母親が乗っていたトヨタ・MR2 僕にとってはずっとそばにいてほしいクルマ


「初めてのマイカーは、高校卒業後に大学の通学用として叔母からもらったダイハツ・ムーヴラテでした。」そう話してくれたのは、現在は2台の愛車たちとカーライフを楽しむ、もやしさん23歳。

ムーヴラテに乗り始めて1年後、ずっと乗りたかった2012年式のトヨタ・86 (ZN6型)を購入し、さらに1年後にはセカンドカーとして1994年式のトヨタ・MR2 (SW20Ⅲ型)を購入したと言います。

MR2を購入するに至ったのは、2つの偶然が重なったからだというが、一体どんな経緯だったのか、MR2にフォーカスを当ててお話を伺いました。

今回は、MR2×もやしさんのお話です。

――MR2の購入は元々決めていたことなんですか?

それが、最初は全く計画していなかったんです。僕が生まれる前に、母がMR2に乗っていた話を聞いていたので、存在自体は知っていたんですが…。

僕の中で旧車って、維持費なども込みで手が届かない認識があったのと、ましてや86が既にあったので、最初はあんまりMR2に興味は無かったんですよ。

――そんな中、気持ちが変化したのは何故だったんでしょう?

実は、GAZOOのある記事を偶然拝見したのがキッカケだったんです。
大学生の時、バイトに明け暮れていたんですが、隙間時間にひたすらネット記事ばかり見ていた時があって。

それで、たまたまMR2の記事「21年前にさほど興味なく購入したトヨタMR2、今では肌に馴染んだ相棒」を見て、すごく素敵でカッコ良いなって惹かれたんですよね。

それで、母が昔乗っていたこともあって急に気になり出して「どのくらいで売られているんだろうか?」ってすぐにネットで調べたんですよ。そしたら偶然、思いの外安くMR2が売られていて、そのまま販売店に電話して購入する運びになったんです。

記事を見てから3日後に契約をしたので、本当に即決という感じでした。

  • もやしさんのお母様のMR2

――そこまでもやしさんの心を動かしたのは、何だったんでしょう?

見た目がカッコ良かったのももちろんですが、母が乗っていたクルマに自分も乗れるのって、なんか良いなって思ったんですよね。
母が乗っていたのは僕が生まれる前なので、全く乗ったこともないクルマだったんですけどね。今ではすごく気に入る結果となりました。

――納車日まではどんな心境だったんでしょう?

点検整備に時間がかかって、2ヶ月くらいの期間があったんですが、もう待ちきれないといった感じでしたね(笑)。

ネットでMR2の動画をめちゃくちゃ見たり、今まで知らなかったⅠ型からⅤ型までの違いを調べたり、家には母が持っていたカタログがあったので、それをひたすら見ていましたね。

あと、このMR2は購入時に純正色じゃない色で全塗装してあったのでカラーコードを調べたりもしました。結局、今でも定かではないんですが、多分70スープラの純正色なんじゃないかなって推測しています。

――ボディカラーは結局のところ気に入ったんでしょうか?

正直、写真で見たときは変な色だなって思って、後から自分が好きな色に全塗装すれば良いか程度に思っていたんです。

でも、いざ乗ってみたら他にはない色だなって気付いて、昼と夜とで印象が変わるのも面白くて「これもありだな」って思ったんですよね。今では塗装がダメになるまでは乗りたいと思っています。

――MR2に初めて乗った時のフィーリングはどうでしたか?

予想していたより乗りやすいと感じました。ネットで書かれているほどミッドシップだから乗りにくいとかも思わなかったです。エンジン音も純正のマフラーがすごく良い音だなって感じましたね。

ただ、初めて首都高速を利用した時は怖かったです。千葉で納車されて、首都高速を走ったんですが、道もわからないし、すごく怯えながら運転したのを覚えています(笑)。

あとは、旧車という点でしょうがないんですが、ステアリングがセンターに合っていなかったり、他にもツッコミどころがあるクルマだなとも思ったんですが、それも含めて愛せています(笑)。

――1年少しMR2に乗ってこられて、何か気付きはありましたか?

86よりも、人から声をかけられることが多いことに気付きました。
クルマの性能云々より、そういう人との付き合いなどでMR2ならではの経験をしているなって日々実感することが多いんですよ。

例えば、僕は自動車ディーラーで営業をしているんですけど、営業中に「何に乗ってるんですか?」と聞かれてMR2と答えると「懐かしい!」って言ってくださったりするんですよ。MR2とお客様のエピソードを聞けたり、自分の話をしたりとか、お客様と近づけるコミュニケーションのひとつにもなっていますね。

――普段はMR2と86で乗り分けはしているんでしょうか?

通勤は基本的に86を使用しています。週に1回くらいMR2で出勤するんですが、壊れてしまったことがあるので、信頼度で言うとあんまり無いかなっていうのが正直なところですね(笑)。

先月も、MR2で帰ろうとしたら、オルタネーターが壊れて止まっちゃったりしたので、遠出もなかなかしづらいんですよね。
MR2って故障したとしても、すぐに直さなくちゃっていう気持ちにならないんですよ。僕はそのくらい気楽な接し方で付き合っています。

――それは「愛がないから」というわけではないんですよね?

もちろんです。そこに優劣はなくて、どっちも好きだしどっちも大事にはしているんですけど、86にも特別な思いがあるし、MR2も大切に思ってるしっていう感じで…。

――つまり2台体制でバランスが取れているってことでしょうか?

それです!多分、86だけだと物足りないって感じると思うんですよね。その物足りない部分をMR2が補ってくれている感じです。本当に僕にとって良いバランスだなって思っているんですよ。

――現状で一番気に入っているMR2のポイントってどこなんでしょう?

リトラクタブルヘッドライトもめちゃくちゃ良いですし、エンジンを後ろに積んでいるのも、他にはなくてめっちゃ気に入ってますね。個性的なのが何よりも良いと思います。

――もやしさんがMR2に乗っていて一番楽しさを感じる瞬間ってどういう時なんでしょう?

前にエンジンを積んでないので、ステアリングが軽くて、エンジン音が後ろから聞こえるのが本当に面白いなって日々感じています。

あとは、2人乗りってとても贅沢だと思っていて…。86は4人乗りですし、他のスポーツカーも4人乗りって結構あるんですけど、ゴルフバッグすら積めない2人乗りのスポーツカーを選んで乗っているのって、めちゃくちゃ贅沢だし、MR2が満足度の高いカーライフにしてくれてと思いますね。

――今のもやしさんにとってMR2は、どんな存在になっているんでしょう?

ずっとそばに置いておきたいおもちゃというか、大きいミニカーを持っているような、そんな感じです。所有欲も満たしてくれる1分の1サイズのおもちゃだなって思います。

直したくなったら直すっていうスタイルは、ちょっと贅沢過ぎるかなって自分でも思うんですが、2台持ちの贅沢さと気楽さを兼ね備えたカーライフが楽しいんですよね。
まあ、そばに居てさえくれればそれで良いっていう感じで、簡単には手放せない存在になっています。

MR2を購入したことを母親に伝えた時、2台体制のことや、支払いができるのかなど、すごく叱られたと話してくれたもやしさん。
母親を助手席に乗せると、喜んで懐かしがり、その後は怒らなくなったそうです。お母様は、同じクルマに乗ると決めた息子の気持ちが、どこか嬉しく、温かい気持ちになったのではないでしょうか。

【Instagram】
もやしさん

(文:秦 悠陽 写真:もやしさん提供)