水素が燃料のごみ収集車がデモンストレーション! 九州各地で公共サービスのFCEV車両の実証実験が始まる
スーパー耐久でROOKIE Racingが水素エンジンを搭載したマシンを走らせ始めてから3年目となる。
「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」がST-Qクラスを中心に進められているが、水素エンジン車両についてはクルマづくりのみならず水素社会の実現に向けた「仲間づくり」としての目的もある。そのためレースでマシンを走らせるだけでなく、イベント広場でのさまざまな展示や体験コンテンツなどを通じて、水素への理解を広めるための活動が行われている。
とはいえ、これまではどのように社会に実装されていくのかイメージが湧きにくかったのも事実。そこで、ス―パー耐久第4戦が行われたオートポリスでは、実際に社会の中でどのようなモビリティに水素が活用されていくのか、簡易的ではあるがイメージ図が示され、実際に実証実験が進められている事例の紹介やFCEVの車両のデモンストレーションも行われた。
その説明を担当したのは、トヨタ自動車の副社長でもあり、「CASEの社会実装・普及に向けたスピードを加速し、輸送業が抱える課題の解決やカーボンニュートラル社会の実現への貢献を目指して」設立されたCommercial Japan Partnership Technologies株式会社(以下CJPT)の代表取締役社長も務める中嶋裕樹副社長。
説明の冒頭、中嶋社長からは「BtoG(ビジネス・トゥ・ガバメント)で水素社会をけん引する」との話が出たがどういったことなのだろうか。
それは「市民生活をサポートしているクルマたちが水素を燃料にしたクルマに置き替わったらどのような街づくりができるのかということを提案」していくことであるという。
実際に説明用のパネルには、ごみ収集車、救急車、医療車、給食配送車、公共交通/BRTなど、公共のサービスとして使用されているモビリティを見ることができる。
今回は、その中から水素を使ったFCEVで走行、また稼働するごみ収集車が展示され、実際にデモンスト―ションも行われた。
これは福岡県福岡市が今年度中の導入を目指しているという。福岡市は夜間にごみ収集が行われているが、従来のディーゼル車両では、塵芥装置はディーゼルエンジンから動力をとっているため、非常にエンジン音が大きくなってしまうという騒音の課題を抱えていた。
いっぽうでFCEV車両ではすべてをバッテリで駆動するため、そうした騒音の問題が発生しないということで、非常にメリットのある車両となる。
実際にデモンストレーションで音の違いを聞き比べることができたわけではないが、こちらの動画をごらんいただき、近所でごみ収集車の音と聞き比べていただきたい。
CJPTの担当者によると、収集車が1日でごみ収集のために走る一般的な距離は100km~120kmと言われているという。
それに対し、FCEVのごみ収集車は1回の水素充填で150kmの走行を見越してる。ごみ収集車は、走っては停まって、ごみを収集してということを繰り返す、車両としては過酷な使われ方をするため、実証実験を通じて性能の確認や改善を進めていことになるだろう。
また、成29年に九州北部豪雨により被災した、JR日田彦山線の添田駅(福岡県添田町)~夜明・日田駅(大分県日田市)間の約40kmについて、電車とバスをつないだ輸送システムBRT(Bus Rapid Transit)のバス車両として、FCEVのコースターが採用されるという。こちらは2023年夏に運行が開始される。
その他にも、九州の各地で
- 熊本市の熊本赤十字病院ではFCEV医療車が導入、今後救急車の導入も進める
- 福岡市が移動式発電・給電システム「Moving e(ムービング イー)」を世界初導入
- 福岡市でFCEV給食配送車を導入
- 福岡県内の業者とFCEV物流トラックの導入を検討(東京都や福島県では実証実験を行っている)
- JAFとダイレクトに給水素する車両の検討
など、九州で製造した水素を使いBtoGのFCEV車両導入が進められている。
そのために、各市役所や県庁などへの水素ステーションの設置などを呼びかけて行くという。
一般利用であると、水素が必要なシチュエーションは24時間に及ぶが、公共のサービスで使用される車両であれば、水素ステーションの営業時間内に給水素を終えておくことも可能となるため、より導入は現実的だ。
今後もスーパー耐久では新たな水素社会に向けた取り組みや発表が行われることになるだろう。その内容は随時お届けしていきたい。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:スーパー耐久機構、GAZOO編集部)
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