話です。

――最初に、カエル。さんがクルマ好きになったきっかけや経緯を教えください

子供のころは大のゲーム好きで、初代『グランツーリスモ』を遊んでいるうちに、実際のクルマに興味を持ち始めました。

最初は国内外のレーシングカーやスポーツカーの格好良さに惹かれ、次第にレースが面白くなり、テレビで放送されるF1やル・マン24時間レースを視聴。全日本GT選手権を観戦するべく、富士スピードウェイに通うようになりました。

――お住まいは静岡県とのこと。富士スピードウェイへ通うには、絶好の環境ですね。カエル。さんは現在、マツダの「CX-5」に乗られていますが、これまでの愛車歴は、どのようなものでしょう

初めてのクルマは5代目フェアレディZで、22歳の時に中古で購入しました。翌年に5代目フェアレディZバージョンニスモ(以下、Zニスモ)に乗り替え。2年後、6代目にZニスモが登場したので乗り替えました。1台目のZニスモは中古でしたが、2台目は新車購入しました。

――今のCX-5からは想像できない遍歴ですね

全日本GT選手権を観戦していたころ、憧れていたのは日産・スカイラインGT-Rでした。免許を取得したのち、一度は購入を検討しましたが、新社会人に手が届く価格でもなく……。現実的に手の届く、シルビアや180SXなどの日産スポーツカーを探していたところ、目についたのが、5代目フェアレディZです。デビューから間もないわりに(中古車価格は)安く、見た目も好みだったので、勢いで購入しました。

初心者マークには不釣り合いなくらいハイパワー車で、慣れるまでは、とにかく慎重に運転しましたね。運転が上達するにつれ、ドライブやクルマを操ることの楽しさ知り、またZという車にも惹かれ、のちのZニスモ購入に繋がります。

――フェアレディZからCX-5に乗り換えたのは、どのような心境の変化があったのでしょう

実は2台目のZニスモとCX-5の間に、2代目スズキ・ジムニーシエラと3代目マツダ・アテンザを所有していました。

2台目のZニスモは5年間、乗り続けたのですが、ふとスポーツカー疲れというか、まったく方向性の異なるクルマに乗ってみたくなったんです。では、どんなクルマに乗りたいのか? 色々と悩み、検討した結果、辿り着いたのがスズキのジムニーシエラでした。

――ハイパワースポーツからコンパクトなオフロードですか、すごい振れ幅ですね。ジムニーシエラに乗ってみて、いかがでしたか?

未舗装路や雪道など、どんな悪路でも臆せずに進める走破性に驚かされました。これまで体験しなかったオフロードの楽しさを知り、行ける世界が広がったことへのワクワクが強く印象に残っています。

ジムニーシエラを所有していたのは4年ほど。当時、妻とまだ交際中で、互いの住まいが離れている、いわゆる遠距離恋愛でした。毎週のように送り迎えをしていたのですが、ジムニーシエラは本格オフロードで、乗り心地はお世辞にもよくありません。私だけが移動するときはいいのですが、妻を乗せての長距離、長時間の移動には申し訳なさがありました。

妻は私のクルマの趣味を理解してくれており、「好きなクルマに乗りなよ」といってくれていたのですが……。妻の疲労軽減と自身の楽しみ、どちらを優先すべきかなんて考えるまでもありません。もっと高い快適性を持ったクルマへの乗り替えを決め、いくつかあった候補の中からアテンザを選びました。

アテンザに乗っていたのは3年ほど。乗り心地に不満はなく、もっと乗り続けるつもりだったのですが、2022年の台風15号により住まいが被災。その時、アテンザも半ばまで泥水に浸かってしまい、廃車となりました。

――あの台風では、多くの地域が被災しましたね

ですね。地元の静岡県でも様々な被害が出ました。マツダの販売店で廃車の手続きを進めながら、乗り替えるクルマを担当者に相談。前年に2代目CX-5はマイナーチェンジが施され、新たに「ジルコンサンドメタリック」というボディカラーが追加されました。これが好みの色合いで、気になっていたんですよね。

足回りは硬めですが乗り心地は良く、またMT設定もあるなど、色々な理由からCX-5を選びました。本音をいえば北米向けSUV CX-50が刺さったのですが、日本での発売予定はなさそうなので、しかたなく諦めました。

――いかがですか、ここまでCX-5に乗ってきて

購入時、2代目CX-5は発売から5年以上が経っていました。改良が重ねられているということもあって、とてもバランス良くまとまっている印象です。コーナーでは高い車高のわりにロールが少なく、安定した姿勢で曲がってくれます。さっきも話しましたが足回りはしっかりとしていますが、段差の乗り越えなどで突き上げを感じることはありません。まるでスポーツカーみたいな感触です。

選んだエンジンはディーゼル、駆動方式は4WDで、太いトルクによりどんな登り坂でもグイグイと加速してくれます。流線形の美しいボディ、目力のあるヘッドライトと統一感のあるテールランプの意匠。自然と調和するボディカラー、国産SUVでは貴重なMT等々、気に入っているところは山ほどあります。通勤から日常使い、旅行、高速道路から林道まで、道を選ぶことなく快適に走ってくれるCX-5は、自分にとって100点満点のクルマです。

――CX-5でもオフロードを走られるんですか?

