マツダとスバルが「共挑」した再生カーボンがマツダ3のボンネットに。エアロの改良でダウンフォースも増加
11月16日~17日に富士スピードウェイで行われる「ENEOS スーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第7戦 S耐ファイナル 富士」で、マツダがスバルと共同で進める再生カーボン部品開発の第一弾となるカーボンボンネットをMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptに装着して登場した。
スーパー耐久のST-Qクラスに参戦するマツダ、スバル、ホンダ、日産、トヨタは、「S耐ワイガヤクラブ」というメーカーの枠を超え自由で柔軟な意見公交換をする会を組織し、「クルマやモータースポーツの未来を創っていく」というテーマ、そして「共挑」というスローガンの下、共同で技術的な課題解決やクルマのファンづくりに向けた活動を行っている。
その共挑の活動の一つとしてマツダとスバルは、スバルの航空宇宙カンパニーが航空機を製造する際に発生するカーボンの端材を使った再生カーボンパーツの共同開発を進めると第5戦鈴鹿で発表していた。
その際にも予告されていた通り、第7戦富士にはこの再生カーボンを使ったボンネットを、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptが装着している。
共同開発に向けて8月に契約が結ばれ、9月から開発がスタートしたというカーボンボンネットは、形状は以前使用していたボンネットと同じだという。
ただ以前のボンネットは亜麻素材とカーボン素材を複合的に使用しているのに対し、今回投入したボンネットは再生カーボンのみで造られており、1.5kgほどの軽量化になっているという(エアアウトレット部分は前回と同様)。
実際にカーボンボンネットの開発を手掛けた技術者によると、航空機用のカーボンでとても質のいいものである半面、加工には特別な技術も必要となるという。今回マツダは、まだスバルが実践していなかったオートクレーブ成形によりカーボン素材を成形しており、そうした技術的なフィーバックをスバルと共有することで、この再生カーボンの活用を進めていく。
またMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptは、ボンネット以外にもフロントバンパーとリアウイングも新たに開発してきている。
フロントバンパーも亜麻素材とカーボン素材が使われていたというがすべてカーボン素材となり、冷却ダクト拡大を取り入れた形状変更やスプリッターも追加していることで、ダウンフォースの量も増えているとともに見た目にも迫力がありカッコよくなっている。
そのフロントの空力の変化に合わせて、リアウイングも大型化し前後のバランスを整えている。
このエアロパーツ改良の目的は、フロントヘビーなFF車両であるマツダ3の4輪の接地荷重の増加とグリップを向上させることで、メカニカルな改良とあわせてブレーキング性能とコーナリング性能を改善させている。
このレースの前にも富士スピードウェイで走行してテストを行ってきているという。10月中旬に富士スピードウェイで行われたマツダファンフェスタで初のお披露目をして、その翌日に実際にこのエアロパーツを装着してテストを行った。そこでのデータやドライバーのコメントからも空力的な効果が実証できているそうだ。
先日の発表では、2025年シーズンにはフロントバンパーやリアウイングも再生カーボンを使うことが計画されている。
2022年の開幕戦で当時の丸本社長がマツダ3での参戦を公表し、その際に語った「スバルとトヨタとのガチンコバトルへの渇望」「2.2Lエンジンで300馬力のディーゼルエンジンの開発」という夢。
2022年の最終戦にデビューし、初期の頃はトラブルがあったり、フロントヘビーによるオーバーステアなど思うような走行ができなかったものの、2023年の最終戦にはその夢を達成することができている。
そして2024年は、エンジンの排気系や耐久性の改善、ロールセンターの適正化によるハンドリングの飛躍的な向上、カーボン再生ブッシュや超ハイテン材を使ったロワアームの新採用などにより、さらにその戦闘力を伸ばしてきている。
そして次なるアップデートとして新エアロパーツ投入をすることで、軽量化やコーナリングの走行性能向上などがこのレースから本格的に進められることとなった。
こうした改良の結果、2023年の第7戦富士の予選で記録した1分55秒404に対し、目標としては1分51秒台と3~4秒もの進化を目指している。
これは、スバルが走らせるSUBARU HighPerformanceX Future Conceptと同じような目標タイムであり、予選、決勝ともにどのようなバトルを見せてくれるのか楽しみだ。
未来に向けた「共挑」の次なる取り組みとともに、進化を続けるMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptの走りにも注目していきたい。
(文、写真:GAZOO編集部 山崎)
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