「WORKS」の名に恥じない。スズキ Kei Worksに乗り続ける理由



以前、トヨタ・アルテッツァRS200のオーナーとして愛車ライフに登場していただいたブラウンさん。今回はブラウンさんのもう1台の愛車を紹介します。

ブラウンさんの愛車、スズキ・Keiワークス(以下、Kei Works)は、1998年から2009年まで生産されたスズキの軽クロスオーバーSUV「Kei」のスポーツグレードです。6〜11型までのモデル展開があり、4輪ディスクブレーキやヘリカルLSD(2WD 5MT車)を標準装備。専用エアロやレカロシートを採用するなど、軽自動車の枠を超えた走行性能を持つクルマです。

今回は、そんなKei Worksとブラウンさんの12年にわたるカーライフを紐解いていきます。

――前回も感じたのですが、ブラウンさんは愛車の歴史や設計思想などを深く勉強されているなと思いました

クルマの歴史や背景を知るのが好きなんです。性能や系譜を知ることで、より愛着が深まりますから。

――確かに!では、愛車を迎え入れた経緯を教えてください

もともと、娘の大学の通学用に探し始めたクルマだったんです。通学距離が10キロ以上あったので、クルマ通学がベストでした。娘はATの「クリープ現象が怖い」という理由でMT車を希望していましたが、特別クルマ好きではありません。
そこで、私の趣味も兼ねたクルマにと、スポーティな軽自動車を探し始めたんです。

ただ、2シーターでは不便だったので「ABSやエアバッグを備えた4ドアの軽スポーツ」を探して、行き着いたのがKei Worksでした。

  • 2005年式。2WD、5MT、8型、パールホワイト(カラーコード Z7T)というブラウンさんの愛車

――Kei Worksの存在はいつから知っていたのですか?

デビューした当時から知っていました。スズキ ALTO WORKS(初代アルトワークス)のベースモデル「ALTO Sタイプ(CA71V型)」が最初の愛車でしたので「ワークス」と言うネーミングには特別な思い入れがありました。

――今の愛車に出会うまでに、苦労はありましたか?

ネットで探していたら、たまたま近所の中古車店が中古車サイトに出品していた個体を発見しました。2WDのFFで5MTの仕様です。しかも人気色のパールホワイトでした。その日のうちに現車を見に行き、その場で即決しました。

――即決!それほど状態が良かったんですね?

まだ入庫したてで、整備も何もしていない状態でしたが、前のオーナーさんがクルマ好きだったようで、とてもきれいに乗っておられました。気になるといえば、エンジンオイルの滲み程度だったと思います。この部分は納車前に修理してもらいました。

私が購入したあと、問い合わせが何件もあったらしいです。タッチの差で手に入れられたのは、本当に運が良かったですね。「ついにワークスの名がつくクルマに乗れた!」と感慨深かったです。

――ブラウンさんが感じる、Kei Worksの魅力とはどこでしょうか?

今のクルマにはない「特別感」ですね。スポーツモデルとして、ここまで作り込まれた軽自動車は珍しいと思います。780 kgの軽量ボディにターボが組み合わさることで、走りがとても痛快。上り坂でも力強く、運転が楽しいです。

さらに、実用性の高さも魅力です。専用レカロシートは長時間の運転でも疲れにくく、室内空間も意外と広いんですよ。リアシートは左右独立してリクライニングできるので、フロントシートを最前に寄せればリアシートの足元がとても広くなり、車中泊も快適にできます。

――では、気に入っている点は?

この個体が希少な点ですね。Kei Worksは6型からデビューしているんですが、7型と8型だけはエンブレムがブルーで、台数もそんなにありません。他は赤いエンブレムなんですよ。このクルマは8型なのでブルーのエンブレムです。わかる人ならわかるというポイントですが(笑)。

そういえばこんなことがあったんですよ。コンビニの駐車場で、知らない人から「軽自動車なのに後輪もディスクブレーキなんですね!(4輪ディスクブレーキ)」と突然声をかけられて、クルマ談義で意気投合したことがありました。

シルバー塗装のスピードメーターとタコメーター、水温計もあり、大型のルーフエンドスポイラーなど、スポーツモデルならではの装備も気に入っています。

この大きなスポイラーは機能的にも優れていて、走行時にルーフに沿って流れる空気をバックドアに流すことで、リアウインドウへの水滴やホコリの付着を防いでくれます。見た目も迫力がありますし、気に入っています。

――なるほど!では、ブラウンさんがモディファイした部分を教えてください

こだわりのポイントはやはりホイールですね。ALTO TURBO RS用の純正ホイールに交換しています。このホイールはエンケイ製ですね。ブラックパール塗装と切削加工が施されていて、よりスポーティな印象になりました。

また、SUZUKI SPORTのアルミペダルセットも装着しています。ペダルはサイズ感がちょうどよく、滑りにくいので運転しやすいですね。剛性感のある踏み心地と、金属ならではのスポーティーな見た目もグッドです。

――Kei Worksの持ち味を活かしながら手を入れている感じですね。他にもこだわった点はありますか?

