ラストワンマイルをカバーするサービスとして期待されているバイクシェア

自転車を短時間貸し出すバイクシェアサービスが日中台といった東アジアで人気を集めている。日本では「ちよくる」(千代田区)など東京23区の9自治体で行なわれているバイクシェアサービス、中国ではMobikeやofoといった企業のサービスが人気を集めている。こうしたバイクシェア、電車や自動車といったパワーユニットを搭載した交通システムではカバーできない、ラストワンマイル(最後の1マイルという意味で、終端部などを意味する言葉)をカバーする交通サービスとして注目を集めている。

日本でも東京23区などでサービスが開始されているバイクシェア

ドコモが千代田区などと行っているバイクシェア用自転車。本体にGPSや通信機器を搭載している
ドコモが千代田区などと行っているバイクシェア用自転車。本体にGPSや通信機器を搭載している

二輪車のシェアリングサービスが中国などで大きな盛り上がりを見せている。特に自転車のシェアリングサービスは、初期投資が少ないこともあって、多くのベンチャー企業が取り組んでいる。

自転車シェアリングサービスの大きな特徴は、自転車をIoT(Internet of Things)と呼ばれる機器に見立てて、インターネット経由で制御可能にしていることだ。IoTとはモノのインターネットという訳語が当てられることが多いが、従来はインターネットに接続する機能を持っていなかった機器にインターネットに接続する機能を持たせ、センサーが取得したデータなどをインターネットにあるコンピュータに転送することで新しい使い方ができるようになる機器のことを意味している。

自転車がIoTになると、サービス企業のコンピュータからリモートで鍵をロックしたり、逆にアンロックしたりすることができるようになるし、GPSなどを利用した位置情報サービスを活用することで、自転車のおおよその位置を把握することができるようになる。

都内にはたくさんのサイクルポートがあり、スマホアプリで近くのポートを見つけられる
都内にはたくさんのサイクルポートがあり、スマホアプリで近くのポートを見つけられる
IoTで自転車の位置が管理されているので、スマホを使ってどこのポートに何台の自転車があるか把握できる
IoTで自転車の位置が管理されているので、スマホを使ってどこのポートに何台の自転車があるか把握できる

日本でも地方自治体などがこうしたバイクシェアリングに取り組んでいる。例えば、東京都23区の自治体(千代田区、中央区など)が行なっているバイクシェアリングは都心の移動をスマートに行ないたいユーザーによく知られている。自転車はポートと呼ばれる駐輪場に停めてあり、スマートフォンを利用して近くの駐輪場に停めてある自転車の予約を行なう。駐輪場についたらあらかじめ登録しておいた交通系ICカードをかざすか自転車に用意されているパネルを利用してパスコードを入れるだけで解除されて利用可能になっている。

スマホを使って予約をしたら、自転車本体のパネルにスマホやICカードをかざしたり、暗証番号を入力したりで解錠が行える
スマホを使って予約をしたら、自転車本体のパネルにスマホやICカードをかざしたり、暗証番号を入力したりで解錠が行える

料金は自治体によって違ったりするが、千代田区が運営しているちよくるの場合は月額料金がかからないプランの場合には最初の30分が150円、その後30分ごとに100円というリーズナブルな料金で利用することができる。なお、他の東京23区の中央区・港区・新宿区・文京区・江東区・品川区・大田区・渋谷区とは同じIDで利用可能で、相互に乗り入れができるようになっている。

ただし、こうした日本のバイクシェアの場合は、ポートからポートへの移動に限られている。そのため、そうしたバイクシェアの自転車がそこら中に放置されて歩道が埋まってしまう、そうした事態を防ぐことができている。

中国では当初人気を集めたが、放置自転車問題などで失速して立て直し中

こうした日本のバイクシェアリングはスマートではあるのだが、ちょっと乗って必要がなくなったら乗り捨てたいというニーズには応えられないという弱点がある。例えば、電車で買い物にいった帰りに荷物がちょっと重くなったのでバイクシェアで自転車を借りて家まで楽々と荷物を持ち帰りたい、そういう時にバイクシェアが使えれば便利だと誰もが考えるだろう。ただ、現状では日本のバイクシェアサービスでは必ずポートと呼ばれる返却場所に返却しなければならないので、家の近所にポートが無い限りはこうした使い方は難しい。

日本のバイクシェアでは、決められたサイクルポートでしか借り出しや返却ができない
日本のバイクシェアでは、決められたサイクルポートでしか借り出しや返却ができない

これに対して中国のMobikeやofoといった中国のバイクシェアのベンダは、そこをコペルニクス的発想で解決して利用者の指示を集めて急成長した。そのコペルニクス的発想というのは「最悪自転車がなくなってもいいのでどこでも乗り捨てできて、どこでも乗ることができる」というシンプルな考え方だ。これにより、利用者はどこでもバイクシェアの自転車を見つければ乗って、そしてどこでも乗り捨てることが可能になった。自転車も簡単な遠隔可能な装置を付けたぐらいの安価なモデルになっており、無くなれば補充するという考え方だ。これによりユーザーの利便性はあがり、そして自転車そのものも安価にしたためコストを抑えることが可能になり低価格でサービスを提供することが可能になり事業は急成長した。

しかし、駅前が1970~1980年代の日本のように放置自転車であふれるということにならないだろうか? という当然の疑問はわいてくる。もちろんその通りで、駅などにそうしたバイクシェアの放置自転車があふれる事態となり社会問題にもなってしまった。その結果中国のバイクシェアリングの企業の多くは失速状態にあり、業界をリードするMobikeやofoなどは日本のバイクシェアリングと同じようにポートを用意してそこにしか返せないようにするなど軌道修正を行なっている状況だ。

 ただし、こうした課題は急成長にはつきもの。最終的にはポートの数が増えれば、利用者が利用したいところの近くには必ずポートがあるという状態が実現されて解消される可能性が高い。MaaSの生態系の中でのラストワンマイルとしてバイクシェアの必要性は誰もが認めるところで、今後そうした問題を乗り越えて行けば、電車や自動車を補完するサービスとして普及していくことになるだろう。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road