立川祐路選手も参戦!タイのクルマ好きとコラボした日本の名門チームがスーパー耐久富士24時間でデビュー

  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南の2W Yamaguchi GR Supra GT4 EVO

    2W Zoomies x GR Garage 山口・周南の2W Yamaguchi GR Supra GT4 EVO

国内モータースポーツの一大祭典として年々注目を集めるスーパー耐久の第2戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」。レース名通り24時間走り続けることとなるこの過酷なレースだが、このレースからデビューするチームがある。「2W Zoomies x GR Garage 山口・周南」だ。

チーム名に「GR Garage」とあったり、ドライバーラインナップを見てみると、Aドライバーには、カチョーン・チャラワノン選手、D、Eドライバーにはアンドルー・アヅンラヤビチット選手とウォーレン・アヅンラヤビチット選手というタイ人選手が登録されており、ますます気になるところ。

いったいどのようなチームなのか。参戦のきっかけやチームの運営、そして参戦の目的などについてチームに伺った。
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のピット

    2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のピット

チーム名にもあるGR Garage 山口・周南は、山口トヨペットとトヨタカローラ山口がそれぞれ運営するGR Garage 山口 CERUMO、GR Garage 周南INGINGのことだ。そしてGR  Garageの名前にもあるように、SUPER GTやスーパーフォーミュラに参戦するセルモとインギングと母体を同じくする。そんな名門レーシングチームがスーパー耐久に参戦することとなった。
実際にこのチームでは、インギングが中心となりチームの運営やマシンの整備などが行われているという。
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のカチョーン・チャラワノン選手(Kachorn Chiaravanont)

    タイの有数の財閥CPグループの執行役員でもあるカチョーン・チャラワノン選手

  • タイ10時間耐久レースでCP ROOKIE PRIUS CNF-HEV GR conceptのステアリングを握ったカチョーン・チャラワノン選手

    CP ROOKIE PRIUS CNF-HEV GR conceptの上でモリゾウ選手と笑顔をみせるカチョーン・チャラワノン選手

今回の参戦が実現したきっかけは、Aドライバーのカチョーン選手が日本のレースへの参戦を希望していたことだという。このカチョーン選手は、2023年12月にタイのチャーン・インターナショナルサーキットで開催された10時間耐久レース「IDEMITSU SUPER ENDURANCE SOUTHEAST ASIA TROPHY 2023」に参戦した「CP ROOKIE PRIUS CNF-HEV GR concept」でもドライブしている。
タイでも屈指の財閥であるCPグループの執行役員であるカチョーン選手について、このレースに一緒に参戦したモリゾウ選手からも、「運転大好き」と紹介されるほどのクルマ好きでもある。
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のナニン・インドラ・パユーング監督

    SUPER GTへの参戦経験もあるナニン・インドラ・パユーング監督

そこで橋渡し役となったのが、以前日本でもレース活動を行いSUPER GTにも参戦経験のあるナニン・インドラ・パユーング選手だ。カチョーン選手と親戚関係だというナニン選手が、日本で親交のあったインギングに話を持ち込んだことで今回のコラボレーションが実現したという。
なお、ナニン選手はドライバーとしては登録されておらず、今回は監督として通訳も兼ねながらチームをけん引する。
  • 2W Yamaguchi GR Supra GT4 EVO
マシンは新車のGR Supra GT4 EVOで、5月8日の公式テストがシェイクダウンだったという。実際に納車されたのもその2週間ほど前だったというから1か月ほどで24時間レースを迎えることとなっている。
ただ、インギングではこれまでもインタープロトシリーズでGR Supra GT4を走らせており、そのノウハウを生かし準備を進めてきている。

とはいうものの、インギングとしてスーパー耐久に参戦したことはこれまでなく、耐久レースのノウハウや壊れやすいパーツなどについての情報は、埼玉トヨペットやトレーシースポーツなどさまざまなチームに協力をしてもらったという。
こうした、チームを越えた協力関係が見られるのもスーパー耐久の魅力の一つだろう。
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のタイからの研修メカニック

    日本のディーラーメカニックの他、タイから3名のメカニックを迎え人材育成も行う

また、このチームの目的の一つとして人材育成があるといい、関連するディーラーのメカニックが数名、さらにタイからも3人のメカニックがこの24時間レースの前後2か月に渡り、スーパー耐久やインタープロトといったレースの現場、さらにはディーラーでの研修などを行っているという。
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南の立川祐路選手

    2W Zoomies x GR Garage 山口・周南の立川祐路選手

そして、このチームには楽しみなドライバーが参戦している。それは昨年SUPER GTからの引退を発表した立川祐路選手だ。実は、立川選手は1998年と2000年の十勝24時間レースで総合優勝を飾った経験をお持ちだが、20年以上前の参戦のため「気分はルーキーです」と笑顔を見せる。

立川選手がGR Supra GT4を走らせたのはシェイクダウンとなった5月8日が初めてだというが、「普通に乗りやすいし、さすがはGT4車両なので最初から何の問題もなく走らせることができました」とリラックスした様子。

「チームもドライバーもスーパー耐久については初心者の寄せ集めで、1回テストしただけで最初のレースが24時間というのはかなり無謀ともいえるようなチャレンジだと思っています。だから勝った負けたというよりはきちんと24時間後のチェッカーを受けるのがチームの目標ですね。自分としてはナイトセッションで乗るのも久しぶりですし、スーパー耐久の柔らかい雰囲気の中で、本当に楽しんで走りたいなと思います」
  • 2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のドライバーと監督

    2W Zoomies x GR Garage 山口・周南のドライバーと監督

この2W Zoomies x GR Garage 山口・周南は、スーパー耐久には第2戦富士、第5戦鈴鹿、第7戦富士への参戦を予定しているが、実はタイにも別のGR Supra GT4が用意されており、現地のThailand Super Seriesへの参戦もインギングがメカニックを派遣しフォローしていくという。
かねてよりアジアへの進出を目指しているスーパー耐久にとっては、こうした国を超えた交流として活用されることは願ってもないことだろう。

近年、ST-XやST-Zなど、GT3やGT4車両が参戦するクラスが盛り上がりを見せ、さらにST-Qクラスという未来に向けた取り組みも行われているスーパー耐久。
国内の参加型の最高峰レースでありながらも、こうした海外からのドライバーやメカニックが参加することでその存在が海外に広まり、国際的に魅力的なレースとしてより人気が高まることを期待したい。

そうすることで、いずれはヨーロッパやアメリカなどの24時間レースとの交流が行われたり、世界的なスタードライバーが参戦してくれたら……、などと夢は広がるばかりの取材となった。
  • カチョーン・チャラワノン選手(Kachorn Chiaravanont)

    カチョーン・チャラワノン選手

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:TOYOTA GAZOO Racong、GAZOO編集部)
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