小売りや宅配のあり方を変える「スマート物流サービス」

コンビニエンスストアにいくと店員さんが「いらっしゃいませ」と迎えてくれるのは今の日本では当たり前の光景だが、それが10年後には大きく様変わりしているかもしれない。現在の常識を大きく変えると考えられている「スマート物流サービス」では、サプライチェーンと呼ばれる、製造から小売りまでに製品が届けられるプロセスが自動化され、少子高齢化社会に備えて少ない人員でより便利なサービスを消費者に提供できると期待されている。

自動運転車に大きく変わる未来の宅配事業

宅配の世界が大きく変わろうとしている。既にIT化が進んでいる宅配事業。例えば、再配達がインターネットから申し込めるようになっているのはその最たる例と言える。以前であれば、近くの営業所に電話して持ってきてもらうという形になっていたが、今ではスマートフォンのアプリに登録しておけば、荷物の到着が通知されたり、不在の場合はそこから再配達をリクエストしたりということがカンタンにできるようになっている。その背後では、宅配事業者の配達員の持つモバイル端末と連動しており、再配達の指令が続々と端末に届く。そして配達が終了すれば端末で終了したことをマークしておくと、ユーザーのスマートフォンに通知が届く……このようなスマートな宅配が徐々に可能になっている。

そうした宅配事業だが、今後はMaaSと連携していくことで、さらに便利になっていく可能性がある。現在の宅配事業は、配達員が運転する車両を利用して、いわゆるラストワンマイル(最後の1マイルという意味で、末端を意味する)に対応している。そうした車両が自動運転車になることで、日本の宅配シーンは大きく変わる可能性がある。

宅配事業者のヤマト運輸とIT事業者のDeNAが昨年実証実験を行なったのが「ロボネコヤマト」だ。すでに2017年に藤沢市で実証実験も行われている。車両には自動運転車が利用され、言ってみれば動く宅配ボックスが配送先まで行き、配送先では宅配ボックスを取り出すような感覚で利用者が受け取る形になる。

ロボネコヤマトの車両。車内がロッカーになっている
ロボネコヤマトの車両。車内がロッカーになっている
暗証番号やスマホを使って解錠し自分宛の荷物を受け取る
暗証番号やスマホを使って解錠し自分宛の荷物を受け取る

宅配事業者にとって最大の課題は宅配サービスを行なう要員の確保と、働き方改革。近年では労働者の労働環境に関しての世論への注目も集まっており、従来のようにサービス残業で対応ということが難しくなっている。そこで、宅配のラストワンマイルをロボット技術で自動化する技術には大きな注目が集まっており、こうした取り組みは今後増えていくと思われる。それによりラストワンマイルのサービスから解放された要員を、例えば人と人の関わりが必要な顧客サービスに回すことができれば、顧客満足度を上げることも可能になる。

米国ではドローンを利用した宅配や無人コンビニの実証実験が始まる

こうしたロボット技術や自動運転を利用して物流を変えようという取り組みは何も日本だけではない。例えば、米国のAmazonが取り組んでいるのは、ドローンを利用した宅配の実証実験や、ロボット技術を利用した無人店舗への取り組みだ。

Amazonが米国で行なっているのはドローンと呼ばれる無人飛行機を利用した宅配の実験。米国のような広大な国土の場合、ラストワンマイルが、ワンマイルではなく、数マイルとなっていることは珍しくない。つまり、自動車でいくと結構な距離があって、時間も手間もかかる。そこで、ドローンと呼ばれるプロペラを利用して浮上する無人飛行機を利用して、宅配のサービスステーションからユーザー宅まで届けようという取り組みだ。

写真はヤマトホールディングスが実用化を目指している電動VTOL機のイメージ
写真はヤマトホールディングスが実用化を目指している電動VTOL機のイメージ

そしてAmazonが変えようとしているのは物流だけではない、Amazonは小売りの形も変えようとしている。同社が本拠地のシアトルなどで行なっているコンビニエンスストア「Amazon Go」では、無人のコンビニエンスストアの実証実験が行なわれている。現在は実証実験中ということもあり、スタッフが常駐する形で行なわれているが、あらかじめアカウントに登録しておくと、お店で買いたいものを選んでお店の外に出るだけで、買い物が終了する。その背後では、誰がどのアイテムを持って外に出たのかがずっとスキャニングされており、それらに基づいてユーザーのアカウントを利用してオンラインで決済が完了するという形になっている。こうした無人のコンビニエンスストアといった取り組みは、米国だけでなく、日本でもJR東日本が赤羽駅で実証実験を行なっているし、中国でも同じような実証実験が行なわれるなど世界中で進められている。

将来的にはこうした無人店舗に対して、自動運転車によるトラックを組み合わせると、店舗が無人であっても商品が次々に補充されて、買い物や決済も無人で行なえるという小売店が実現する。24時間営業のコンビニエンスストアなどでは特に深夜の従業員の確保が難しくなってきていると言われているが、そうした問題もスマート物流とMaaSを組み合わせることで解決していく可能性が出てくる。

将来的には、お店のほうからやってきて、無人で決済まで終わる、そんな時代になるかもしれない
将来的には、お店のほうからやってきて、無人で決済まで終わる、そんな時代になるかもしれない

[ガズー編集部]