【WEC2021】第2戦ポルティマオ8時間 8号車GR010 HYBRIDがトップチェッカー! トヨタが2戦連続の1-2フィニッシュ

  • 第2戦 ポルティマオで優勝したブレンドン・ハートレー、セバスチャン・ブエミ、中嶋一貴

6月13日(日)2021年シーズンFIA世界耐久選手権(以下、WEC)第2戦ポルティマオ8時間レースの決勝が、ポルトガルのポルティマオ近郊に位置するアルガルヴェ・サーキットで行われ、TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)のGR010 HYBRIDは8号車(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドレン・ハートレー組)が優勝、7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)が2位に入り、前戦に続き1-2フィニッシュを達成した。

WECにハイパーカーという新たな歴史の1ページが開かれた前戦、1-2フィニッシュでデビューを華々しく飾った2台のGR010 HYBRID。このレースでは、トヨタが世界トップレベルの耐久レースシリーズにグループCカーでのデビューとなった1983年の富士1000kmから数えて、100戦目の節目のレースとなり、前戦に続き好結果を狙う。

709号車グリッケンハウス007 LMHを迎えハイパーカークラスは4台での争いとなった第2戦は、開幕戦の結果により、GR010 HYBRIDには26kgの最低重量増加及び最高出力と使用可能エネルギー制限という性能調整が加えられている。

予選のポールポジションは、マシュー・バキシビエールがアタッカーを務めた36号車アルピーヌA480・ギブソン(アンドレ・ネグラオ/ニコラス・ラピエール/マシュー・バキシビエール組)が獲得。0.094秒という僅差でハートレーがアタックした8号車GR010 HYBRIDが2番グリッド、3番グリッドにはこちらもトップから0.176秒差という僅差でコンウェイ駆る7号車GR010 HYBRIDがつけた。
  • ポールポジション36号車アルピーヌA480・ギブソン(アンドレ・ネグラオ/ニコラス・ラピエール/マシュー・バキシビエール組)

    ポールポジション36号車アルピーヌA480・ギブソン

2番グリッドを獲得したハートレーは、「我々は新しいハイパーカーでまだ経験を積んでいる最中で、色々なことを試しています。練習走行中、新品タイヤで苦戦したので、最初のアタックは一度走行したタイヤで挑みました。この作戦が上手く行かなかったときの代案も用意してあり、それが今回は効を奏しました。最後のアタックはプレッシャーもありましたが、なんとかタイムが更新できて満足しています。最前列グリッドを獲得できたのはチームの作戦とチームワークのお陰です」と予選後にコメント。
  • WEC第2戦ポルティマオ決勝レーススタート

    WEC第2戦ポルティマオ決勝レーススタート

決勝レースは序盤から、開幕戦スパに続きWEC初開催となったポルトガルでも三つ巴の激戦を展開。ポールスタートの36号車アルピーヌはラピエールがトップを守り周回を重ね、8号車GR010 HYBRIDはブエミ、7号車GR010 HYBRIDはロペスが続く。
最初のピットストップまでに10秒ほどのマージンを築いた36号車アルピーヌは、燃料タンクが小さいためGR010 HYBRIDに比べて早めのピットインを行っていく。

2台のGR010 HYBRIDは、2時間経過直前の2回目のピットストップでコンウェイとハートレーへとドライバー交代。75周を終えたこの時点でも首位のアルピーヌ36号車とTGRの2台によるトップ3台の差は10秒ほどという、息を飲むような接戦が続く。

8号車はハートレーに交代した直後、LMP2車両をかわすことに手こずりタイムロスしたことで、コンウェイの7号車が8号車をかわし2位へと浮上。次の給油ピットストップ時にも、8号車GR010 HYBRIDがコース上のトラフィックに阻まれ、7号車GR010 HYBRIDが再度先行。レースが半分を過ぎた時点で、ピット戦略の違いからGR010 HYBRIDの2台は36号車アルピーヌをかわし、7号車の小林と8号車中嶋が約10秒差での首位争いを展開する。

残り3時間ほどになった頃、コースアウトしたLMP2車両がグラベルエリアにつかまり、セーフティカーが導入。これによりここまでに築いてきたGR010 HYBRIDの2台と36号車アルピーヌとのマージンは帳消しとなりレースは振り出しに。

