クルマ好きを増やすために。TOYOTA GAZOO Racingが「GR KART」で目指す持続可能なモータースポーツ

  • TOYOTA GAZOO Racingが開発を進めている「GR KART」

    TOYOTA GAZOO Racingが開発を進めている「GR KART」

TOYOTA GAZOO Racingは、富士スピードウェイで開催されている「ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レース」の予選日の5月30日に、モータースポーツを将来にわたって持続可能とするための施策として、現在開発中の「GR KART」の概要説明とメディア向けの試乗会を行った。

「レーシングカート」というと、モータースポーツの入門、気軽にサーキットでレース気分を味わうことができる、家族で楽しめるなどといった印象を抱く方も多いかもしれない。
ただ実際には、レンタルカートのあるサーキットが多いわけでもなく、自ら購入して走らせるには多くのハードルがあるのも事実だ。
かつて日本国内でも盛んだったレーシングカートによるレースだが、競技人口が減少(現在はピークの半分程度)していく中で2004年にはヤマハが国産カートの製造を終了。以後は主にイタリア製など海外メーカーのレーシングカートが主流となっている。
レーシングカートの人気が衰えていったことは、景気の動向や趣味の多様化、クルマのステータスの低下など社会情勢と無関係ではないだろうが、実際に所有し、本気で楽しむためには下記のような課題がある。

・初期費用が高額(車両価格は約150万円)
・年間維持費(レース出場含めると初年度約250万円、以降も年間100万円超)
・保管場所・輸送手段の確保が困難
・整備や運転のハードルが高い

ただ、モータースポーツを自ら楽しむためには、“比較的”かもしれないがレーシングカートは経験しやすいのも確かだろう。

そこでTOYOTA GAZOO Racingは、現状のレーシングカートの課題を少しでも解決し、モータースポーツを楽しむ人を増やすためにレーシングカート「GR KART」の開発を進めている。
そのGR KARTの特徴をお届けしていこう。

手に届く価格と性能

  • GR KART

    TGRカラーにデコレーションされた「GR KART」

GR KARTのコンセプトは“徹底的にシンプルで低コスト”だ。フレームはトヨタが独自に新設計しロボットによる自動溶接を行う。素材も欧州製が採用する約30万円という高級クロモリなどを使用せず、低コストな素材でもで高い剛性と楽しさを実現できるとしている。

また独自の規格のワンメイクのため、セッティングは触れない構造となっており、メンテナンスにかかる時間も大幅に削減できる。
実際の価格は未定とのことだが、海外製のレーシングカートの数分の1程度には収めたいようだ。

  • GR KARTのフレームは適切な素材選択とロボットによる自動溶接でコストを低減

    GR KARTのフレームは適切な素材選択とロボットによる自動溶接でコストを低減

  • GR KARTの前方

    GR KARTのフロントタイヤやステアリング周り

  • GR KARTの後方

    GR KARTのシートやリヤ周り

  • GR KARTは走行中の接触対策に専用のカバーも用意されている

    「GR KART」は走行中の接触対策に専用のカバーも用意されている”

ファミリーカーに積載可能

通常のレーシングカートを積載するにはハイエースなどの大型の車両が必要だが、この「GR KART」はノアやヴォクシーなどのミニバンに載るサイズにしている。そのため、普段乗っているクルマをそのままトランスポーターとすることが可能だ。

さらに、クルマに搭載するキットや一人でも載せられるメンテナンス用の台座もあわせて開発、普段は自宅のガレージに“立てて”保管することができるなど、カート以外に必要となるモノやスペースにも配慮されている。

  • GR KARTをノアに積む際のキット

    「GR KART」をノアに積めるようにするキット

  • GR KARTを一人で載せられるように設計された台車

    「GR KART」を一人で載せられるように設計された台車

親子で楽しめる設計

小学生から大人まで乗ることができるよう「ポジション調整機構」が採用され、“親と子供がいっしょに楽しめる!”ということがこのカートを開発している大切なコンセプトの1つだという。
それは、カートを通じてモータースポーツを経験した子供がクルマ好き育って欲しいこと、さらには未来の自動車業界の人材育成にも貢献していきたいという想いが込められているからだ。

また、子供が自分で整備に取り組めるよう、GR KART専用工具の開発も工具メーカーと検討している。「自分で整備したマシンで走る」という体験で、子供たちに自信を育んで欲しいという。

なお、エンジンはカーボンニュートラル燃料対応のガソリン仕様から開発をスタートし、将来的には水素エンジン仕様も検討しているという。

  • 隊列走行で体験走行が行われたGR KART

    隊列走行で体験走行が行われた「GR KART」

今回の試乗では先導車がついた隊列走行でストレートが短いコース設定であったため、その実力は分からなかったのが正直なところ。だがレーシングカートらしいコーナリングを体感できたし、最高速度が90km/hということでかなり本格的な走行ができそうなことは感じられた。

幅広いモータースポーツへの参戦やスポーツカーの開発など、たくさんのワクワクを提供してくれているTOYOTA GAZOO Racing。そんなGRが本気で取り組むこのGR KARTで楽しんだり子供たちが将来活躍し、持続可能なモータースポーツと未来の自動車業界の人材育成という想いを実現する日が来ることを楽しみにしたい。

(GAZOO編集部 山崎)

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