スタイリッシュな希少オープンカーで風を感じながら走る優雅な時間 トヨタ・MRスパイダー(SW20改)
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トヨタ・MRスパイダー(SW20改)
1989年に登場した2代目MR2(SW20型)をベースに、トヨタテクノクラフトが製造したトヨタ・MRスパイダー(SW20改)。
リヤミッドシップエンジン+リトラクタブルヘッドライトという特徴を持つベースモデルに、ルーフを切り取ることでオープンボディという強烈な個性をプラスした特装車である。
総生産台数はわずか92台、現存数はさらに少ないレアモデルだが、その中の1台を所有しているのが『ひろみ』さんである。
「若い頃はAE86などに乗っていたこともあって、やっぱりスポーツカーが忘れられなかったんですよね。MRスパイダーも発売当時にその情報は知っていたんですが、オープンカーということと、その価格に躊躇して、結局手に入れることができなかったんです。そんな思いもあったので、7年ほど前に中古車店に並んでいたところを偶然見つけた際には、今ならこのオープンカーに乗るのも悪くないと考えて購入に踏み切りました。衝動買いみたいなものでしたから、家族に相談はしなかったんですけどね(笑)」
メーターに刻まれる走行距離はわずか2万6000km。前オーナーも2万3000kmほどしか走っていなかったというだけに、購入当初はエンジンがかぶり気味だったのだとか。ひろみさん自身も大切にしすぎるあまり、普段はほとんど乗らずにガレージにしまい込んでいるといったご様子である。
普段乗りする機会は少ないというものの、イベントなどには積極的にこのクルマで足を運んでいるそうで、このトロフィーは地元の大分県で行われたクラシックカーイベントで銀賞を受賞した時のもの。
フルノーマルで美しい状態を保ち続けることで、MRスパイダーの存在を後世にも伝えられればと考えているそうだ。
せっかくの機会なので、その貴重な個体の各所をじっくりと拝見することにしよう。
まずはなんといっても真横から見たときのスタイル。
SW20にはTバールーフのモデルもラインアップされていたが、Bピラーが存在しないことによる開放感の差は歴然。この開放感こそMRスパイダー最大の魅力であることは間違いないだろう。
ちなみに、ルーフを切除したことで低下したボディ剛性は、フロアに補強を加えることで確保しているそうで、その結果、車両重量はクーぺボディとほぼ変わらない1230〜1260kgとなっている。
エンジンフードもMRスパイダー専用デザイン。ヘッドレスト以降が盛り上がるロードスターカウルをデザインに取り入れたことで、より2シータースポーツを強調するフォルムを実現している。
そんなエンジンフードの下に収まっているのは3S-GEエンジン。ベースとなるMR2にはターボエンジン搭載モデルもラインアップされていたが、MRスパイダーはNAエンジンのみの採用となっている。スポーツカーとしては出力的に物足りないと考える人もいるだろうが、このMRスパイダーというキャラクターを考えれば、パワーだけが正義ではないのだと納得させられる。
組み合わされるミッションについても、5速MTモデルとATモデルが販売されていたが、この個体はAT車。ゆったりとした気分でクルーズするのもこのクルマならば“アリ”。むしろ、サーキットなどではなく海岸線やワインディングで優雅に風を感じながら走るのが、このクルマの正しい使い方といっても良いかもしれない。
そして、前型となるAW11から引き継いだMR2の特徴であるリトラクタブルヘッドライト。ライトを閉じている時の流麗なフォルムは、オープンボディとの相性も良く、スーパーカー然とした雰囲気を感じさせてくれる。
ちなみに、ボディサイドを取り囲むブルーのモールは純正品とのこと。シルバーのボディカラーにはこの配色がスタンダードだったという。
インテリアに視線を移すと、シートやドアの内張りにもブルーのファブリックを使用したアクセントが入れられる。この内装はSパッケージ専用に用意され、ボディを取り巻くモールのブルーとコーディネートされているというわけだ。
また、この個体はSW20としては5型となる1997年式のため純正ステアリングはエアバッグ仕様が装着されていた。
こういった細部にいたるまでフルノーマル状態を維持できているのは、前オーナーから大切に保管されてきたからに他ならない。
ちなみに、そんな車内を雨から守るための幌は、通常の折りたたみ式ではなく脱着式で、しかもギリギリのスペースに幌の骨格や収納スペースを確保しているため、意外と難解なのだとか。
「幌はない方がMRスパイダー本来のデザインなんですが、日本で乗る以上は雨対策も必要なので、残念ながら幌はなくてはならないんです。だけど可能な限り乗るときは開けて走っていますよ。ホンダ・ビートにも乗っていたこともあるので、慣れてはいますね」
シート上部を覆うコンパクトな作りの幌は、あくまでも簡易装備と割り切って製作されたようで、カタログ上には雨漏りすることも明記されていたという。
しかも、青空駐車となってしまっていた期間があったためビニール製のスクリーンは紫外線で焼けてしまっているそうで、折を見てストックしているパーツに交換する予定だとか。
そのいっぽうで、カーコーティング専門店を経営しているひろみさんが購入後すぐにボディコートを施し、以降もしっかりとメンテナンスを行っているおかげで、28年が経過している個体にもかかわらず、ボディのツヤは新車レベルをキープしている。
「自分もMRスパイダーの存在はすっかり忘れていましたが、実車を見て思い出す人、懐かしがる人、さらに新鮮に感じる人など反応も様々ですね。だからイベントに持って行ってもいろんな人が声をかけてくれるのは、レアなクルマに乗る楽しみかもしれません。レアなことに加え、目立つ存在ということもあり、中学2年生の娘は楽しんでくれるのですが、小学校5年生の娘は嫌がってしまっています…。そんなこともあり、家族からは手放して欲しいなんてことも言われますが、今のところ手放す予定はありませんね」
若い頃に憧れたクルマと偶然に出会い、オーナーになった今だからこそ、この希少な存在を末長く所有し、楽しみ尽くしたいと考えるのは、クルマ好きならば当然の話。これからもその美しいスタイルを維持しながら、風を感じて走り続けてください!
(文: 渡辺大輔 / 撮影: 平野 陽)
※許可を得て取材を行っています
取材場所: 大分大学 旦野原キャンパス(大分県大分市旦野原700)
[GAZOO編集部]
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