はい。さすがにジムニーシエラの走破性には及びませんが、それでも林道程度の未舗装路を走るには十分な性能を備えています。

高めの最低地上高、厚いトルクに4WD。くわえてオフロード・トラクション・アシストという悪路用のシステムを持っており、よほど荒れた道でなければ難なく走破してくれます。

CX-5は車高を下げる都市型のカスタムが多く、(自分みたいに)オフロード向けのタイヤを履かせるなどアウトドア型のカスタムを施しているオーナーは、珍しいんじゃないかなと思っています。

――乗り心地優先は奥様のためとのことですが、その奥様の反応はいかがでしょう

妻はクルマに詳しくないのですが「かっこいいクルマだね」と、いってもらえました。走行中、助手席で寝ていることもあるので、乗り心地には満足していると思っています。

――乗り替えたかいがありましたね。CX-5でのお出かけや旅行で、思い出深い出来事があったら教えてください

思い出深い、とは少し違うのですが……。私のお気に入りのドライブルートのひとつに、静岡を出発後、山梨、長野を経由して富山を見てまわり、能登半島をぐるりと回って戻る、というのがあります。昨年2023年の9月に、CX-5でも上記のルートを走ってきました。

能登半島は風景がとても美しく、海沿いを走っていると心身が癒やされます。本当に好きで、大切な場所なのですが、それだけに今年初めの能登半島地震はショックを受けました。現在、支援は募金に留めています。復興が進み、現地へ行っても邪魔にならないような時期が来たら、再びCX-5で訪問し、色々とお金を使ってこようと考えています。

――能登半島を大切にしたい思いが伝わってきます。それでは話は変わりますが、カエル。さんは素敵な愛車写真を多数、SNSに投稿されています。クルマの撮影を始めた経緯を教えてください

元々、クルマを撮ることに興味は無く、風景写真専門で撮っていました。風景写真のついでにフェアレディZやジムニーシエラといった当時の愛車を撮影していたら、楽しくなってきたんです。

CX-5に乗る5年くらい前から多忙となり、カメラから離れていました。その期間はアテンザに乗っていたため、写真はスマホで撮った1枚きり。しかも被災して泥だらけになった、お別れの写真です。「何故、撮らなかったんだろう、もっと撮ってあげていればよかった」という後悔があり、それがCX-5を撮影する原動力になっています。

SNSは「撮影のモチベーションを保つため、写真を出す場が必要だな」と思い、始めました。

――なるほど、写真の投稿ありきでSNSを始められたんですね。クルマを撮影することの魅力は、どの辺りにあるのでしょう?

クルマを撮るのは考える要素がとても多いと、個人的に感じています。クーペやセダン、SUVといったボディタイプによって得意な場所や苦手な場所があり、同じ場所でも天候や時間帯、クルマの置き方にタイヤの角度、全体を撮るのかクローズアップか、内装を撮るのも良いかもしれない、等々……。

無数の要素から、どれを優先して組み合わせたら魅力ある一枚が撮れるのか、いつも悩まされます。その難しさが、クルマ写真の面白さだと思っています。

――参考になります。カエル。さんはオフ会の参加や、SNSがきっかけとなったリアルの交流はされていますか?

フェアレディZやジムニーシエラに乗っていたころは、よくオフ会や交流会に顔を出していました。最近は年齢的なこともあり、リアルの交流にはほぼ参加していません。SNSでは若い方の活動を一歩引いて眺めており、これはこれで良いかなと思っています。

――それでは最後になりますが、カエル。さんとCX-5の関係を例えるなら、どのようなものでしょう?

「喜びをくれる存在」でしょうか。久しく忘れていたクルマを操る刺激と、写真を撮る楽しさを思い出させてくれました。出来る限り長く一緒にいられるよう、大切に乗っていきます。

奥様の身体を想い、CX-5を選んだカエル。さん。これからも美しい写真がSNSを飾るでしょう。復興を果たした能登半島とCX-5の写真の掲載、楽しみに待っています。

【X】
カエル。さん

(文・糸井賢一)

MORIZO on the Road