STMOが新シリーズ「S耐チャレンジ」の概要を発表。初心者がより参戦しやすい耐久レースで新たなモータースポーツの灯に

  • 「S耐チャレンジ」の概要を発表したSTMOの会見

富士スピードウェイで行われる年に1度のお祭りレース「ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レース」の予選が行われる2025年5月30日に、スーパー耐久未来機構(STMO)がモータースポーツ初心者向けの新たなレースシリーズ「S耐チャレンジ」を立ち上げることを発表した。

この「S耐チャレンジ」は、2025年1月に行われた東京オートサロン2025の「公開理事会」と題するトークショーの中で構想が語られていたが、今回開催スケジュールや大まかな車両の規定、レギュレーションなどが公表された。

冒頭、STMOの桑山晴美副理事長がS耐チャレンジの開催意図について次のように語っている。
「モータースポーツをやってみたいと思っている方は多い一方で、ハードルが高いと感じている方が多いのも現実です。費用の面はもちろん、車という道具を使うが故の技術的、準備的な難しさ、さらには最初の1歩をどこから踏み出していいのかわからない。こうした声を私たちは実際に耳にしてきました。それでもなお、憧れのレースに出てみたい、1度でいいから耐久レースを走ってみたい、そう願っている方は全国にたくさんいらっしゃると感じています。だからこそ、できるだけコストを抑えながらも、しっかり本格的なレースの醍醐味を味わっていただける、そんな新しいステージを私たちは作ろうと決意いたしました」

実際に、N1規定で始まったスーパー耐久だが、特に近年ではGT3車両やGT4車両が参戦し、プロドライバーやプロのレーシングチームが参加するようになり、シリーズのレベルもかなり上がっている。そのため、参加型最高峰のレースと言われていたスーパー耐久は、参戦するためのハードルがかなり上がってしまっている。

そこで、モータースポーツを始めたいという方々に向けたエントリーレベルの新耐久レースイベントとして開催を目指す「S耐チャレンジ」は、スーパー耐久シリーズの“弟分”として位置づけ、より身近に、より安全に、そして気軽に参加できるレース体験を提供することを目的としている。
そのため、改造範囲を限定し、参加コストを抑えた「N0規定」の車両を使用し事前の講習会などを実施することで、レース初心者でも安心してモータースポーツの第一歩を踏み出せるように考えられている。

  • 「S耐チャレンジ」のカテゴリーのイメージ

    「S耐チャレンジ」のカテゴリーのイメージ。STMOのプレス資料より

下記が今回発表された開催の概要と車両やレギュレーションに関する内容だ。

■開催スケジュール
2025年:11月15日(土) 富士スピードウェイにてお披露目イベント開催予定(スーパー耐久最終戦に併催)
2026年:年間3イベントを予定し、本格展開へ移行

2025年はお披露目イベントとして開催する予定で、8月1日にはエントリーを開始できるように準備を進めている。またどれくらい集まるの分からないとしつつも、50台を目途にエントリーを打ち切る想定だという。

■ レース概要
レース形式:60分耐久レース(模範走行行事として開催)
チーム構成:ドライバー2名1組(将来的には3名編成も検討)
ライセンス条件:国内Aライセンス保持者限定(国際ライセンス保持者は参加不可)
ピット要員:最大3名まで
予選:※実施する場合 ドライバー2名の合算タイムでグリッド決定(スーパー耐久方式)
決勝:60分間耐久。ドライバー交代は1回以上義務付け。給油なし

レース初心者、なんならサーキット初心者の参加希望も想定し、スクールや講習会の開催やシミュレーターなどを活用し、サーキット走行についてのきちんとした指導やアドバイスを行い安全性も高めていきたいという。
参加資格も国際ラインセンスの所持者は参加不可とのことで、より初心者向けのシリーズとしての配慮がなされている。

またレース結果にこだわりすぎず、まずは「走る楽しさ」を体験できる設計にしたいということで、ピット作業中にタイヤの左右ローテーションをするなど、ゲーム的要素も取り入れる案も検討している。

■ 車両規定
使用車両はJAF「N0規定」に準拠した市販車両
ECU等の電子制御改造は禁止
必須装備:ロールケージ、バケットシート、4点式以上のシートベルト、強化ブレーキパッド
使用タイヤ:ブリヂストン「POTENZA Adrenalin RE004」(溝付き公道用ラジアルタイヤ)※軽自動車向けには別途銘柄のタイヤを検討中

■ クラス構成
お披露目イベント(2025年)では、以下の2クラスからスタート。
1500cc以下クラス
軽自動車(660cc以下)クラス

将来的には、最高峰として2400ccのクラスや、BEVやハイブリッド車両、新技術搭載車両などが参加できるST-Qのようなクラスも検討しているという。
さらに、自動車メーカーと協議のうえレンタル車両の参戦クラスなどの展開も視野に入れている。

「S耐チャレンジ」は、かつてのN1耐久のような「誰でも参加できるレース」という原点に立ち返り、モータースポーツの裾野を広げるためのレース」を目指している。さらに、「S耐チャレンジ」の下のクラスとして「FIRST S耐」というクラスのビギナーが参加するクラスの設立も進めているという。

「参加型モータースポーツに新たな火を灯し、そして時代にあったレース文化を育てていきたい」とも語っていた桑山副理事長。S耐ならではの立ち位置をより明確化し、さらにその裾野を広げていく新しいチャレンジがどのように花開いていくのか楽しみだ!

(GAZOO編集部 山崎)

 

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