スーパー耐久 富士24時間レースは23号車 TKRIが総合優勝！ 水素エンジンGRカローラもトラブルなく468周を走りきる

2025年6月1日、年に一度のお祭りレースであり国内ビッグレース唯一の24時間レース「ＥＮＥＯＳスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 NAPAC富士24時間レース」がゴールを迎え、ST-Xクラスの23号車 TKRI松永建設AMG GT3（DAISUKE／片岡龍也／奥本隼士／中山友貴／元嶋佑弥組）が総合優勝を飾った。

事前の雨の予報とは異なり、決勝レースのスタート進行が始まるまで時折晴れ間も見えるなど持ちこたえていた天候。しかしスタート進行が始まる頃から急変し、グリッドウォークが始まる前には雷鳴も轟く豪雨の状況に。そのためグリッドウォークとレースのスタート時間が1時間ディレイとなり16:00に決勝レースがスタート、23時間となったレースの火ぶたが切って落とされた。

雨とウェットの路面状況のためセーフティカースタートとなったレース序盤は、路面がウェットから乾いていく難しい展開。1周目終わりにいきなりピットインするチームがあるなど、戦略の入り乱れるレース展開が予想された。1時間ほどでレコードラインは乾いてきたことで、最初のピットインで各チームがスリックタイヤに変更していく。

20:00からは恒例の花火が上がりレーシングカーの走行との共演が見られたが、その終了直前にFCYが出されそのままセーフティカーランに切り替わった。出動の理由は視界不良のためということで、どうやら花火による煙が影響していたようだ。

その後、濃霧により約1時間半のセーフティカーが導入される。そして深夜1時頃には26号車 raffinée日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4が他車との接触の影響でガードレールに突っ込みマシンが大破するクラッシュも発生。マシン回収とガードレールの修復のため赤旗中断となった。
さらに未明からも濃霧の影響でセーフティカーランからの赤旗となり、すっかり陽の登った7:30からセーフティカー先導でのレース再開となった。

その後も各マシンにトラブルが続き、合計12回のFCY、10回の赤旗が出され、FCY中の追い越しやピットインによるペナルティが多く出されるなど、波乱の展開とレーシングスピードで走行できない時間の長いレースとなった。

■ST-X

そんな波乱のレースをリードしたのは33号車 Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3。セーフティカー導入のタイミングなどを生かし一時2位以下に1周以上の差をつけたが、左フロントタイヤのトラブルで後退。その後一時トップを争った81号車 DAISHIN GT-R GT3、101号車 Hitotsuyama Audi R8 LMSもトラブルやペナルティなどで戦線から脱落。

その後トップに立った23号車 TKRI松永建設AMG GT3の背後に終盤迫ってきたのは、今季2連勝を挙げている666号車 seven x seven PORSCHE GT3R。2秒から3秒差の差でプレッシャーをかけ続けるものの、残り10周でピットに戻りスプラッシュの燃料給油を行うことに。それでもペースを落とすことなく走り続けた23号車が、昨年の富士24時間レースで最終盤に交わされてしまった雪辱を果たす24時間初勝利を挙げた。

■ST-Z

ポールポジションスタートの25号車 raffinée日産メカニックチャレンジZ NISMO GT4が、他車にさまざまなトラブルやペナルティが下る中でも快調に走行。60kgのハンデウエイトを搭載しながらも最終盤を同一ラップで迎えていた52号車 埼玉 GB GR Supra GT4 EVO2が残り11周でピットインしAドライバーに交代する必要がったため、危なげなくトップでチェッカーを受けた。
なお、25号車にはロニー・クインタレッリがエントリーしており、松田次生や柳田真孝と久々のチームメイトとして参戦している。

■ST-TCR

今シーズンは、セアト・クプラの19号車 BRP★NUTEC 制動屋 CUPRA TCRとヒョンデ・エラントラの98号車 WAIMARAMA Elantra N TCRの2台のバトルに。
98号車には多数のトラブルが出るいっぽうで、19号車は好調に走行を続けクラストップでチェッカーを受けた。

■ST-1

今シーズンはD’station Racingが参戦したことで、2号車 シンティアム アップル KTMと2台での争いに。その2号車はマシントラブルで長い時間をピットで過ごすことになったいっぽう、47号車 D’station Porsche 992はノートラブルの走りを披露、見事今季初勝利を挙げた。