残り2時間半となったところでレースが再開されると、ロペスへと交代した7号車GR010 HYBRIDが首位をキープ。ブエミへと交代した8号車GR010 HYBRIDは、燃料をセーブする作戦を採り、2番手で続く。
残り1時間を前に7号車と36号車はピットインし、もう1回ピットに入る必要があるのに対し、8号車は燃料をセーブしたことでピットインを遅らせピット回数を減らせることが確実に。しかし、残り30分のところでフルコースイエローが出され全車スローダウン。ここでロペスの7号車は短い給油ピットストップを行い、最後まで走り切る作戦の8号車の3秒後方でコースに復帰することに成功する。
7号車のロペスは8号車に迫るもブエミがトップでチェッカー、8号車が今季2勝目を挙げた。そのすぐ後でフィニッシュラインを越えた7号車が2位。8時間、300周のレースを終えた時点で、3位の36号車とトップとの差は僅か1分8秒597という超接戦のレースとなった。

LMP2クラスは38号車のJOTA オレカ07・ギブソン、LMGTE Proクラスは51号車AFコルセ フェラーリ488 GTE Evo、LMGTE Amクラスは47号車チェティラー・レーシング フェラーリ488 GTE Evoが、それぞれクラス優勝を挙げた。

LMGTE Amクラスで参戦する、木村武史が乗るの57号車ケッセル・レーシング フェラーリ488 GTE Evoはクラス5番手、星野敏、藤井誠暢のDステーション・レーシングはリタイアという結果になった。

ハイパーカーによる戦いが続く次戦WEC第3戦は7月18日、イタリアのモンツァ・サーキットで行われる。


WEC 第2戦 ポルティマオ8時間 決勝結果(総合順位)

1位 No.8 HYPERCAR
セバスチャン・ブエミ
中嶋一貴
ブレンドン・ハートレー
TOYOTA GAZOO Racing/トヨタ GR010 HYBRID
300Laps

2位 No.7 HYPERCAR
マイク・コンウェイ
小林可夢偉
ホセ・マリア・ロペス
TOYOTA GAZOO Racing/トヨタ GR010 HYBRID
300Laps/0:01.800

3位 No.36 HYPERCAR
アンドレ・ネグラオ
ニコラス・ラピエール
マシュー・バキシビエール
アルピーヌ・エルフ・マトムート/アルピーヌ A480-Gibson
300Laps/1:08.597

4位 No.38 LMP2
ロベルト・ゴンザレス
アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ
アンソニー・デビッドソン
イオタ/Oreca 07-Gibson
296Laps/4Laps

5位 No.28 LMP2
ショーン・ゲラエル
ストフェル・バンドーン
トム・ブロンクヴィスト
イオタ/Oreca 07-Gibson
296Laps/4Laps

30位 No.709 HYPERCAR
ライアン・ブリスコー
ロマン・デュマ
リチャード・ウエストブルック
グリッケンハウスレーシング/グリッケンハウス007 LMH
246Laps/54Laps
  • WEC第2戦ポルティマオ表彰台 

    第2戦ポルティマオ表彰台 TOYOTA GAZOO Racingが1-2フィニッシュ

村田久武(TOYOTA GAZOO Racing WEC チーム代表)

トヨタにとって記念すべき世界耐久選手権100戦目において、1-2フィニッシュという最高の形で勝利を飾ることができました。ドライバー、エンジニア、メカニックの素晴らしい仕事に感謝しています。我々はこの勝利のために激しい戦いを繰り広げました。それは3台のハイパーカーがコンマ数秒を争うエキサイティングなレースでした。誰にも失敗が許される状況ではありませんでしたが、ミスなく、ワンチームとなって努力できたことをうれしく思います。素晴らしい予選に続いて決勝でも勝利に向かって果敢に挑戦を続けたアルピーヌチームは素晴らしかったと思います。また、初めてとなったグリッケンハウスチームとの戦いも楽しむことができました。今後も彼らとの戦いを楽しみにしています。ハイパーカークラスがいよいよ本格的に動き出し、ファンの皆様には今後のレースでもたくさんの手に汗握るような接戦を楽しんでいただくことができると思っています。これまでポルティマオでは多くのテストを行ってきましたが、ポルトガルでのWECは今回が初開催となりました。現在のような状況の中で、各参戦チームを快く迎え、安心安全なイベントを準備、開催してくれたすべての関係者に感謝いたします。次戦のモンツァは1992年、我々が世界耐久選手権で初優勝した思い出の舞台であり、また良いレースをして、その時と同じ結果を迎えられるよう準備を進めていきますので、ぜひご期待ください。

