20歳の頃に憧れたトヨタ MR2。ボロボロの状態から復活させて、新たな思い出を重ねる
知り合いのクルマ屋さんをふらり訪れると、車検が切れているどころか、ボディが錆びて“ポンコツ”という言葉がしっくりくる状態で置いてあるクルマが目に入ったと話してくれた「moriさん」。
なんのクルマだろうと近くで見ると、それは1989年に製造された、初代MR2(AW11)だったということで、欲しいけど買えなかった当時のことを思い出したそうです。
今回は、moriさん×MR2のお話をお届けします。
――1989年というと、moriさんは何歳だったのですか?
平成元年だから……、20歳くらいでしたかね。僕の型は初期型の最後に造られたモデルになるんですけど、このクルマが登場したばかりの頃は、“日本初、ザ・ミッドシップ”や“ピュア2シーター、それだけでプライベートの香り”などの謳い文句で宣伝されていて、すごく興味をそそられたのを覚えています。
若かりし僕は、こういうクルマに乗ってみたい!とは思っていたんですけど、当時はとてもじゃないけど買えなくてね〜。だから、ボロボロでしたが、見つけた時は「あの時の!」と、うれしくなりました。
――moriさんが20歳の時は、どんなクルマを街で見かけたのですか?
そうですね〜。AE92型のスプリンタートレノなど、走りに振ったクルマも多かったですし、クルマがないと男はモテない時代だったから、プレリュードなどのいわゆるナンパグルマも多かったような気がします(笑)。
――ちなみに、MR2はどんなタイプだったのですか?
2人乗りだからなぁ〜。だから……
――そんな!いきなりナンパして2人は……! まだどんな人かも知らないのに!!
いやいや、落ち着いてください(笑)。2人乗りだと身構えてしまう女性も多いだろうし、“走りに振ったクルマ”だったかなと?言おうとしたのに(笑)。
――あっ、すみません。ついつい……。なんてたって、日本初、ザ・ミッドシップですもんね
そうですよ! ミッドシップ特性を最大限に生かす、軽量でコンパクト、尚且つポテンシャルの高いLASER α 4Aツインカム16バルブが搭載されているんですから。
実際に乗ってみると、今時のクルマよりは遅いかもしれませんが、1600ccにしてはトルクは十分だし、回頭性が高いので、コーナーを走るとクイクイ曲がってMR2にしかない面白さがあると感じます。
でも、実はカタログでは“スポーツカー”とは謳っていないんですけどね。
あとは、Tバールーフも最高で、開けて風を浴びながら走ると、すごく気持ちいいです。
――おぉ! いいですねぇ! ちなみに、冒頭でボロボロだったと伺いましたが、公道復帰までの道のりはどんな感じだったのですか?
なかなか出てこないパーツがあったので、それを見つけるのに手を焼きました。七宝焼のエンブレムなんかは割とすぐに見つかったんですけど、ライト下に装着する、定規のような形をした部品がなかなか見つからなくてね〜。
必要ないんじゃないか(笑)なんて思ったりもしたんですけど、ここが無いと歯抜けみたいになって不恰好だから、最終的にはアメリカから取り寄せて塗装をして、何とか形にしました。
この部分にしろ、リヤスポイラーや樹脂パーツもなかなか出ないそうだから、大切にしなくちゃと思います。そんな感じで色々ありましたが、部品の調達さえクリアすれば、ボディの錆取り、オールペン、エンジンも無事にかかったし、あとは順調でした。
――旧車乗りの宿命というか、何と言いますか……。ちなみに、このボディは何色に塗装してあるのですか?
純正色の、スーパーホワイト2だか、4だったか……(笑)。とにかく、昔のトヨタの白で、ちょっと青みがかったのが特徴です。それこそ、僕が20歳の頃は、マークIIやクラウン、クレスタやチェイサー辺りのちょっと高級なクルマはこのボディカラーだったんです。
そう考えると、このクルマには“20歳の僕”の憧れと、その当時を思い出せる仕様が詰まっているのかもしれません。だから、あえてノーマルのままにしているとでも言いましょうか。
――例えば、どんな箇所を見ると当時を思い出しますか?
そうですね〜、今では見られなくなった灰皿やコインホルダー。毛足が長くてふかふかなカーペット、ダッシュボードに傾斜が付いていて、まるでコックピットのようになっている個性的な車内。昔使っていたMOMOのステアリング、100km/hを越えると「キンコン」と鳴り出す謎のシステム(笑)。リヤから見た時のゴツゴツしたデザインは色気があると思うし、言い出したらキリが無いくらい沢山あります。
あとは、改めてみると全長が4mなくて、すごく小さいこともかな。一応、ホイールを2インチアップして16インチにしているのですが、今では16インチのホイールを軽自動車に履かせることも珍しくないことを考えると、、時代の流れとともにクルマはどんどん大きくなっているんだなと感じます。
――確かに。何もかもが、どんどん変わっていっている気がします。ちなみに、今後はどういうカーライフを送りたいですか?
先ほどお話した通り、ノーマルのまま乗っていこうと思います。クルマは僕にとって重要な時間を過ごす場所だと思っているので、これまでの思い出を大切に、これからの思い出作りの場所として、大切にしていきたいと思います。
大切にしているがゆえにそれほど多くは乗らないということですが、だからこそその時間を大事に、楽しさを噛み締めながらハンドルを握っていると話してくれました。
(文:矢田部明子 写真:moriさん提供)
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