シビックタイプR(FD2)は、今だから選べた本気のスポーツセダン。二度と出会えない高回転型NAを味わう
「乗り始めたばかりなのに、ずっと一緒にいるみたい」と感じさせる愛車とオーナーに出会うことがあります。
SNSでカーライフを発信する「ジュン」さん(46歳)もその一人。愛車のホンダ シビックタイプR(FD2)は、乗り始めて約半年だそうですが、不思議と長年連れ添った雰囲気が感じられました。
今回は、そんなジュンさんとシビックタイプRとのカーライフをご紹介します。
――まずは、クルマ好きの原点を教えてください
7歳くらいの頃だと思います。私の叔父がS30Z(フェアレディZ)に乗っていて、助手席に乗せてもらったんです。エンジン音はもちろん、シートに押さえつけられるような加速が衝撃的でした。
当時は、叔父のような大人になりたいと憧れていました。S30Zと叔父が重なって見えたからかもしれません。「力を制する余裕」みたいなものも含めてカッコいいなと。
――そんなジュンさんが、これまでに乗ってきたクルマを教えてください
最初に乗ったのは、カローラレビン(AE111)。それから、2001年に新車でRX-7(FD3S)を手に入れて、今も所有しています。結婚を機にスポーツカーからしばらく離れていましたが、子どもたちの手が少しだけ離れたこともあり、2016年にS660を。2025年にシビックタイプRを増車しました。
――シビックタイプRに興味を持ったきっかけは?
2007年にシビックタイプR(FD2)が発売されたことで、クルマのVTECに興味が湧きました。
それまで、ホンダといえばバイクしか乗ったことがありませんでした。20代前半の頃、ホンダの「CB400スーパーフォア」に乗っていました。このバイクにはVTECが搭載されていて、回転数によってエンジンの表情がガラッと変わる感覚が、とても刺激的でした。
クルマのVTECとは作動の仕組みが異なりますが、かえって「クルマのVTECはどんな感じなんだろう?」と興味を持つきっかけになりましたね。
――バイクとクルマ、VTECのフィーリングはどう違いますか?
CB400スーパーフォアのVTECは、とにかく元気な印象です。ターボっぽいフィーリングで、エンジンが「仕事してるぞ!」って感じ。ガツンとくる変化がありました。
シビックタイプRは、切れ味のある加速が印象的。滑らかに伸びていくなかで、音が切り替わる瞬間がしっかり分かります。
――それほど興味があったのに、なぜ購入しなかったのですか?
2007年の発売当初から気になっていたものの、ちょうど転職や子どもの誕生、家の新築と生活が大きく変わる時期で、自然と忘れてしまっていました。
年月が経ち、2022年に現行のシビックタイプR(FL5)が発売されたとき、気持ちが一気に戻ってきたんです。
FL5もかっこよくて本気で欲しいと思いました。しかし、考えるほど20代の頃の気持ちがよみがえってきて、やはりバイクのような高回転型のNAエンジンが良いと思うようになりました。
――実際に購入する決め手は?
もともと「チャンピオンシップホワイト」を探していましたが、偶然立ち寄ったショップに、すごくキレイな「ビビッドブルーパール」の個体が置いてあったんです。その個体がワンオーナーで大事にされていたのが素人でもわかるくらいのコンディションで、すぐに契約しました。
納車までは2ヶ月くらいあって、ソワソワしながらスマホが手放せませんでした。納車日当日も、スタッフさんの説明が全然頭に入らなくて(笑)。
これまでスポーツカーには数台乗ってきましたが、シビックタイプRはちょっと違うんですよ。エンジンをかけた瞬間、試されているような空気があるというか…思わず背筋が伸びていましたね。
――記念すべき初ドライブはどちらへ?
家族でラーメンを食べに。帰り道に金華山ドライブウェイへ寄り道をした際、路面が結構荒れているので、足回りの“洗礼”を受けました。純正の足回りはかなり硬めですね。家族には「壊れてない?」って言われました(苦笑)。
――シビックタイプRを迎えて、カーライフに変化はありましたか?
刺激が増えました。乗るときは“気持ちの切り替え”が必要だと思わされます。今の時代、NAで高回転型VTECというパッケージはすごく貴重!こんなクルマに乗れているんだと思うと、自然と感謝の気持ちが湧いてきます。
あとは、子育てが少し落ち着いたこともあるかと思いますが、ドライブのスタイルも少し変わり、妻と一緒に出かける時間が増えましたね。交際していた頃の空気に戻ったみたいな感覚もあります。「昔はこうだったよね」みたいな会話も自然と増えましたし、少しオシャレをして若い頃に戻った気持ちで同じ空間を楽しんでいます。私だけかもしれませんが(笑)。
――素敵!まるでタイムマシンのようですね。愛車に手を加えた部分は?
ホイール、マフラー、追加メーターくらいでしょうか。純正の雰囲気が好きなので、くどくならないように気をつけています。
いちばんのお気に入りはホイール。純正ホイールもとても好きですが、社外ホイールに替えたことで、クルマ全体の印象も変わりました。
ホイールを選ぶとき、詳しい知人に相談に乗ってもらいました。「FD2なら、スポーティさが際立つ6本スポークが似合うよ」とか「8本、10本になるとスタイリッシュに寄る」みたいなアドバイスをもとに、自分の中でしっくりくる形を探していきました。
今後は、ステアリングの交換も考えていて、昔から好きな「ナルディ」のステアリングにしたいと思っています。クラシカルなデザインが好みです。
――日々のメンテナンスで意識していることはありますか?
洗車はこまめにやっていて、3S(整理・整頓・清掃)を心がけています。自分のリフレッシュも兼ねた大切な時間です。
それから、運転も含めてクルマにやさしくあることを意識し、操作もひとつひとつ丁寧に。暖機運転は欠かせません。高回転までエンジンを回したあとにも、念のためクーリングの時間を取っています。
現時点では大きなトラブルはありませんが、近くにホンダ車専門のショップがあるので心強いです。ホンダ車は部品の確保が難しくなっているといわれているので、早めの対応を心がけたいです。
――「生き物のようだ」と感じることがあるそうですが、もしシビックタイプRを擬人化したら、どんなキャラクターになると思いますか?
頑固だけど、きちんと向き合えば応えてくれるタイプ。ちょっと職人肌というか、気を抜けない関係性が心地よかったりするのかもしれないです。
力士でいうと「千代の富士」みたいなイメージかもしれません。風貌はスマートだけど、芯の強さがある人。すべての所作に美しさと緊張感があるような。
――わかる気がします!
でもやっぱり、家族や家みたいな存在かな。いつも調子良くいてくれるとうれしいし、逆にちょっとした不具合があると心配になってしまいます。シートに座るだけで特別な空間をつくってくれる。なくてはならない存在です。
――そんなシビックタイプRと、今後どう過ごしていきたいですか?
なるべく今の状態を維持しながら長く乗りたいと思います。「今日をちゃんと走る」ことを積み重ねていけたらいいなと。「うちに来てくれてありがとう。遠回りしたけど、やっと出会えた。この先もよろしく」という気持ちでいっぱいです。
走るたびに気持ちが整い、大切な人との時間が増えていく。FD2との出会いは“今”だからこそだったに違いありません。
ジュンさんのアカウントには、愛車との日々やドライブの記録が綴られています。ぜひチェックしてみてくださいね。
【X】
ジュン0107さん
(文:野鶴美和 写真:ジュンさん提供)
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