すべてはクルマづくりを楽しむために。ヤリス&スイスポでS耐唯一の道を突き進むオートラボ
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AutoLabo Racingのスイフトスポーツ
純粋なレーシングカーであるFIA GT3から、街中で走るコンパクトカーをベースとしたレーシングカーまでさまざまな車種が混走するスーパー耐久シリーズ。
ST-X、ST-Z、ST-TCRクラスという純レーシングカーのクラスが盛況で参戦台数が増えたり、プロのレーシングドライバーも多く参戦するなどレースとしての人気が高まっている。一方で、ST-1クラス以下の市販車をレーシングカーに仕立てて参戦するクラスでは、なかなか新たな車種が投入されるケースが少なくなっている。
そんな現実に風穴を開けるチームがある。それはAutoLabo(以下オートラボ)だ。2022年からコンパクトカーのヤリスで参戦を開始し、今シーズンからはST-4クラスに新たな車種スイフトスポーツも走らせている。
実はなかなか厳しい戦いを強いられている状況ではある中で、なぜ実績のある車種ではなく新たな車種で挑むのだろうか、その想いをスーパー耐久第5戦が行われているオートポリスで、國松宏二チーム代表にお話を伺った。
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AutoLabo Racing 素ヤリス
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AutoLaboの國松宏二チーム代表
國松氏はもともと大阪でチューニングショップとしてオートラボを立ち上げていたが、自身が参加型レースに参戦していた経験を買われ、2008年からメカニックとしてS耐に参戦するチームを手伝うようになったという。
その年メカニックとして参加していたチームがクラスチャンピオンを獲得したことで、レースの魅力にどっぷりとハマることに。2010年からは名門トレーシースポーツでST-4クラスのS2000のエンジニア兼メカニックを務め、3年連続でのチャンピオンを獲得する。
その後、村上モータースをはじめ、複数チームのNDロードスターのレーシングカーの製作を手掛けチャンピオンを獲得。さらにST-TCRクラスのシビックやST-Zクラスのジネッタなどで数々の経験を重ねてきている。
それ以外にも、SUPER GTやル・マン24時間、ランボルギーニのワンメイクレース、鈴鹿8耐など、さまざまなカテゴリーでメカニックとして活躍の場を広げていく。
転機となったのは2021年。本来はあるチームの運営を請け負う想定で体制を整えていたがその計画がとん挫、押さえていた外注のメカニックとも仕事をすることができなくなってしまった。
そこで國松代表は「この状況は“寒い”なと思って、これまでは裏方としてレースに携わってきましたが、機材や人材もすべて揃っているわけなので、自分のチームを作ることにしました。その時に自分の持っているお金で買えて、かつ誰もやっていないクルマということで選んだのがヤリスです」とレーシングチームとしてのオートラボを立ち上げた経緯を話してくれた。
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スーパー耐久第5戦オートポリスでのAutoLaboのピット”
全日本ラリーの結果などを見て「イケるかなというのはあった」というヤリスだが、実際に参戦を開始してみると、直列3気筒1.5Lエンジンは高速域に課題があり、それを改善するパーツがないこと、またコンピューター制御もかなり難しく、他の車種で経験してきたマシンを速くする方法で解決できていない状況が続いている。
さらにスーパー耐久は、基本的に使用できるパーツは市販されているものであったり、特認申請というシステムがあるものの、駆動系での特認申請は通らなかったという。
そこで、新たなマシンでの参戦を模索し始め、白羽の矢を立てたのが「ずっと頭の中で温めていた」というスイフトスポーツだ。1.4Lターボエンジンを積むスイフトスポーツは、自然吸気のエンジンに換算すると2.4Lとなり、ST-4クラスに参戦するにはもってこいのエンジンだ。加えて、チューニングパーツが多数リリースされ、チューニングのノウハウもかなり蓄積されている車種であるために、実は筆者の期待も高かった。
ただ、実際に走らせてみるといろいろと課題が多いようだ。開幕戦は特にモビリティリゾートもてぎということも重なり、ブレーキの性能が足りず、ASBトラブルなども発生していた。
他にもハブのトラブルでタイヤが外れたり、富士24時間では3時間ごとにミッションが壊れて交換をしたり、想定していなかった箇所からのオイル漏れ、さらに電気系の原因不明のトラブルも発生しているという。それをスズキの開発者の協力を得ながら一つ一つセッティングやパーツ交換などで対応しているという現状だ。
「まだね、パワーアップをする以前の問題だと捉えています。まずは壊れるものは壊してしまって、それを対策していくことで無難に完走できるように取り組んでいる最中です」
実は、こうした苦労は國松代表にとってはネガティブなことではないようだ。
「モータースポーツはずっと好きでやっている中で、自分でクルマを作れるトップカテゴリーは今S耐しかないので、だからこそS耐は好きでやっています。他のカテゴリーでちゃんと仕事をして、そこで稼いだお金を全部S耐につぎ込んでレースをやってるって感じです。
これまでいろいろなマシンを担当したり製作してきましたが、それが勝ち続けるようになったら、僕の中では飽きちゃって次のクルマがやりたくなるんですよね。レースなので勝ち負けは当然大事で、もちろん勝つため、少しでも順位を上げるための方法をずっと考えています。
でも、たとえ勝てなくても、他の人がやっていないクルマであったり、自分の中でネタがあるうちは色々考えて楽しめるので、やめられないんですよね」
ヤリスもスイフトスポーツもトヨタ、スズキというメーカーとの協力体制が築くことができるようになってきており、一緒に課題解決に向けて考えていけることも意気に感じているようだ。
また、現状ではクラス最下位を走行する状況が続いているが、それでも参戦することに価値があるという。それはS耐に初挑戦するドライバーや、クラスタイトルを争うようなチームではちょっと荷が重いというドライバーなどに乗ってもらうことで、S耐とアマチュアドライバーの橋渡し、S耐への入口といった役割を担うことができることだという。
今後目指していることを聞いてみると、「自分達のチームでSUPER GTをやってみたいとは思っていて。クルマのことは分かっているというのもあるけど、理由としてはマーケティングがうまいことやれているレースなので、そこでお金をしっかり稼いで、そのお金を使ってまたS耐で面白いクルマを作っていきたいよね」とのこと。
ガレージでのマシンの製作、メンテナンスから、サーキットではエンジニア、チーフメカニックまで、ドライブすること以外のすべてのクルマに関わる仕事をこなす國松代表。
「原因不明でエンジンがかからなかったことがあって、4日くらい徹夜が続いたんだよね」と、辛かったとは言いながらも笑顔で話す。結局クルマづくりが大好きなのだ。
そのクルマづくりができるS耐に、國松代表の活動のすべてがつながっているといっても過言ではないだろう。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:GAZOO編集部)
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