知っておきたい「点検・整備」の大切さ!

あなたのクルマ、「乗りっぱなし」になってない!?

近年のクルマの耐久性は、ひと昔前に比べて格段に向上している。平成のモデル以降、特に平成2桁以降に発売されたモデルは、新車から2回目の車検を受けるまで、タイヤなど消耗品の交換以外、何もすることなく走れてしまうことも多い。

例えば、3~4万㎞走れば切れて当たり前だった「ドライブシャフトブーツ」について。これが10万㎞は余裕でもってしまう。

筆者の愛車は18万㎞を走破しているが、無交換で今だ健在。ゴム・樹脂パーツの耐久性が一昔前には考えられなかったほど伸びているのだ。メンテナンスフリー化が進んだことで、油脂類の交換サイクルも伸びている。平成初期まで2年毎の交換が必要だった冷却水のLLC(ロング・ライフ・クーラント)など「16万㎞または7年(TOYOTAスーパーLLC)」と、驚くほどの長寿命となっている。

それだけに「メンテナンスは不要」と錯覚しがちで、車検まで乗りっぱなしというユーザーも多いことと思われる。

しかし、クルマは万単位のパーツの組み合わせで成り立っている機械物。使用期間や使用形態に応じて各部の劣化が進み、性能低下が生じてくる。また、部位によってパーツの耐久性は異なり、使用状況によって寿命が縮まることもある。それゆえ、ある日突然、動かなくなることがあるのだ。

そして、早く対処すれば簡単に直せる些細なトラブルが、気付かずに放っておいたがために、それが引き金となって関連部位に次々と伝播して大きなトラブルへと発展……。ユーザー自身は元より、他人をも危険な状況に巻き込んでしまうことになりかねないのだ!

例えば、ボルトに緩みが生じ、放っておいたがために脱落。そのボルトで固定されていたパーツが足回りだった場合、「走りが不安定」に、ブレーキ系だった場合、「ブレーキの効きが悪化し最悪止まれなくなる」ことがあるからだ。
このため、ユーザー(使用者)には「適正な管理」と「安全の確保」が求められている。

愛車の正常な状態を、是非知っておいてほしい

どこのボルトがいつ緩むのか、どの部位がいつ壊れるかなど、神様でも無い限り判りはしない。そこで、必要になってくるのが第三者的な目で客観的に各部の状態をチェックしていく「点検」で、「道路運送車両法」によって「日常点検」及び「定期点検」を実施することが、ユーザーに義務付けられている。

必要な整備を行うかどうかといった「主導権」は、あくまでユーザーが握っているとされ、クルマの保守管理責任はユーザー自身にある(自己管理責任)。車重が1トンを超えるクルマに比べて遙かに小さく軽量な自転車でさえ、人にぶつかればケガをさせてしまう。それだけにコントロールを失ったクルマは走る凶器以外の何物でも無い。

この「点検」、本来は上記の通りユーザー自らが点検し、その結果に基づきパーツ交換や調整といった必要な「整備」を行う必要がある。

しかし「点検」は各部が正常な状態、あるいは規定値の範囲内に収まっているかどうかを確認する作業だ。的確に行うためには整備知識とそれなりの技能も求められるわけで、クルマのメカに詳しければまだしも素人の一般ユーザーには手が余る。それがゆえに、整備工場等に依頼することが一般的となっている。
つまり、整備業者はあくまでユーザーの代わりに作業をしているに過ぎないわけだ。クルマのユーザー自身が陸運事務所に持ち込んで検査を受ける「ユーザー車検」が認められている理由も、ここにある。

メカに弱いからといっていつまでも人任せでは万が一のトラブル時、危険な状態になる前に察知することができずに、不慮の事故や故障に見舞われることになりかねない。正常な状態を把握していなければ、何らかの前兆があったとしても気付くことができないからだ。

クルマの機構や作りにそこまで興味がないとしても、是非、愛車の正常な状態を知っておいてほしい。何か起きて、プロに修理を頼むとしても、どのような症状がどんな操作をしたときに発生するのか正確に伝えることができなければ、即、的確な整備を行うことはプロでもできない。
その結果、無駄に時間がかかったり修理費が嵩むことにもなりかねない。自身で「点検」や「整備」を行うことができないなら、定期的にキッチリとプロに依頼し、その際、積極的に質問することで、正常な状態とはどのようなものなのか少しずつでよいので覚えていきたい。

そして、あなたのクルマを走らせるとき、クルマの状態をできる範囲でいいので感じてあげてほしい。走行中の動きやハンドルの応答、ブレーキやアクセルを踏み込んだときの反応、異音や異臭といった、普段とは異なる現象が生じていないか、意識して走らせることオススメする。
メカに弱い人でも、除々にではあるが「違い」が分かるようになってくるもので、それが結果的に安全性の向上にもつながるからだ。

そこで本シリーズでは、起こりやすいクルマのトラブル・不具合、点検や整備の大切さについてお伝えしていこうと思う。次回は「突然来る恐怖!? 空気圧編」をお届けします!

(文:鈴木伸一)

[ガズー編集部]