SUZUKI SPORTショックアブソーバーセットやローダウンスプリング、ストリートマフラーも取り入れていますが、全体的に過度なカスタムはせず、Kei Works本来のバランスを活かした仕様になっています。

交換したといえば、ヘッドランプを7〜8年前に新調していますね。どうしても経年劣化でレンズが曇るので磨いていましたが、限界を感じて8型のヘッドランプを指定して取り付けてもらいました。ハロゲンランプなので価格もやさしく、ブルーリフレクターが標準装備されているところが気に入っています。

それから、リアワイパーも金属製から9型以降に装備される樹脂製のものに交換。樹脂劣化防止と見栄え向上のため、ブラックで塗装してから装着しました。

クルマ好きの人が見ると、8型に9型以降のパーツを組み合わせているのか、9型以降に8型のブルーエンブレムを取り付けているのか迷ってしまうかもしれません。でも、そこまで細かく気づく人も少ないでしょうね(笑)。

――自分なりの使いやすさを追求する姿勢が伝わってきます。愛車との思い出エピソードもお聞かせください

そうですね。もともとは娘の通学のために購入したクルマで、彼女の学生生活をしっかりサポートしてくれました。電車やバスの時間を気にせずにサークル活動に集中できたり、友達を乗せて出かけたりと、Kei Worksのおかげで快適に過ごせたようです。クルマ好きの学生から「クルマが好きなの?」と尋ねられることも多かったそうですね。

娘が卒業してからは、私の趣味車兼普段使いのクルマとして活躍してくれています。
遠出をしても疲れにくく、長野県の白樺湖までドライブしたこともあります。標高1700~1800 m 地点まで走りましたが、パワー不足を感じることなく、余裕で登りきれました。このクルマのパフォーマンスの高さをあらためて実感しましたね。

――頼もしい相棒ですね。とはいえ、12年という年月のなかでトラブルに遭遇したこともあったのでは?

そうですね、やはり経年劣化によるトラブルはいくつか経験しました。
特に印象的だったのは、4輪ディスクブレーキのリアが固着したことです。しかも左右で2度も起こってしまい、かなり大掛かりな修理が必要になりました。

加えて、エアコンのコンプレッサーが故障してしまったこともありました。
真夏の時期にエアコンが効かなくなると、さすがに厳しかったですね。もしかするとアルテッツァよりも修理の頻度が多いかもしれません(笑)。

――普段からこまめなケアを心がけていらっしゃると思いますが、メンテナンスについて具体的に教えていただけますか?

車検ごとに下回りのフロアパネルや足回り、ブレーキローターの防錆塗装を施してもらっています。

そしてアルテッツァ同様に、走行後はまめに拭き上げるようにしています。特に雨天のドライブ後は、ボディやガラスに水滴のシミを残さないように拭いています。まあ、こうして掃除しているとついつい、時間を忘れて洗車並みの作業になってしまったりするんですけどね(笑)。

エンジンオイルは、状況に応じながらですが、3000 kmを目安に交換。2回に1回はエレメント交換もしています。

そうですね。共用部品が多いので、しばらくは部品供給の心配は少ないと思います。
ただ、外装部品は専用のものが多く、入手しづらくなるのではと気になっています。できるだけ長く部品が供給されてほしいですね。

――維持するうえで重要なポイントですね。今後、Kei Worksとはどのように付き合っていきたいですか?

これまでどおり“過保護”にせず、しっかり乗っていきながら所有する喜びや走る楽しさ、愛車を眺める時間まで含めて大切にしていきたいです。

とはいえ、旧車といわれるクルマになりつつあるので、メンテナンスは欠かさず続けていきたいですね。今後はイグニッションコイル、スターターモーター、燃料ポンプなどの交換を予定しています。

かつては娘さんの学生生活を支えたKei Works。今はブラウンさんの相棒として、日常に馴染みながらも存在感を放ち続けています。

手をかけたぶんだけ愛着は深まり、乗るたびに「やっぱりこのクルマ」と実感できる積み重ねが、これからも愛車との時間をより豊かにしていくのだと感じました。

【X】
ブラウンさん

(文:野鶴美和 写真:ブラウンさん提供)

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