「楽しくてしょうがない!」。近藤真彦“選手”が水素エンジンのGRカローラで16年振りにスーパー耐久に参戦!

  • ORC ROOKIE Racingからスーパー耐久に参戦する近藤真彦選手
2024年のスーパー耐久第2戦として行われる「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」で、ORC ROOKIE Racingの水素エンジンカローラにマッチこと近藤真彦選手がエントリーしている。その近藤選手が5月25日の決勝レーススタート日に記者会見が行った。

富士24時間レースでは、毎年サプライズともいえるドライバーの参戦があるのも楽しみの一つ。そうした中、今年の一番のサプライズはスーパーフォーミュラを運営するJPR(Japan Race Promotion)の会長を務め、自身も日産系チームのオーナー、監督として参戦する近藤真彦“選手”の参戦だろう。

その参戦の経緯や、久々にドライバーとして復帰した感想などを語った記者会見の様子をお届けしていこう。

レースの醍醐味はヘルメットを被ってサーキットを走ること

  • 16年ぶりに24時間レースでスーパー耐久に復活する近藤真彦選手
本格的なレース参戦は2008年の十勝24時間レース以来16年ぶりという近藤選手。冒頭、今の気持ちを聞かれ「もうワクワク感しかない」と満面の笑みを見せる。

「さっきも往年のドライバーの方たちとお話をしてきたんですけども、いい歳してね、ヘルメット被ってなんでまだレースやってんのかなと、もうやめればいいじゃんとか思っていたんです。でもいざ自分がヘルメットを被ってこの歳で乗ってみたらこういうことなんだ!と。僕はオーガナイズをやったりとか、チームのオーナーをやったり、レース関係の仕事をたくさんやっているんですけども、やっぱり一番のレースの醍醐味は、ヘルメットを被って、ハンドルを持ってサーキットを走ることなんだなっていうのを改めて一昨日、昨日で感じまして、本当に楽しく週末を過ごさせていただいてます」

今回の参戦の経緯は、定期的にモリゾウ選手こと豊田章男会長と今後のモータースポーツの流れについて話をしているというが、その雑談の中で「マッチ、うちのチームでスーパー耐久を走ってみないか」という話から始まったという。

日産やニスモからも「ぜひ盛り上げてきてほしい!」という話があったり、日産のロゴの入ったスーツで参戦することもモリゾウ選手より「当然だよ!」という話があるなど、メーカーを超えた協力体制があったこともスーパー耐久らしいエピソードだ。

ちなみに、今回20年ぶりくらいにヘルメットもレーシングスーツも新調するにあたり採寸、「ウエストが2cm増えた」とはいうものの、抜群のスタイルは現役時代と大きな変化はないようだ。

言われなければ水素エンジン車だって分からないくらい完成度が高い

  • ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

    近藤真彦選手は水素エンジンを搭載するGRカローラをドライブ。ピットウォークの際には多くの“出待ちのファン”の姿が

今回近藤選手が乗るGRカローラは水素を燃料とする内燃機関のエンジン。その水素エンジンのマシンを走らせた感想については次のように語っている。

「僕が乗せてもらっているのは、もう相当完成されてきた水素のエンジンだなと思っています。1年、2年前は相当ご苦労されたんじゃないかなと思いますが、今では完成度の高いガソリンエンジンにも本当に匹敵するぐらいのパワーと音もそうですし、バランスも素晴らしく完成度が高いと感じています。

乗る前は水素で走るクルマなのでパワーは全然期待していなかったし、音も期待していませんでした。ところが、テストで乗ったら、もうガソリンエンジンと全く変わらないぐらいのパワーと音。あと、ちょっと車重が重いのでバランスも不安だったんですけど、1コーナーに入る時は100メートル手前でブレーキ踏んでもきっちり止まってくれるし、クルマのバランスは素晴らしいと思います。乗ったイメージとしては、これ水素のクルマだよって言われなかったらわからないぐらいの完成度だと思います」

モリゾウ選手は忖度なしに速い

  • ORC ROOKIE Racing 32号車水素エンジンGRカローラのドライバー

    ピットウォークで揃った32号車 ORC ROOKIE Racingのドライバー

今回ドライブするGRカローラはST-Qクラスに参戦しており、水素エンジンの研究開発が主な目的のためレースとしてのライバルは存在しない。ただし、チーム内では負けられないバトルが繰り広げられているようだ。
これまでも、モリゾウ選手と小倉康宏選手、ヤリ-マティ・ラトバラ選手のガチンコバトルは記憶に新しいところだ。

「いい年をしたおじさん同士がチーム内でいかに速く走るかということで、モリゾウさんに『俺より早く走れ』とみんな煽られています。このチームに参加したのは初めてなんですけど、さすがにトヨタの会長ですから『素晴らしい』『速い』っていうことを言っている周りの人がいて、何を忖度してるんだと思っていました。

でも、ぶっちゃけ、本当に速いんですよ。本当に驚きました。クルマに乗ることにすごく興味があって、それで勉強熱心で、本当に章男会長の速さに、村度なしに驚かされています。このレース中にあのタイムに追いつくかどうかっていうのは、ちょっとわからないですね。今、コンマ何秒か負けてますので」

僕は2シーターのクルマにこだわる

少しレースの話題からは離れるが、レース業界でさまざまな顔を持つ近藤選手に「若者のクルマ離れ」についても質問が寄せられた。

「僕、子供の頃からスポーツカーが好きなんですね。最近のファミリーの人たちはファミリーカーに乗りすぎだと思っています。逆にいうとメーカーが売れるからファミリーカーを作りすぎかなと。子供に車の絵を描いてもらうと、今の小学生、中学生ってワゴン車を描くっていうんですよ。僕らが子供の頃にはフェラリーとかカウンタックとかを書いたもんですけどね。

だから、もっともっと自動車メーカーにはスポーツカーとかツーシーターを出してもらいたい。そうすればクルマ離れもなくなっていくんじゃないかなと。もちろんファミリーカーは便利だけど、僕はツーシーターにこだわっていきたいですね。

楽しくてしょうがないので来年も乗りたい

  • ピットウォークで笑顔を見せる近藤真彦選手
記者会見という形だったため少しフォーマルな雰囲気がありながらも、何度も「楽しい」と発言していた近藤監督。早くも来年も出たいという発言も飛び出した。

「日本にはスーパーフォーミュラ、SUPER GT、スーパー耐久とスーパーの付くレースカテゴリーが3つあって、色々切磋琢磨して、日本のモータースポーツがすごく盛り上がっていけばいいなと思います。僕はスーパーフォーミュラのJRPの会長なので、1番盛り上がらなきゃいけないのはスーパーフォーミュラだと思いつつ、このスーパー耐久は本当に楽しい。

僕はもう今更スーパーフォーミュラには乗れないですが、こうしてスーパー耐久に参戦させていただき、自分で運転して、サーキットを1周、2周と走っていくのが楽しくてしょうがないです。もう早くレースがスタートしてくれないかなっていう気持ちです。できたらまた来年も、もうROOKIE Racingとはいわなくても、どこかのチームに乗せていただきたいなと思います」

これだけ往年のレーサーを夢中にするスーパー耐久。こらからも他のカテゴリーやメーカー間の垣根を超えた、スーパー耐久ならではのサプライズなドライバーの参戦を期待したい。

(文:GAZOO編集部 山崎)
 
MORIZO on the Road