JAFの水素、電気、ロードサービスと1台3役の「次世代ロードサービスカー」が給水素の実証実験へ

  • JAFとトヨタ自動車が共同で開発した「次世代ロードサービスカー」

    JAFとトヨタ自動車が共同で開発した「次世代ロードサービスカー」


MIRAIや商用車などで普及が進められている、水素を燃料として発電しバッテリーに充電した電気でモーター動かして走行するFCEV車(燃料電池車)。走行時に二酸化炭素を排出しないことでカーボンニュートラルに貢献することが期待されているが、一方で燃料である水素を充填するステーションが少ないことが課題となっている。
また数が少ない上に、営業時間が日中のみであったり週末が休みだったりするために、利用者は常に燃料のことを気にする必要がある。

現状では水素がなくなってしまい動けなくなってしまうと、レッカーで水素ステーションまで移動して水素を充填するしかなく、いざというときの対処にも不安が残る。
その対策としてJAFとトヨタ自動車は、水素を充填できるロードサービスカーの開発を進めており、スーパー耐久第7戦が行われた富士スピードウェイで初公開された。

  • 車両解説に先立ち挨拶をしたJAF専務理事の野津真生氏と、トヨタ自動車の副社長でCJPT社長も務める中嶋裕樹氏

    車両解説に先立ち挨拶をしたJAF専務理事の野津真生氏(左)と、トヨタ自動車の副社長でCJPT社長も務める中嶋裕樹氏(右)

  • JAFの次世代ロードサービスカーの左側には水素の充填のためホースやスイッチがある

    車体の左側には水素の充填のためホースやスイッチがある

  • JAFの次世代ロードサービスカーの後部には給電するための設備を積まれている

    後部には給電するための設備を積まれている

  • JAFの次世代ロードサービスカーが搭載する通常のロードサービスのための設備

    通常のロードサービスのための設備

  • JAFの次世代ロードサービスカーはFCEVで水素タンクは車体下に積まれている

    次世代ロードサービスカーはFCEVで、走行に使う水素タンクは車体下に積まれている

「次世代ロードサービスカー」と名付けられたこの車両は、水素で動くFCEV車で、水素、電気を充填することができ、さらに通常のロードサービスも対応できるようにつくられており、1台3役の優れモノだ。実際にこの車両で、現在のJAFの出動要請の7割は対応が可能だという。
水素は100km、電気は50kmを走れる量を基本として充填を行うが、それぞれ16台分、19台分と連続しての対応も可能となっている。

水素は車体前方にタンクが複数本搭載され、FCEVの燃料とは別々の設定となっている。実際に次世代ロードサービスカーからクラウンFCEVに充填するデモンストレーションも行われたが、周囲の安全確認からホースの接続、1分30ほどの充填時間と、5分もあれば充填作業は完了する。想定としては到着してから、その現場を離れるまで10分間でのサービス提供を目指しているという。

給電の機能に関しても進化している。現状では載せている10kWのバッテリーから給電するというサービスカーが複数台導入されているが、この次世代サービスカーは、50kWの急速充電が可能でありさらに続けての給電をすることもできるため、作業性がかなり高まっているという。
それはこのクルマがFCEVであり高電圧を発生させるFCスタックがあることで、こうした運用が可能となっているわけだ。

しかし、実際にロードサービスで水素を充填するにはまだ法律関係でのハードルが高い。今回は特別な許可のもと取材陣との間に壁もなく、2mほどに近づいてデモンストレーションの様子を取材することができた。
ただし、現状の法律では「周囲8mは離隔」しなければならず、実際に街道沿いにある水素ステーションもこの基準に沿って建てられている。

もちろんこのJAFのクルマはその名の通りロードサービスをするためのクルマであり、周囲8mの離隔というのは現実的ではない。そのため、まずはこの車両の安全性や作業について国の省庁や県などの行政に対し説明を行い、実証実験を行うための許可が必要となるようだ。
現時点での予定では、2025年~26年に福島・東京で実証実験を、2027年には30万人規模以上の重点都市に各1台ずつの配備を検討している。

FCEV車両の台数が増えるためには、車両が増えることが必要なのか、水素ステーションの数が増えることが必要なのか、鶏が先か卵が先かという議論が行われることも多い。だが実は東京や福島では水素の充填渋滞が起きているところもあるという。

水素ステーションを増やすということは非常にハードルは高いが、こうしたJAFのロードサービスの一つとして水素を充填してもらえるということは、根本的な解決にはいたらないまでも一つの安心材料にはなるのは間違いなく、FCEV車両の普及に大きく貢献する可能性もある。
そのためには、まずは実証実験が順調に進み、いち早く配備されることを期待したい。

(GAZOO編集部 山崎)

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