■ST-2

ポールポジションスタートの743号車 honda R&D Challenge FL5は他車との接触でリヤのサスペンション交換を行ったことで順位を落とすことに。6号車、7号車のシンリョウレーシングの2台のランサーエボリューションX、225号車 KTMS GR YARISなどにもトラブルが発生する中、95号車 SPOON リジカラ CIVICに1周の差をつけ、72号車 OHLINS CIVIC NATSが学生メカニックのデビューレースで勝利を挙げた。

■ST-3

39号車 エアバスター WINMAX RC350 TWSが、他車との接触でピットストップペナルティが与えられる場面もあったが、着実な走行を続け、富士24時間2連覇となる勝利を挙げた。

■ST-4

今季はGR86以外にも、ロードスターRF、NCロードスター、スイフトスポーツと複数車種による争いとなっている。ポールポジションからスタートした884号車 シェイドレーシング GR86は一時トップを明け渡す時間はあったものの、最終的には2位の41号車 エナジーハイドロゲン EXEDY GR86 Winmaxに1周の差をつけクラス優勝。TEAM NOPROが走らせるNCロードスターの37号車 DXLパワーミネラルEVO☆NOPRO☆NCロードスターは3位表彰台を獲得している。

■ST-5F/ST-5R

今年のST-5クラスは、前輪駆動車のST-5Fと後輪駆動車のST-5Rという2つのクラスに分かれることになった。
ST-5Rクラスで速さを見せたのは、88号車 村上モータースMAZDAロードスター。マシントラブルで一時ストップしたり、その影響で出されたFCY中のピットインに対してピットストップペナルティが課されもしたが、2位に3週以上の差をつける盤石の走行で勝利を挙げた。

ST-5Fクラスは、富士24時間を3連覇している17号車 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2が、予選日からタービントラブルが発生。決勝レースのスタートが1時間ディレイしたことで、3度目のタービン交換を終えることができピットレーンスタートでコースへ。しかしその周でマシンが止まってしまい4連覇への夢は絶たれることに。
序盤は5号車 THE BRIDE FITがトップに立ちリードを広げるも、11号車 SAKAE MOTORSPORTS FIT、67号車 YAMATO FITがそれぞれトップに立つ。その後トップに立った 821号車 アンドリーガル Moty’s FITが、2番手の11号車と2周の差をつけ参戦初年度でいきなり富士24時間を制した。

■ST-Q

今年は原点に立ち返るという想いを込め、TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing（TGRR）というチーム名に変更し、この富士24時間で今季初参戦を果たした水素エンジンを搭載する32号車 TGRR GR Corolla H2 concept。
楕円タンクを採用し液体水素の搭載量を増やしたことで、最大31周の連続走行をすることができたという。また新充填バルブも問題なく作動するだけではなく、よりたくさん充填する方法や早く充填する方法など、レース展開に合わせた充填の方法を模索することもできたという。
さらに今回は、市販化に向けた技術開発で高出力（ストイキ）の低燃費（リーン）の燃焼を切り替える制御を導入しており、走行中に制御が細かく切り替わること、それに対するドライバーからの違和感などの指摘もなかったとのことで、一定の成果を得たようだ。
また、昨年複数回の交換を余儀なくされた燃料ポンプは1度も壊れることなく完走することができている。

これまでは水素の充填時間がかかること、また1回の充填での走行距離が短いことで、他のマシンとのバトルという面でのレースに参加できていなかった。
しかし今年は「ようやくレースができた」というように、ST-5F/ST-5Rの真ん中当たりの順位でフィニッシュすることができた。なおベストラップは2分3秒052で、ST-5F/ST-5Rで最速の76号車 PROGRESS 高砂 ロードスターの2分5秒104よりも速いタイムを記録している。

このレースからENEOS製のバイオエタノールを20%混入したガソリンを燃料として使うこととなった28号車 TGRR GR86 Future FR concept、61号車 SUBARU HighPerformanceX Future Concept、12号車 MAZDA SPIRIT RACING RS Future conceptは、それぞれ総合13位、17位、27位で完走した。
TOYOTA GAZOO Racingによると、この新しい燃料は、昨年まで使用していたカーボンニュートラルの合成燃料で起きていた、燃え残った燃料がエンジンオイルを希釈してしまうという症状は起こっていないという。
今後のスーパー耐久で実証実験を行いエンジンの対応を行うとともに、燃料の規格や法律の整備などに向けた活動も行っていくという。

（GAZOO編集部 山崎）