今後数年で急成長が期待できるフードデリバリサービス、その正体は進化した「出前」
日本の古き良き伝統でもある「出前」が今急速な進化を遂げつつある。ライドシェアにいち早く取り組んだUber Technologiesが米国で始めたフードデリバリーサービス「Uber Eats」が起爆剤となり、ITを活用した出前のアウトソースが普及しつつあるのだ。これからはもう電話して注文する必要も無く、スマートフォンのアプリから注文したい料理を選んで注文ボタンを押すだけで、料理が玄関の前まで運ばれてくる、それが新世代の「出前」の形だ。
ライドシェアのUberが始めたUber Eatsが大ヒット、注目されるフードデリバリサービス
ライドシェアの草分け的存在であるUber Technologiesが始めたライドシェアに続く新しいサービスである「Uber Eats」が先駆けとなり、世界中でフードデリバリサービスが流行になっている。フードデリバリサービスとは、日本語で言えば「出前」のことだが、従来の出前とはいくつかの点で大きくことなっている。
日本のトラディショナルな出前は、出前を注文者に届けるための要員(ドライバーやライダー)はレストランに所属しており、利用する自動車やバイクなど配送用の車両もレストランが用意している。つまりドライバーを雇ったり、車両を購入したりするなどの初期投資が大きくなってしまう。しかも、仮に調理人が出前も兼ねるといった工夫をしても、混雑するお昼時や夕食時には調理の方が忙しく結局出前出来ない状態になるし、逆に専用のドライバーを雇ったとすればあまり需要がないお昼と夕食の間はただ遊ばせておくだけになって効率がよくない。このため、出前を行なえるレストランもあれば、そうではないレストランもあるというのが、フードデリバリサービス以前の「出前」が抱えていた課題だった。
だが、フードデリバリサービスがそうした伝統的な出前のシステムを今大きく変えようとしている。
- これまでの出前のシステムを変える新しいフードデリバリーサービス
フードデリバリサービスの正体は出前のアウトソース
フードデリバリサービスとは、ライドシェアと同じようにITを活用して出前を現代風にスマートにする仕組み。それを一言で言ってしまえば、フードデリバリサービスとはレストランから見ると出前のアウトソースということになる。フードデリバリサービスでは、サービス会社が契約しているドライバーやライダーがレストランに変わって注文者の元に料理を届けてくれることが、従来の出前と大きな違いになる。
- Uber Eatsの仕組み。利用者とレストランと配達パートナーの3つをマッチングさせる
フードデリバリサービスでは、注文者はスマートフォンに入っているアプリから自分の好きなレストランの食事を注文すると、その情報がサービス会社のコンピュータにインターネットを経由して送られる。注文はレストランに送信され、レストランはそれを元にあらかじめ設定されている時間内に料理を作る。それと同時にその完成予定時間にレストランから注文者のところに料理を配送する人員が募集される。配送を行うドライバーやライダーは、自分の自動車や自転車などを走らせながら、サービス会社から配送のリクエストが自分のスマートフォンに送られてくるのをまっている。そして配送のリクエストを受注すると、注文者、レストラン、配送ドライバーそれぞれの契約が成立することになる。あとは配送のドライバーがレストランへ向かい、注文者の元へ料理を届けるだけだ。
ライドシェアでは乗客とドライバーのマッチングだけを行なっていたのに対して、フードデリバリサービスでは、注文者、レストラン、ドライバー/ライダーの3者をマッチングするというのが大きな違いになるが、コンピュータがそれぞれのニーズをマッチングするという意味では、基本的に同じような技術だと言える。
注文者は多くのレストランの中から好きなお店を選ぶことができる、お店の側は効率が向上
フードデリバリサービスを利用する注文者のメリットは、シンプルに利便性の向上だ。かつての「出前」の場合には、まずは注文するレストランを決め、それから電話などで注文するという仕組みだった。これに対してフードデリバリサービスの場合にはスマートフォンのアプリから、様々な種類のレストランから検索して、複数の選択肢の中から好みのレストラン選択することができる。ここが従来の出前との大きな違いだと言える。
かつ、決済はオンラインで済ませることができる。出前のように到着したときに現金を用意しておく必要が無いため、支払う時になってお金が足りないとか、1万円札しかなくておつりがないとかいう面倒なことも避けられる。
お店にとってのメリットは、配送要員や、配送用の自動車やバイクなどを用意する必要がない点だ。そうした初期投資は不要になり、また出前の需要がない時にそうした設備が無駄になることも避けられる。
- Uber Eatsのアプリを立ち上げると、位置情報から近くのデリバリー可能なお店が表示される
- 好きなお店から好きなメニューを選べ、さらに和食や中華などカテゴリーで検索もできる
急成長を続けるフードデリバリサービス、2020年には全世界で14兆円の市場に成長の見通しも
こうしたフードデリバリサービスは各国で急成長を続けており、Uber Technologiesが始めたUber Eatsは米国だけでなく、既に日本でも始められている。現在は東京、横浜、大阪、福岡など大都市部が中心だが、将来的に認知が進めば周辺部などにも広がっていく可能性は十分にある。
- 日本でもサービスを始めているUber Eats。2018年11月現在、東京、横浜、大阪、川崎、京都、神戸、さいたま、名古屋、福岡で展開中
また、中国のフードサービスも急成長を遂げている。ソフトバンクグループとサウジアラビアの共同投資事業であるビジョンファンドも投資している中国最大級のフードデリバリサービスである「ele.me」は年間でアクティブユーザーが1.7億人、月刊のドライバー数が67万人、登録店舗数が350万件と急成長を続けている。ソフトバンクグループ CEOの孫正義氏は同社の2018年度第2四半期の決算説明会において、2017年に5兆円市場だったフードデリバリサービス市場は、2020年には14兆円に成長すると述べており、大きな潜在可能性があるとしている。年平均の成長率は実に42%を超える見通しだと孫氏が説明している通りで、今後多くの国でフードデリバリサービスが急成長していく可能性は高いだろう。
[ガズー編集部]
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