小林可夢偉(GR010 HYBRID #7)

私のスティントは好調で、ペースも良かったです。コース上のトラフィックをかわしていくのはかなり難しく、給油のためピットへ入るときに少しピット進入で攻めすぎてしまい、チームをひやりとさせてしまいましたが、幸運にも規定速度まで落とすことができました。練習走行で若干苦戦し、決勝でレースペースを掴むための努力をしてきただけに、今日お見せすることができたスピードには満足しています。我々7号車はチェッカー目前で少しだけ給油をする必要があり、勝利を逃してしまったのは残念です。チームは素晴らしい仕事をしてくれました。ドライバーも良い走りを見せられたので、勝つことはできませんでしたが、チームが1-2フィニッシュできたというのは良い結果です。

マイク・コンウェイ(GR010 HYBRID #7)

今日は皆良い走りができたと思います。レース状況次第では違う結果になったかも知れません。8号車は序盤に燃料をセーブしたことで、それが戦略的に上手く働き、最終的に僅かに我々よりも長く走ることが可能になりました。最後にフルコースイエローが出されたことで、そのタイミングで最後の給油ができ、通常よりもタイムロスを少なくできたのは幸運でした。レースを通して我々の7号車の方が僅かに速かったと思いますが、残念ながら今日のような結果も時々あります。まず、チームが1-2フィニッシュを果たすことが最優先です。

ホセ・マリア・ロペス(GR010 HYBRID #7)

このコースで他の車両をかわしながらの8時間というのは本当に大変なレースで、私自身、そのうちの4時間以上ドライブしていたので、ハードな一日でした。自分の走りには満足していますし、チームの1-2フィニッシュに貢献できて良かったです。1周の走行ペースではアルピーヌのほうが速かったですが、チームワークと効率よいレース運びで順位を取り返し、チームに取って大事な結果を勝ち取りました。7号車のエンジニア、ピットクルー、マイク、可夢偉、そして私自身もこのレースで本当によくやったと思います。セーフティカーが出るまでは好調に首位を走っていましたが、セーフティカーで状況が変わってしまいました。ペースも良かったのですが、それが結果には繋がりませんでした。

中嶋一貴(GR010 HYBRID #8)

世界耐久選手権100戦目を1-2フィニッシュで飾れたというのは素晴らしい結果です。非常に接近した戦いで、誰もが勝利を目指し、これ以上無いほど全力でプッシュし続けました。1-2フィニッシュを成し遂げた両チームを祝福します。こんな大変なレースで勝てるのは、本当に最高の気分です。タイトル争いについて語るのはまだ早いですが、少しでもポイント差を広げられるのは良いことです。今日のチームの働きと結果には満足しています。

セバスチャン・ブエミ(GR010 HYBRID #8)

激しいバトルの末にレースを勝ち取ることができて感激しています。我々は7号車とは異なる戦略で戦い、それが結果に表れました。最初のスティントで給油までの周回を1周伸ばすことができ、それが効を奏しました。セーフティカーが出されたことも、最後に給油ピットをしなくて済むことに繋がり、今日のレースの鍵になりました。ペースを保ちながら極力燃料消費を抑える走りを続けました。最後のフルコースイエローは我々にとって少し不運で、それが無ければ7号車は給油ピット後にもっと後方のはずでした。しかし、レースでは時々こういうことも起こります。

ブレンドン・ハートレー(GR010 HYBRID #8)

この勝利は努力の賜物です。中でもコース上のトラフィックは大きな要因でした。LMP2車両をパスするのは本当に困難で、彼らの協力も必要でした。我々はスタートから燃料消費を抑えることで戦略の幅を拡げ、それが上手く行きました。給油間の周回数を伸ばしながらもペースを維持できたので、本当に戦略を活かして戦えたと思います。チームのお陰です。全く異なる戦略を採ったにもかかわらず、残り20分の時点でもTGRの2台は全く差がありませんでした。レース全体を通して7号車との戦いでしたが、最終的に勝つことができるのは1台です。そして、TGRにとっては最高の1-2フィニッシュになりました。

[ガズー編集部]